財務トピックス(コンサルタントコラム)

コロナ後の金融時流に備えて ~中小企業経営者が今知っておくべきこと~(1)

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コロナ以降の金融時流を考える

 2020年はコロナの影響により、多くの企業が影響を受けています。後世に振り返った際には時代の転換点となるような歴史的な出来事と呼べるかと思います。

 また、9月には7年8ヶ月続いた長期政権であった安倍首相の退任に伴い、菅新首相が誕生しました。菅首相は地方銀行の数が将来的には多すぎるという話をしており、地方銀行の再編が進む可能性があります。

 コロナによる今後の金融機関への影響や新政権により金融時流がどのように変化するのか。この激動の時代において、中小企業経営者はどのような対策や準備が必要なのか、今回のコラムではお伝えしていきたいと思います。

銀行大再編の時代?

 最近は、銀行の再編問題が話題になることが増えてきました。ここ数年でも地方銀行の再編は活発化しています。大きな合併としては、近畿大阪銀行、関西アーバン銀行、みなと銀行による関西みらいフィナンシャルグループの誕生(2018年4月)や、足利銀行と常陽銀行を傘下にするめぶきフィナンシャルグループ(2016年10月)、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(2016年4月)と規模の大きな地方銀行同士がグループとなるケースが増えていました。

 最近では、同一県内での合併事例も出てきており、長崎県を地盤とする十八銀行と親和銀行が2020年10月に十八親和銀行として、ふくおかフィナンシャルグループ傘下で誕生します。また、2021年1月には新潟県を地盤とする第四銀行と北越銀行が合併し、第四北越フィナンシャルグループが誕生する予定です。

 まだまだ、この傾向は続くことが予想されます。なぜ、地方銀行の合併が進んでいるのか、この理由を少し見ていきたいと思います。

①経営環境の悪化(マイナス金利)
②時限措置としての合併特例法の制定

①経営環境の悪化

 日本では長らく低金利環境が継続されていました。1999年にゼロ金利政策が取られてから数度の解除はあったものの、低金利環境が続き、2016年1月にはマイナス金利政策が発表され、2016年2月から実行にうつされました。

 余談ですが、この当時、私自身は地方銀行の東京支店で勤務しており、マイナス金利が発表された際の今後どうなっていくのかという不安や混乱を思い出します。

 あくまで、銀行が日銀に預ける日銀当座預金の金利がマイナスになるということであるため、企業や個人向けの金利がマイナスになることはないという話も出ていましたが、実際にはその後、貸出金利が0%となる企業向け融資も出てきており、歴史的な転換点だったと感じます。 このように、金利環境が全体的に低下している場合、同じ融資をしていても金利が徐々に下がり、銀行の収益力を低下させるという弊害が出てきてしまいます。

 体力のない銀行は真綿を首で絞められるように、収益が低下しジリ貧になっていく最悪のシナリオが想定されます。

②時限措置としての合併特例法の制定

 上記のような状態にも関わらず、銀行の再編はこれまで大きくは進んでおらず、地方の盟主として1県に1銀行もしくは、複数の地方銀行が存在する状態が続いていました。
 
 しかし、一方では合併を進めるにあたり、弊害となっていたのが、独占禁止法という法令です。同一県内での地方銀行の合併により、消費者(利用者)が損害を被ることがないように独占禁止法が機能を果たしていました。ただ、上記の流れを考えると競争環境を維持することがメインになってしまい、企業存続が危ぶまれるという事態が起こりうる可能性もあります。

 まさしく、十八銀行と親和銀行の合併では、公正取引委員会が認めずに合併が長引いたという事例であり、再編を進めたい金融庁と公取委の対立が生じました。
 そのような状況もあり、2020年3月に「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律案」が閣議決定されました。

 この時限法案は独禁法の特例として、地方銀行同士の合併を認めるものになります。10年以内という時限措置ではあるものの、明確に「地方銀行の合併」を進めていく意思を感じることができます。
 こちらの法案により、これまで以上に地方銀行同士の合併が進むことが予想されます。また、地方銀行同士の合併以外でも台風の目としてSBIホールディングスによる地銀連合構想が進んでいます。
 出資によるゆるい業務提携ではあるものの、島根銀行や福島銀行、筑邦銀行、清水銀行などがSBIからの出資が進んでいます。
 
 これらの地方銀行の合併による中小企業の影響はどのようなことが想定されるのでしょうか?
もちろん、これまでよりも銀行の数が減少することにより取引が集中するリスクが増えることが想定されます。また、融資を受けにくくなる可能性もあります。
 銀行内部では銀行の体力や経営判断により1社に対する融資額が決められています。また、融資審査も融資金額によって支店の支店長決裁、本部でもどの役職で決裁するのかが細かく決められています。
 つまり、合併により、自社向けの融資金額が単純に増加した場合でも、これまで以上に決裁権限が上がる可能性があります。決裁権限が上がると企業の内容をこれまで以上に細かく見られることにつながります。

 つまり、これまで以上に自社のことを厳しい目で審査されるということです。

 銀行再編による影響をここまで見てきました。この流れは中長期的な話です。ここで短期的に外せない視点があります。それがまさしく「コロナによる影響」です。

 現在、コロナ対策融資の拡充により歴史的に見てもお金を借りやすい状況と言えます。多くの会社でコロナ融資をいくら借りたという話が話題になります。
また、企業活動を守るために、比較的融資審査が厳しくないという点も今後のリスクをはらんでいる要因になります。

 コロナ融資の影響もあり、企業の倒産数は現時点では歴史的な数値として増えているということはありません。
 しかし、怖いのはこれからです。

◎次回の内容はこちら

【この記事を書いたコンサルタント】
竹村 良太

早稲田大学卒業後、地方銀行に入行。8年間の銀行業務では、中小・中堅企業から上場企業まで幅広い法人営業を経験。その後、船井総合研究所に入社。
前職時代は事業性評価・財務分析に基づく融資業務に取り組み、中小企業・上場企業向け融資実績を数多く残す。
経営者に寄り添い「三方よし」の精神で財務コンサルティングの提供を行っている。

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