財務トピックス(コンサルタントコラム)

◎たった1冊の報告書が売上拡大の起爆剤に?

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最大のヒントは、上場企業の「IR(事業報告書)」です。

唐突な始まり方でしたが、皆様は採用や企業説明会の際、自社の魅力や現状についてしっかりと「事業報告書」の形式に落とし込んでいるでしょうか。非上場企業(特にオーナー企業)は、株式が市場に公開されている上場企業とは異なり、法的にも実質的にも「社長の一存が会社の方針」となるケースがほとんどのため、その意味では特段外部の顧客、組織に対してとやかく文句を言われる筋合いはありません。その分経営の全責任も負っており、サラリーマンである筆者などはその覚悟・努力を考えると頭が上がらなくなります。

とはいえ、非上場企業は上場企業レベルの資金調達力や対外的な信用力がないケースがほとんどで、実は上場企業以上に企業間のつながり、あるいは取引先との強い紐帯が重要になってくるとも捉えることができるでしょう。そこで、自社を最もよく知る社長・経営陣が一丸となって対外的にPRを行い、今までになかった有益な外との関係を作ろう、という1つの戦略が出てきます。

今回は、非上場のオーナー企業ながら自社の内容をよく理解し、上場企業のように対外PRを行った会社が、どのようなメリットがあったのかに関してお伝えします。

◎目次

1.上場企業がIRで語る「自分のこと」

2.【事例】わずか1回の面談で会社を理解し、銀行が社長の個人保証を解除?

3.【まとめ】社内には「お宝」が落ちている

1.上場企業がIRで語る「自分のこと」

前述の通り、自社の状況をシンプルかつ明確に対外PRできることは、周囲の取引先に対する信用力向上につながります。さらにそれが口頭ではなく書面で可視化されることで、自社の状況を誰が見ても誤解なく理解できるようになるという点でレベルの高い施策ではないかと思います。
「そうは言っても、周囲は自社の何を知りたいと思っているのか…?」
ということで、早速情報公開が義務となっている上場企業のIRは、一体どのようなことが開示されているのか、事例に基づくためにも確認してみましょう。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/9757/ir_material_for_fiscal_ym/72089/00.pdf
(2019年12月20日時点・株式会社船井総研ホールディングス Webサイトより引用)

リンク先には、筆者が所属している株式会社船井総合研究所の親会社で東証一部上場、株式会社船井総研ホールディングスの2019年度第3四半期業績の報告書が掲載されています。上場企業の株主は公開市場に参加している投資家、一般個人であり、こうした株主に対する情報開示を適時適切に行うことは、重要な義務として企業側に課せられています。

中小企業向けのコンサルティング会社としてのイメージが強い会社ではありますが、内容を見ると

・ダイレクトリクルーティング(人材ビジネス)に積極投資をしており、事業が伸びてきていること
・部門としても人材ビジネス関連の部署が伸びていること
・中小企業向けコンサルティングは引き続き収益源として中核を担っていること
・短期的なプロジェクト型コンサルティングは一時的に減少傾向で、一方月次型の継続支援は伸びていること
・今後、総合コンサルティンググループとしてあらゆるニーズに応える体制を強化したいこと

など、これだけでも「何となく中小企業のコンサルティング会社」というイメージが補完され「どのような」意思を持つ会社なのかを理解することが可能です。また「現在」の業績には表れないような投資方針、人材戦略などが記載されていることで、外部の投資家は今後弊社がどのような費用を使い、どのように収益性を高めるのかという「未来予想図」まで明確にできることも、特徴と言えるでしょう。

「過去」「現在」、そして「未来」。自社を振り返り、ここまで可視化しているのかどうか、まずは経営陣で振り返りの時間を設けてみるのも良いかもしれません。

2.【事例】わずか1回の面談で会社を理解し、銀行が社長の個人保証を解除?

また、非上場企業のなかにはいち早く事業の可視化の大切さに気付き、それを実行することで売上を拡大させる素地を整えた事例もあります。

個人事業主だった頃から数えて50年以上継続し、特許実施契約も結んでいるようなエネルギー系の中堅企業Aは、長年の業歴でお付き合い先も多い会社であるものの、それだけに対外的に情報を出すことに必要性を感じておらず、これまでの実力のみで取引をしていました。

たとえば、エネルギー資源を仕入れる際には必ず運転資金の融資をお願いしなければいけない地銀の支店長・担当者にも、決算書こそきちんと提出するものの、

・「勘定科目明細」など、補助資料まで提出していない場合があった
・特段、しっかりと事業の内容や業績の詳細までは説明していなかった
・銀行も、一応依頼通り融資を出してくれていたので、問題視していなかった

など、比較的受動的なお付き合いをしている状況が続いていたのです。

ところが、これまで10年以上会社の中心として活躍していた社長が大病により、しばらく会社に出られない状況に。幸い社長は奇跡的に回復し、後遺症なく会社に戻ることができたうえ、No.2の番頭さんの存在が大きく何とか不在中の難局を乗り切ることにも成功しましたが、社長は「会社=社長」という体制がいかに弱いかを痛感。自社をもう1度よく分析し、社長がいなくても会社が運営できる働き方を目指すことを決意しました。

「自社は、どうしても融資なくしては成長できない会社だ。まずは金融機関にこうした現状と今後の事業方針を伝え、株式会社Aの社長としてではなく、会社単体として評価をしてもらえる体制を作ろう」

決心した社長は、今までの決算書や営業資料、業界の動向などを踏まえた業績報告書を作成し、まずは取引銀行へ丁寧に開示を行う取り組みを開始します。

・実はメインの取引先とは前払いの商売をしており、資金需要が旺盛になるタイミングがあること
・今後はエネルギー市況に左右されない新事業に、資本を投下していきたい意向であること
・来期は新規事業を開始したいが、それは既存事業と非常に親和性が高く勝算があること

一見、決算書などの分析だけをしているイメージがあった銀行には、上記情報は必要ないようにも感じていた社長でしたが、反応は期待以上のもの。支店長から取組みを評価され、まずは体制作りの一環として「会社の評価だけでの融資」、つまり個人保証なしでの融資実行を達成するに至ったのです。

その面談回数、わずか1回、1時間

自社の過去・現在・未来を可視化できた社長が、会社の真の実力を引き出した瞬間でした。

3.【まとめ】社内には「お宝」が落ちている

今回は取引先や金融機関と向き合い、上場企業が当たり前のように行っている適時適切な情報開示を行う会社が、事業成長のためのアクセルを踏めるという件を、事例を交えてお伝えしました。どんな会社にも必ず「過去・現在・未来」は存在し、その情報は断片的に資料や社長の頭の中に蓄積されていくものです。その1つ1つの情報を主体的に集約し、分かりやすく可視化を行うことで、会社が今までになかった力を発揮し、大目標である売上・利益を拡大させるというゴールに向かうことが可能になります。

まずは最も社内に落ちている可能性の高い「過去」を分析できる決算書、試算表、そして社内営業資料を、今一度棚から出してくるところから、スタートさせてみてはいかがでしょうか。
事例のごとく、「いま、あっという間に」大きな成果が得られる可能性もあるかもしれません。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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