財務トピックス(コンサルタントコラム)

財務コンサルティングの現場から~ 介護事業経理担当者の苦悩と世にはびこるDX(1)

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皆さま、こんにちは、船井総合研究所の石田知大です。
普段は、中小企業様に向けて資金調達・財務管理・経理改善を始めとした管理部門のサポートを行っております。

お付き合いをさせて頂く企業さまの中でも特に数値管理や管理分門が優れている業種とはどこか?と言うと、これは「介護」関連業種の企業様だという感覚があります。

概ね、売上高2億円~5億円程の介護・福祉業の経営者様と面談をさせて頂くと、必ずと言っていいほど強力な手腕を持った事務長にご同席を頂くことが多いです。
お話を伺っていくと企業の経営成績の一つである損益計算書(P/L)の数字については、施設や部門ごとに、精度がほぼ90%以上の数値計画を作成する。ということが出来ている。なんてこともざらにあります。
こうなってくると自社の数値管理については十分に出来ている。というように思えます。

これは、保険収入をベースにして安定的に事業運営を行う中でマネジメントを上手く行うことによって正確な計画を策定する事が出来ていると言う事だと思います。
これがここまで出来ているというのは、私が日常出会う企業の中でも特に上位レベルの管理だと感じます。
多くの中小企業では、特に「事業計画を作成していない」「事業計画の精度はまばらでそこまで着地数値が高くならない」と言う状態の方が多いです。

では、そういった事業者様は、はたして管理において課題は全くないのか?というと、意外と課題が多く残っているケースがあります。
そしてこれらの課題は現場で働く経理担当者は既に十分に承知している内容であることが多いです。

現場で休憩時間や隙間時間に2人で話をする中でこんな話を聞くことがありました。

「この資料作成する際に、確認のための資料を作成しているけど、これ本当に必要なのかなって思いながら作成してますね…」
「前職でやってたんですけど、この管理はあのツールで効率化出来そうなんですが…」
「とにかく部門や、施設毎の管理が細かい分、毎日てんてこ舞いですね。各種支払や処理が増えるので月末は毎月恐怖です」

管理レベルの既に一定高い水準にある先は、高い先で課題はいくつか発生しているのだろうと思いますが、その一つは、「事務長や社長への意見がしにくい環境にあるのではないか?」と個人的な感覚としては感じます。

特に経理畑となると一定の専門能力が必要ですから転職組が多くいる部門だと思います。
その分過去の経験を通して、「こういった管理方法、ツールの方が良いかも」と感じながら業務に当たっている方も少なからずいらっしゃるのでは無いかと思います。
決して現状の否定をするつもりは無くとも、改善の提案というのは今の方法の否定に聞こえてしまいがちです。

そんな「こうしたほうがいいかも…」思っていても口に出しにくく、日常業務に当たっている現場の経理担当者の声を聞いて思ったのはこのようなことです。
余談ですが、介護事業者の方のご支援を行う際は確かに関連の事務長や施設長等を始め多くの幹部が同席して打合せをすることが多いです。
こうした状況だと、「●●の仕組み見直した方が良いですよね!」とは口に出せる人はそう多くは無いだろうな。と感じます。

この業界にいるからだと思いますが、最近やたら「DX」という言葉を聞くことが多いです。
「デジタルトランスフォーメーション」という言葉を「DX」と表現しているもので、同様の言葉で「デジタルシフト」、「デジタル化」、「デジタル活用」というものもあります。

厳密に言うとそれらは別物であると定義づける議論もありますが、厳密である必要性は全く感じないので、同義としてお話を進めますが、これらは、文脈上「既存の業務を、デジタルツールを利用して、よりよくしよう」という意味合いで使われることが多いです。

業務改善を行う上で、デジタルツールを使わない。という選択肢はあり得ません。
例えば複式簿記とそろばんで経理を行っていた時代から、電卓の活用、そこから会計ソフトの利用と、それぞれ定型業務がデジタルツールによって効率化されて来たという今までの当たり前の変革がまた一歩進んでいるという話だと思っています。
このDXとやらに対する私の理解は、この通りです。

ここまでの現状認識を共有したところで、次週は便利なはずのDXツールがなぜ普及しないのか、原因を分析していきます。
逆を返し、「ダメになってしまうポイント」を押さえていただくことで、あなたの会社で導入する際のヒントとしていただけましたら幸いです。

次回の内容はこちらから

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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それを資金面から実現する戦略をデザインします。

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