財務トピックス(コンサルタントコラム)

事例で読み解く2021年の「融資」(2) 融資交渉に欠かせぬ5つの要素

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2020年、世界はコロナウイルスによって姿を変え、中小企業を取り巻く「融資」の環境も激変しました。
無利子・無担保の精度融資という「強い痛み止め」が効いている現在、一見中小企業のおカネに関する混乱は収まったように見えますが、実は全国の企業でいま起き始めている「あること」を知っておかないと、ますます変化する2021年の融資の時流についていけなくなる危険性が高まっています。

今回はシリーズ最終回として「当たり前、でも忘れがち」な融資交渉で抑えておくべきポイントに関して解説します。


 
前回は、コロナ市況によって拡大した無担保・無利子の制度融資によって融資との付き合い方が変化し、来年以降はより知識を持って融資に向き合うべきということを、事例を用いてお伝えしました。

とはいえ漠然と「融資の向き合い方」と言われたところで、日々の経営が忙しいところなかなか銀行員が持ってきた提案書面を吟味する時間もないはずです。
また、銀行・信用金庫は得てして融資における専門用語(トーガシ、短プラ、スプレッド、TIBORレート、極度保証…)を使うことがありますが、正直何のことやらわからないという方も多いのではないでしょうか。
もちろん丁寧に説明をしてくれる金融マンもいますが、金融機関の担当者はルール上どうしても数年おきに交代してしまうため、その環境が長続きするとも限りません。

経営者は金融機関と向き合う際、最低限何に気を付けておくべきなのでしょう。

■融資審査マンもここを軸に考える 「融資の5大要素」

結論から言えば、実は融資交渉において最低限ここだけおさえれば良いというポイントはたった5つ、それも効いてしまえば「なんだ、そんなことか」と思ってしまう内容です。
それが「金額・金利・期間・担保保証・条件」の融資の5大要素です。具体的には、

・金額  :希望通りの融資金額が出るのか、出ないのか。
・金利  :何%で融資を受けることができるのか
・期間  :何年で融資を借りることができるのか
・担保保証:個人保証がつくのか、担保の差入はあるのか
・条件  :(※多岐に渡るが)資金使途は何で、借入形式がどうなるのか

という内容を、交渉のなかで自社にとって100点にできるかどうかが大切です。
これは一見初歩的な内容にも見えますが、実は銀行員は融資交渉を行う際、常にこの5要素のどこかを確定させるために発言していることがほとんどで、相対する我々が「あっ、これは期間の話だな」等と理解しているかどうかによって、劇的に交渉の精度が向上します。
たとえば、以下をご覧ください。
融資交渉における金融マンの発言
金融機関は、融資を受けたい企業にあらゆる質問を投げかけますが、前述の通り内容の多くは融資の5大要素に集約されます。
表のような「あるある質問」は、一見とりとめのないやり取りに過ぎませんが、この質問中に銀行員は頭の中で案件5要素を埋めていき、それが全部埋まって「融資稟議を書けそうだ」と感じた段階で面談を終了します。

つまり、こちらが先に5要素を煮詰めた状態で金融機関と相対しないと、せっかく交渉してもいつまでも希望通り融資提案が来ないような事態も発生してしまいます。

はじめのうちは、メモに案件5要素を書きだした状態で、5つをきちんと自社の希望通りにPRできているかどうか、チェックしながら面談するだけでも、得られる結果がずいぶん良くなることかと思います。
簡単なようで言い忘れてしまうことも多いので、馬鹿にせず、愚直にやってみることをお勧めします。

■まとめ:来年を迎える前に金融機関と面談を

今回は2回に分けて、コラム内で2021年になるまでに知っておくべき、これからの融資との付き合い方というテーマで事例とノウハウをお伝えしてきました。

2020年は言わずもがな世界の常識がひっくり返るような事態が起きましたが、2021年はその揺り戻しによってまた別の見たことがなかった潮流を経験するのではないかと思います。
それは今回のテーマだった「財務・金融」に限らず、人材採用、経営、人間との関わり方において、いわゆる「ニューノーマル」が醸成されてくるということに他なりません。
もちろんどの要素も経営において欠かせないのですが、全ての土台となるお金、つまり融資に対する考え方を年内に整理しておくことは、今すぐやって損はないと思います。

ぜひ、もう1度コラムを読み返すなかで、早速取り組んでいただけましたら幸いです。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
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