財務トピックス(コンサルタントコラム)

【無料チェックリスト付】ホールディングス化のメリット・デメリット

  • 最終更新日/

皆様こんにちは。
船井総研の金融M&A支援部、財務・組織再編チーム・リーダー小松です。

新型コロナウイルスによる経済の停滞によって、日本全体で閉塞感が漂っているように思いますが、少しずつ明るい兆しも見られるようになってきているとも感じております。
特定警戒都道府県以外の34の県をはじめ、特定警戒都道府県の一部でも緊急事態宣言解除の方向で調整されておりますし、徐々に弊社のクライアントからも前向きなご相談を受けることが増えてきております。

とりわけ、私たち金融・M&A支援部においては、「コロナ関連の資金調達」に関する相談と合わせて、「M&A」や「ホールディングス化を主とする組織再編」の相談が増加基調にあります。

今の時期にM&Aと聞くと、事業を手放す「売りを希望される案件」だと思われるかもしれませんが、「買いを希望される案件」も非常に増えてきております。
コロナ収束時にしっかりと事業を伸ばすことができるよう1つの手段としてM&Aを意識されており、先手先手で準備されているということかと考えられます。
同様の理由から「ホールディングス化」も相談が増えてきており、この動きは「ウィズコロナの時間を上手く活用し、今後の経営戦略を再立案されている企業が増えている」とも換言できるのではないかと思っております。

ご支援先においても、従来の経営戦略・事業戦略及び戦術を頑なに変えずに平時に戻ることを待ち構えている「ビフォーコロナ組」と、潮流を鑑みて可能な範囲で変化・時流適用しようとする「ウィズorアフターコロナ組」に二極化しつつあるように感じておりますが、上記のような相談を頂く企業様の多くは、後者であるように思います。

この両者の動きの違いはコロナ収束後に大きく生じると考えており、是非皆様にも、実際に取り組むかどうかは別として、一度しっかり時間を設けて自社の戦略・戦術を見つめ直していただき、必要に応じて適時適切な情報収集をされることをお勧めいたします。

弊部においても本コラムを通じて、少しでも有益な情報の提供が出来ればと考えておりまして、今回は相談の多い「ホールディングス化を主とする組織再編」についてお伝えできればと思います。

本項目ですが、一度でお伝えしきることが出来ませんので、下記の4回シリーズでご紹介できればと思っており、今回は「ホールディングス化のメリット・デメリット」という題目でご説明させていただきます。

尚、今回は無料特典として、船井総研が考えるどんな企業がホールディングス化をすべきかを推し量る『ホールディングス診断チェックリストのご提供』及び『チェックリストに基づく経営相談』も承っております。ご興味のある方は、下記をクリック頂ければと思います。

➡『“無料”ホールディングス診断チェックリスト』のダウンロードはこちらから

■4回シリーズ
<第1回>ホールディングス化のメリット・デメリット
     【無料特典付:ホールディングス診断チェックリスト】
<第2回>ホールディングス化に活用される「株式移転」
<第3回>読めばわかる「会社分割」の活用方法
<第4回>M&Aで活用する株式交換の極意

ホールディングス化と聞いて、皆様は何を思い浮かべますでしょうか。

大企業、コングロマリット、(非上場企業あれば)自社株対策、といったワードがすぐに浮かんだ方も多いかと思いますが、実はそれだけではありません。
つまり、多くの企業において検討余地のあるテーマであり、本日はそのあたりについても触れていければと思います。

ホールディングス化とは

改めてホールディンス化とは何なのか、まずもってご説明させていただきます。

ホールディンス化とは、持株会社を株主とし傘下の企業の管理や指導する、あるいはグループ全体の戦略や経営方針の立案などをできるような組織体制にすることを指します。

グループ会社の株式をホールド(保有)する会社を、持株会社や親会社といったり、ホールディングスやホールディングカンパニーと呼んだりします。
また中小企業におけるホールディングス化は、複数事業展開する1つの企業を株式移転や会社分割などを用いてホールディングス化することが多いですが、複数の企業を有する場合は株式交換を用いて同体制を築く場合もあります。ホールディングス体制のイメーは下図の通りです。

メリット・デメリット

ホールディングス化のメリットですが、一般的には主に以下が挙げられます。
(1)ホールディングスである親会社は経営戦略の立案・事業会社は本業に専念、といったようにグループ内での役割を明確化できること
(2)事業会社に対して権限移譲を図り、事業会社の意思決定スピードを上げることや事業会社での独立採算管理を徹底することによって事業の成長を加速させること
(3)財務経理、総務、人事といったバックオフィス業務のホールディングスでの一元化による経営資源の効率化、事業会社へのシェアードサービスの高度化
(4)戦略的にM&Aを進められる推進体制作り

弊社への相談においては、最近では特に4つ目の「M&Aの推進体制づくり」を企図してホールディングス化を考えられている企業が増えてきております。
勿論、デメリットもございます。
その他、一般的なメリット・デメリットについては、以下に示しておりますのでご参照いただければと思いますが、ホールディングス体制を敷くことで企業が抱える様々な課題の解決に繋がるの可能性があることを感じて頂けると思います。

例に基づくホールディングス体制移行の効果

では、もう少し具体的にイメージできるよう例にてご説明させていただきます。

■企業概要
地方に本社を構える、年商20億円の地場有数の一般住宅向けビルダー。創業から40年経つ老舗企業で10年ほど前までは年商2億円前後であったが、同時期に実父から子息である現社長で当社を承継して以降、急激に業容拡大。
事業承継後に介護事業とFC飲食事業に参入し今期は年商24億円、来期は30億円超となる見通しであり成長フェーズにあります。
当時、関連会社はなく1社で複数事業を手掛けていました。

■悩み・課題
(1)企業成長の鈍化、不採算事業(店舗)の発生
前社長の退任以降、古参の取締役も徐々に退職。現社長の脇を固めるのは、経理である妻とキャリア採用した各事業部の責任者2名であるが、成長鈍化が表面化しつつありました。より一層の業容拡大のためには事業部責任者2名の成長が必須であり、もっと事業別の採算や資金繰りを把握し、経営者目線で働いてほしいという気持ちを抱いていました。
(2)事業規模の拡大による資金管理が煩雑化
全く異なる事業を複数運営しており、事業別での損益・資金繰りが把握しづらい状況にありました。
金融機関からの借入を行う際にも、金融機関担当者から「どの事業に資金が使われるのか」、「事業別での資金繰り管理表を提出してほしい」といったことを求められ、対応に苦慮。
社長本人も、なぜこんなに資金が足らなくなるのか詳細を把握できておらず、漠然と何らかの仕組み化による財務の可視化が必要と考えられていました。
(3)親族内の事業承継が不透明
子息子女は1男1女で、ゆくゆくは長男に事業を譲りたいと考えているものの、27歳の長男は大手企業に勤務しており、現在のところは後継の意思が不透明。
24歳の長女は結婚して実家を離れており、当社事業に全くタッチしていないという状況でゆくゆくの事業承継者が定まっていませんでした。

■今後の事業展開の構想
52歳の社長は、60歳までに年商100億円を目指すべく、<1>既存事業の広域展開、<2>新規事業参入を行っていく方針であり、M&Aなどの活用も視野に入れられていました。
また朧気ながら65歳での引退を考えており、60歳時点で承継を本格的に考える意向を持たれていました。

そんな中で、上記の悩み・課題解決のためにホールディングス化体制へ移行されました。

■ホールディング体制移行による効果

散見されるホールディングの失敗事例

ここまで、主にホールディングス化の魅力をお伝えしましたが、中にはホールディンスをうまく活用できていないケースがあります。

どんなケースだと思われますか?

自社の株価対策だけを目的としたホールディングス化、などがそれにあたります。

本来、上述したような課題を解決するために有効な手法として用いられるべきですが、副次的効果のはずである株価対策に焦点を置いて本手法を用いたために、ホールディングス(純粋持株会社)にしっかりとした機能・役割を設計できず、結果的に実体の無いペーパーカンパニーとなっているケースが散見されます。
また最近は、一時期のブームに便乗してホールディングス化した、上記のような企業から相談を受けることが増えてきたように感じます。

勿論、こういった事案は本末転倒の話であり、税務の観点からみても、税務署から不当な租税回避とみなされて追徴課税を受けることが懸念されます。

ホールディングス化前における検討事項
では、どういったことをホールディングス化の前に検討しておく必要があるのでしょうか。
(1)まずは、自社の課題・悩みや今後の事業構想を洗い出すことから始まります。
(2)次に、上記(1)や許認可等を勘案しつつグループストラクチャー、つまり組織体制(出資構成)を決定し、その上で各社にどんな機能を担わすか、を決めていきます。
(3)続いて、グループ内の取引について設計します。仮に、ホールディングスにグループ全体の事業用不動産管理を担わすのであれば子会社との地代家賃をどうするのか、人事・総務機能を担わすのであれば、業務委託手数料はどのように設定するのか、経営指導料や配当吸い上げはどうするか、といった内容です。左記決定後に、グループ内取引を踏まえた各社の損益計画の検討を行います。
(4)その後、各会社への移転資産・負債の配分を検討します。
(5)その後は、組織の人員配置など各種設計を行います。
(6)最後に、スキームや各種手続きのスケジュールを検証します。

こういった事前の検討を行い、随時必要に応じてホールディングス化の実行前に、事前に取引金融機関へ説明を行い、実行に移すといった流れです。
細かく言えばグループ全体でのファイナンスをどうするのか、そしてその役割を誰が担うのか、各社の取締役の構成はどうするのか、など検討すべきことは多くありますし、何に対して課題を持っているかによって進める手順は変わってきますが、大まかな流れは上記の通りです。

ホールディングスを上手に活用できていない企業の多くは、上記(1)~(5)の工程を経ず、税務上や資金負担の観点のみでスキームを検討しホールディングス化を実行しています。
もちろん、そういったホールディングス化をしている方の中にも「税理士に言われて悪気無く進めてしまった」という場合も多々あり、リスクを認識しないまま意図せず実行していることが多いように思います。
今後、ホールディングス化を検討する方におかれましては、以上のことを頭の片隅に置いていただければと思います。

最後に

本コラムが「後悔しないホールディングス化の実現」の一助になれば幸いです。
最後になりますが、4回シリーズの残り3回については、各組織再編行為(株式移転・会社分割・株式交換)についてご紹介したいと思います。
最後までお読みいただき、有難うございました。

◎次回、<第2回>「ホールディングス化に活用される「株式移転」」は、こちらから

【この記事を書いたコンサルタント】
小松 靖教

高知県出身。大学卒業後、地方銀行で約9年間勤務。
前職では累計100社超の中小企業を担当、豊富な営業・融資経験を強みとしている。また本部にて外国為替取引や海外取引・進出時の資金調達支援業務に従事した経験を持つなど幅広い金融知識で企業支援を行っている。
「実態を知り、最善策を立案する」をコンサルティングの信条とし、現場に出向き、経営者と密にコミュニケーションを取ることを重視する。常に誠実に、常に真剣に経営者と向き合うコンサルティングを実践している。

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