財務トピックス(コンサルタントコラム)

ホールディングス化に活用される『株式移転』

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皆様こんにちは!
船井総研の金融M&A支援部、財務・組織再編チーム・白田です。

◎第1回目「【無料チェックリスト付】ホールディングス化のメリット・デメリット」はこちら

突然ですが、○○ホールディングスという社名を1度は目にした、耳にしたことがありませんか?
中小企業においても注目を浴びている「ホールディングス」。
経営者なら絶対知っておくべき「ホールディングス」。
良く耳にする言葉だからこそ今更聞けない「ホールディングス」。

近年、中小企業におけるホールディングス体制として、図1または図2のようなスキームをよく見受けます。

(図1):同一オーナーが保有する複数会社をグループ化


(図2):複数事業を子会社化

このようなスキームは「組織再編」の一種だということはご存知でしょうか?
そもそも「組織再編」とは、会社の組織や形態を改めることで、「事業の更なる強化・会社の更なる成長」へ導くことであり、その手法は大きく分けて「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」の4つ存在します。

そこで、4回シリーズの「ホールディングス化・組織再編関連コラム」の2回目の今回は、ホールディングス化の実行時によく用いられる手法である「株式移転」についてご紹介致します。

「株式移転」とは

株式移転とは、「自社の発行済株式の全部を新たに設立した会社に取得させること」をいいます。

その中でも、単独の法人による自社株式を新設会社(持株会社)に取得させる手法を「単独株式移転」と言い、複数の法人の場合は「共同株式移転」といいます。
従いまして株主構成としては、単独株式移転の場合は変化しませんが、共同株式移転の場合は、子会社(既存会社)2社以上の株主が、親会社(持株会社)の株式を保有することになり、変化が生じます。
尚、中小企業においては、単独株式移転・共同株式移転に関わらず、グループ各社の殆どの株式をオーナー一族で有している場合が大半であり、株式を移転を用いたホールディングス化後は、オーナー一族が親会社である持株会社の株式を所有し、その持株会社は子会社である事業会社の株式を所有するストラクチャーが一般的です。

例えば図3のように、A社とB社の全株式を新設会社のC社が取得した場合、C社はA社とB社の親会社(持株会社)となります。

(図3):株式移転


なんとなく、スキーム自体はお分かり頂けしたでしょうか。
ここまで株式移転の紹介をさせて頂きましたが、ここで、よく質問を受ける「株式移転」と「株式交換」の違いについても少し触れたいと思います。

最も大きな違いは、「既存の会社」に株式を取得させるか、「新設する会社」に株式を取得させるかという点です。

図4のように、株式交換の場合は、親会社となる会社が「既存会社」であるのに対し、株式移転の場合は親会社となる会社が「新設会社」である点が異なります。

また、効力が発生するタイミングも異なるため注意が必要です。
株式移転は「新設会社の登記時」、株式交換は「契約時に決定した日時」から効力が発生します。

どちらの手法も完全親子会社となる点は同じですし、名称も類似しているので、よく混同される方も多いように感じます。
親会社が「既存会社」なのか「新設会社」なのか、というポイントを押さえておきましょう!

(図4):株式交換と株式移転の違い

株式移転を行う目的と活用事例

弊社に寄せられるホールディングスの相談は年々増加しており、会社ごとに異なる多種多様な目的が存在します。

「所有(投資戦略)と経営(事業戦略)の分離による企業成長を図りたい」
「事業会社の経営者というポストを作り、社員のモチベーションアップを行いたい」
「M&Aに機動的に対応できる体制を構築したい」
「事業承継の準備をしたい」

等々、様々な課題解決を目的としてホールディングス化を検討される企業が増えています。

ここで、住宅不動産を経営するA社の事例を紹介させて頂きます。
A社では、主力事業である住宅不動産事業に加え、複数の事業を手掛けていました。当社は、創業から10年超で勃興期にあり、更なる企業成長に向けて、主力事業での越境展開を検討されていました。
経営者としては、
(1)今後も越境を含む多店舗展開が想定される中で、事業別・店舗別の損益管理を徹底できるのか、
(2)事業規模が大きくなっており、もう少し組織立って事業運営ができないか、
(3)業容が拡大する中で、漠然と感じている事業承継を見据えた準備が出来ないか、
といったことを自社の悩み・課題と考えており、その解決の一案としてホールディング化を模索されていました。

ホールディングス化によって得られる、上記(1)-(3)の課題解決案にメリットを感じ、結果としてホールディングス化を実践されました。
その際、1つの法人で複数事業を手掛けていること、主力の住宅不動産事業で許認可が必要であったこと等を勘案し、純粋持株会社の位置付けで法人を新設する「(単独)株式移転」を活用されました。

いかがでしょうか。
「自社でも当てはまるなぁ」と感じられた方も多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、企業の成長局面に応じて悩み・課題は変わってきます。

本コラムを自分毎と捉えてお読み頂いている皆様の多くは、創業間もない零細企業ではなく、更なる成長を求めている企業や成熟フェーズにある企業の経営者様だと思います。企業のライフサイクルに応じての悩み・課題は類似しますので、当然のことです。

「共同株式移転」と「単独株式移転の」の違い

それでは、もう少し深く「株式移転」についてお話させて頂きます。

冒頭で、株式移転には「共同株式移転」と「単独株式移転」の2種類がある、とお伝えしましたが、どういった場合にどちらの手法が用いられるか、想像がつくでしょうか。一般的には、以下といわれております。
一つ目の共同株式移転のキーワードは、「経営統合」です。
経営統合による組織再編を行う場合、合併という手法が用いられることもありますが、
合併の場合はA社およびB社が1つの会社に統合(図5のように、新設合併の場合は会社が設立され、吸収合併の場合はA社またはB社どちらかが存続)されます。

(図5):合併


個別に経営を行っていた企業同士が合併を活用して経営統合する場合、同業種であっても経営方針や社風といった組織カルチャーやシステムなどバックオフィス体制も異なるため、社員のモチベーション低下や社員同士の衝突等、期待していたシナジー効果が得られないばかりか、合併による「負のシナジー効果」が生じるリスクを孕んでいます。
それを回避する手法とて、共同株式移転が用いられるケースがあります。

共同株式移転とは、複数の法人が共同で株式移転を行い、複数法人の全株式を新設法人に取得させて完全子会社化する手法です。
図6の通り、株式移転による経営統合は、新設されるC社がA社とB社の全株式を持ち親会社となるため、A社とB社はそれぞれ組織として存続します。
従って、それぞれの独立性を維持しながらの経営統合が可能となり、上記のリスクを懸念するケースなどでは有効とされています。

(図6):経営統合


上場企業の事例として、2014年に、ネットワーク事業を営むドワンゴと、出版・映像事業を営むKADOKAWAが、共同株式移転により親会社の「株式会社KADOKAWA・DOWANGO」を設立し、経営統合したことが挙げられます。
両社が持つプラットフォームを活かした新たなプラットフォーム確立のために実行されたと言われています。

二つ目の単独株式移転のキーワードは、「経営と所有の分離」です。

中小企業における一般的な単独株式移転は、複数事業を手掛ける「1つの法人」がホールディングス化を機に、「純粋持ち株会社としての機能を有する親会社を新設」し、会社分割等を実施して各事業別で法人化することでホールディングス体制を敷くことが多いです。

少しストラクチャーは異なりますが、上場企業の例として、2014年に株式会社キリン堂が単独株式移転により親会社の株式会社キリン堂HDを設立し、持株会社体制へと移行した事例がありますので紹介させて頂きます。

本件の場合は、複数の会社を保有する「1つの法人」が単独株式移転を行い、持株会社(ホールディングカンパニー)を設立し複数の事業会社を集約することで「グループ経営」の高度化を図りました。具体的なスキームとしては、A社とB社の親会社であるC社が単独株式移転を行い持株会社となるD社を新設、その後にC社がA社とB社全株式を現物配当し、その結果、A社・B社・C社の3社がD社の完全子会社となりました(簡素にすべく、実際の子会社数とは異なる記載をしております)。

株式移転による持株会社体制移行によって各子で会社のミッションを明確にし、グループ経営によるシナジー効果を発揮することで、更なる企業成長を図るために実行された、と言われています。

(図7):持株会社体制移行

「株式移転」の7つのメリット・デメリット

では、株式移転を行うメリット・デメリットをご紹介します。

株式移転の5つのメリット

1.買取資金が不要
対価として株主に新設会社の株式を交付するため、充分な資金が無い場合も実施できます。

2.組織の内部統制が容易
統合される各会社の組織自体は変わらず、独立性が保たれているため、スムーズに統合が進み、合併と比べてシナジー効果をスピーディーに発揮し易いです。

3.株主全員の同意が不要
株主総会の特別会議で3分の2以上の承認を得ることができれば、少数株主を強制的に排除し子会社化することができます。

4.労働契約・許認可等の手続きが不要
資本である株主の変動のみ生じ、主体事業の変更やそれに伴う財産の移転はないため、手続きは不要です。

株式移転の2つのデメリット
1.共同株式移転は株主構成が変動
単独株式移転の場合は気にする必要はありませんが、共同株式移転の場合は複数の会社の株主が持株会社の株主となるため、株主構成が変動します。

2.一定の手続きを要する
下記スケジュールのように、各種手続きを踏む必要があります。

【株式移転の主要手続き 】
(1)完全親会社と完全子会社の条件合意・株式移転計画の作成
(2)取締役会の承認・株式移転契約の締結
(3)事前開示書類の備置
(4)株主総会の招集通知・株主への株式移転の通知または公告
(5)株主総会の特別決議による承認
(6)反対株主の株式買取請求
(7)株券提出手続
(8)効力発生および登記
(9)事後開示書類の備置

「株式移転」の展望

平成9年に独占禁止法が改定され、「持株会社の設立」が解禁となってから約20年。
大企業が実践するイメージのあったホールディングスも、近年は中小企業まで広がりを見せ、注目を浴びています。
「企業成長」を果たすのに、大企業、中小企業などの企業規模は関係ありません。昨今、ホールディングス化が広がりを見せる理由はまさにこの点に尽きるのではないでしょうか。

目まぐるしい時代の変化に合わせ、組織再編を行うこと、
いや、組織再編を行ったことによる視野の広がりは、更に企業成長を促進させるエナジーとなることでしょう。
引き続き「組織再編を用いたホールディングス化」を行う企業は益々増加することが予想されます。

即実行に移すことができるよう、また一歩上のステージへステップアップする戦略術として、「株式移転」と「ホールディングス化」をしっかり学んでいただくのも良いかもしれません。

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近年相談が増加している「ホールディングス化を主とする組織再編」
明日は、全4回に渡り「ホールディングス化とは何か」「どのように活用すべきか」について解説していく連載の第3回目をお送りいたします。

船井総合研究所では、金融知識を有する財務・組織再編コンサルタント、業界トップクラスの実践値を有する業種コンサルタントが一丸となり、クライアントの経営課題の解決に取り組みます。
単に「ホールディングス」という箱を作って終わり、ではなく、ホールディングス化の先にある企業成長の絵を描き、それを実行するところまでをサポートさせていただくことが可能です。

従来の経営戦略・事業戦略及び戦術を頑なに変えずに平時に戻ることを待ち構えている「ビフォーコロナ組」と、潮流を鑑みて可能な範囲で変化・時流適用しようとする「ウィズorアフターコロナ組」。
この両者の動きの違いはコロナ収束後に大きく生じると考えており、是非皆様にも、実際に取り組むかどうかは別として、一度しっかり時間を設けて自社の戦略・戦術を見つめ直していただき、必要に応じて適時適切な情報収集をされることをお勧めいたします。
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◎次回、<第3回>「【読めばわかる】「会社分割」の活用方法 」はこちら

【この記事を書いたコンサルタント】
白田 彩夏

関西学院大学卒業後、メガバンクの事業承継・ファイナンシャルプランナーとして勤務し、新卒から4年連続で営業表彰を受賞。
船井総研入社後は、企業オーナーが抱える悩みを、法人財務の側面のみならず、オーナーが持つ「資産」の観点からもアプローチできることを強みとしている。
持ち前の明るさで、オーナーの目指す姿を照らす元気玉として活動することをモットーとしたコンサルティングの提供を行っている。

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