財務トピックス(コンサルタントコラム)

財務コンサルティングの現場から~ 介護事業経理担当者の苦悩と世にはびこるDX(2)

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皆さま、こんにちは、船井総合研究所の石田知大です。
先週に引き続き「財務コンサルティングの現場から~ 介護事業経理担当者の苦悩と世にはびこるDX」と題し、最近やたらと耳にする「DX / デジタルトランスフォーメーション」による業務改善について、話しを掘り下げて参ります。

前回の内容はこちら

業務改善を行う上で、デジタルツールを使わない。という選択肢はあり得ません。
それは、例えば複式簿記とそろばんで経理を行っていた時代から、電卓の活用、そこから会計ソフトの利用と、それぞれ定型業務がデジタルツールによって効率化されて来たという今までの当たり前の変革がまた一歩進んでいるという話だと思っています。

と前回の最後に触れました。

経理面においては特にこの「帳簿」から「会計ソフト」のような変革が、「会計ソフト」から「クラウド会計ソフト」において発生してきているなと思います。
前者では、帳簿から補助簿、総勘定元帳等への転記や集計、税率の変更や消費税等に対する対応が、効率化されるのが最大のメリットであったと思います。(消費税と会計ソフト普及の順序は前後すると思いますが…)
後者では、一般的なイメージとしては「会計ソフトの利用がいつでも・何処でも出来るようになるだけなんでしょう?」というところですが、実情としては「周辺の業務ソフトと連携して情報を自動で集める(経理処理の自動化)」を可能にするツールというのが一番の強みだと思います。

そんな便利なものが登場していて、何故普及スピードがそこまで早くないのか?と思わず聞きたくなりますし、私も疑問に思っていましたが、各種ご支援を行っていてこの問いの答えが見えてきました。

大きくはこの3点がその原因です。
 ①そもそも何が出来るか知らない
 ②導入側がデジタルツールを使いこなせない
 ③各企業ごとの前提条件が違う為パッケージ化が難しい

①は、時間がある程度解決してくれると思います。
船井総研のコンサルタントがよく使う言葉で説明すると、マーケットライフサイクルが導入期であると言う事になります。
まだ、市場に登場したばかりで認知がされておらず、広告宣伝を行っても「アーリーアダプター」と呼ばれる新しい商品・サービスに敏感で、それらの情報収集を積極的に行うリスクテイクを行う層の顧客にしか採用がされない商品と言う事です。
(…既に普及数だけで見ると、かなり多くの企業で採用されているので、実は既に成長期を過ぎていますが、売上高1億円以上の我々がお付き合いをさせて頂いている企業様から見ると導入期だという意味で説明をさせて頂いております。)

②が深刻です。
「パソコンが苦手で正直ほとんど開かないんだよね」
「Excelのマス目毎に文字を打ち込んで原稿用紙みたいに資料作ると使いやすいよ」
「やっぱり紙で手計算しないと不安」
というような温度感で無くても、私のようなデジタルネイティブの世代で無い方にとって、デジタルツールというのは利用に心理的抵抗が発生するもので、そこに、
「どう使うか?」
「どこまでの機能を持っているか?」
という事を加えて、各ツールを組み合わせて活用するという事は非常にハードルが高い事だと思います。

実際、上場企業でも、このデジタルツールを効率的に組み合わせて業務を効率化すると言う事に失敗している事例も聞くほどですので、ましてや中小企業で自前でやり切るのは、非常に難しい事なのだと感じます。

③については、
仮に、②の問題があるならば、「一定のパッケージを持ってこの通り使って管理を進めるのが良い」という定型のシステム(ツールの組み合わせ)を作ってしまえば、皆がそれを使って管理すれば良い状態になるので、そういったシステムを作って行けば良いのではないか?と考えることが出来ます。

ただし、このデジタルツールにはランニングやイニシャルコストが一定発生すること。業務を進める上でこの仕組を外すことが出来ない。というようなシステムがあることから、一部からスタートしたり、業務上既存のシステムを挟むまなければならなかったりと、350万社ある中小企業様の数だけ、パターンが発生することとなります。
その為、ツールを開発する会社が想定出来ていないようなケースも多く発生してしまい、これだけ使ってもらえれば、それで管理は全て大丈夫。というようなパッケージとなることが難しい。つまりは、個社別に最適な仕組を考えなければならない。ということになってしまいます。

そういった理由で、デジタル活用をする上で、例えば「クラウド会計ソフト」のような仕組を使う際に、色々な課題がありそこまで普及が進んでいないのは何故かという理由が分かってきましたが、ここに当初記載した介護業の特徴を合わせて考えると、きちんと組織だって管理が出来ている状態の介護事業者の場合であれば、逆にその状態ゆえに
 ①現状の管理レベルが高い
 ②その分忙しい
 ③内部的に声が上がりにくい

という理由から、あまりDX(デジタルトランスフォーメーション)は進まないのではないかと懸念をしています。
少し前述もしましたが、全体から見るとクラウド会計ソフト自体の市場シェアは決して低くありません。

今後生まれてくる企業はそういった新しいツールを当たり前に使いこなし高い生産性で競合になって襲い掛かってきます。
今のうちに規模でリードする企業は余剰時間を作って、更に生産性の高い仕事にリソースを割いていくことが事業継続の戦略上必要だと感じます。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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