財務トピックス(コンサルタントコラム)

財務分析の基本の「キ」~正しく分析する上でおさえておきたい財務指標とは?(1)

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今回のコラムテーマは「財務分析」の基礎

「収益性分析」「安全性分析」「効率性分析」「生産性分析」「成長性分析」

これらの指標説明は書籍等でもよく扱われますが、「分析の意味やそれぞれの違い、活用の方法についていまいちぴんと来ない…」という方も少なくないのではないでしょうか。

そこで本コラムでも、改めて各分析の主要指標を解説していきますので、既に理解されている方は「復習」として、まだこれからという方は「理解を深める」ために読み進めていただければ幸いです。

弊部では無料の経営相談(財務分析レポート付き)も随時受け付けておりますので、自社の財務分析にこれらの指標の落とし込みについて相談されたい方は、お気軽にお申し込みください。

1.そもそも「財務分析」とは何か?

財務分析とは、財務諸表(決算書)を参考にしながら企業の経営状況を財務的な側面から分析することです。
算出された数値が業界内の標準値や同業他社と比較して高いのか、低いのか、適正水準なのかどうかなどをチェックします。

こうした財務分析を行うことで、企業経営における課題や問題点を発見し、今後の経営戦略に活かすことができます。
また、ただその年の財務状況を調べるだけでなく、数年間にわたっての数値の推移を調べることで、会社の将来予測に活用することも出来ます。

他に、企業に融資をおこなう銀行やお金を出資する投資家が判断材料として役立てる場合も多くあります。
銀行や投資家は財務諸表からその企業の収益性、生産性、安全性、成長性などを分析します。

収益性とは、その企業が儲かっているかどうかを判断する指標です。
売上げがどれだけ多くても、支出のほうが多ければ儲かっているとは言えません。

生産性は、社員一人あたりの売上高で確認します。
とりわけIT分野で重要視される項目です。安全性は収入と支出のバランス、資本金などから倒産のリスクがどれくらいあるかを調べます。

成長性は過去5年間の売上高や利益の平均を算出することで調べることができます。

2.財務分析に欠かせない「財務諸表」の読み方

財務諸表の中でも特に注目するべきは「貸借対照表(B/S)」、「損益計算書(P/L)」、「キャッシュフロー計算書(C/F)」です。
「貸借対照表(B/S)」には、決算時点での資産や負債、純資産などの金額が記載されています。
「バランスシート」と呼ばれることもあります。略して「B/S」と表記されます。
賃貸貸借表を見る際のポイントは、その年の数値だけを見ないことです。
過去数年の数値と比較することにより、その増減や比率がどうなっているかをチェックします。

「損益計算書(P/L)」には、一定期間における企業の業績について記載されています。
損益計算書は英語にすると「Profit and Loss Statement」になるので、「P/L」と略して表記されることも多いです。
事業年度の一定期間での売上や売上原価、経費などが記載されているので、最終的にその企業がどれくらい利益を上げたのかが分かります。

年間のお金の流れを示した「キャッシュフロー計算書(C/F)」は、英語では「Cash Flow Statement」と表記されます。
略して「CF」や「CF計算書」と呼ばれることがあります。
決算期の間のお金の流れをどのような要因で増減したかが記載されたものです。
キャッシュフロー計算書は、中小企業には作成義務がありませんが、上場企業は作成・開示が義務付けられています。

3.財務分析の方法1:収益性分析のやり方と活用方法

財務分析は大きく分けて5つに分類することができます。まずは収益性分析について詳しく解説します。

3-1.収益性分析とは?

収益性分析とは、その企業がどれくらい儲かっているのかを調べる指標です。
企業の目的で重要な要素は利益を出すことです。そのため、効率的に利益を上げているかどうかを確認することは、とても重要なポイントとなります。
どれだけ売上高が大きくても、実際の利益が少なければ効率が悪い経営と言えます。

3-2.収益性分析のやり方:押さえておきたい指標

収益性を見る場合、総資本利益率(ROA)と自己資本利益率(ROE)という代表的な2つの見方があります。

総資本利益率は、総資産でどれだけ利益を出したかを測る指標です。
計算式は当期純利益を総資産で割った数値です。この数値が高ければ高いほど、資産効率が良好だと判断されます。

総資本利益率(%)=当期純利益÷総資産×100

自己資本利益率は、その企業の自己資本(株主総資本)に対して当期純利益をどれだけ生み出したかを測る指標です。
計算式は、当期純利益を自己資本(株主総資本)で割って算出します。
この数値も高ければ高いほど効率が良い経営として評価されます。

自己資本利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100

ここでは、他にも3つ指標を説明したいと思います。まずは売上高総利益率です。
売上高総利益率は、売上総利益を売上高で割って求めます。
この数値が高いと利益率の高い商品やサービスを提供していると言えます。業種によって大きく異なり、飲食業は一般的には高い傾向にあります。

一方、卸売業は低くなる傾向にあります。売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の比率です。
こちらは営業利益を売上高で割って数値を算出します。
最後に、売上高経常利益率は売上高に対する経常利益の比率です。
この数値は経常利益を売上高で割ります。これらはいずれも、より数値が高いほうが収益性がよいとして評価される項目です。

3-3.収益性分析の活用方法

収益性分析を実際活用するにあたっては、ROAやROEの比率を出すだけでは良いのか悪いのか判断することはできません。
そのため、全産業や同業種の平均と比較したり、過去の比率と比べることで活用していきます。

4.財務分析の方法:安全性分析のやり方と活用方法

ここからは、安全性分析の方法について解説します。

4-1.安全性分析とは?

財務分析における企業の安全性とは、その企業の倒産リスクを測る指標として活用されます。
つまり、借入に対する返済能力が十分にある場合、その企業は安全性が高いといえます。
その逆に分析の結果が悪ければ、その企業は資金繰りに問題が生じやすいといえます。
そうした企業は倒産につながる恐れがあると判断されます。
そのため、安全性分析では貸借対照表やキャッシュフロー計算書を用いてその企業の資産と負債の割合を調べて算出されます。

4-2.安全性分析のやり方:押さえておきたい指標

賃貸対照表を用いた分析は「ストック分析」と呼ばれます。
ストック分析はある時点における企業の安定性を示した数値です。ここでは、流動比率と自己資本比率の2つの指標を説明します。
短期的な企業の返済能力は、流動資産と流動負債の割合を示す流動比率と当座資産と流動負債の割合を示した当座比率を見ることで分析できます。
これらの数値が高ければ、その企業は短期的な返済(支払)能力が高い、と言えます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

一方、中長期的な企業の安全性は自己資本比率で見られます。
総資産に対する自己資本の比率を表した数値で、この数値が高いということは借金が少なく健全な経営をしていると言えます。

自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100

「フロー分析」はキャッシュフロー計算書を用いて一定期間の資金の流れを見る方法です。
フロー分析では「営業」「投資」「財務」の3つの側面からその企業のキャッシュフロー(お金の流れ)の状況をチェックします。
営業活動の収支がマイナスの場合には本業が不調であると判断できます。
投資キャッシュフローがプラスになっている場合、その企業は所有する不動産や株を売却してキャッシュを捻出したのかもしれません。

マイナスになっている場合には、設備投資や固定資産へ投資した可能性が考えられます。
財務キャッシュフローは、借入金の返済があるとマイナスになり、融資を受けたり社債を発行したりするとプラスになります。

4-3.安全性分析の活用方法

中小企業の健全性を見るときに自己資本比率を確認することがあります。
自己資本比率を見るときに10%以上であるかを1つの基準にしています。
10%を下回っている状況であれば、どのくらいの利益を今後出していかなければいけないのかを計算して、経営計画に盛り込んでいくことも必要です。

※次回「効率性分析」「生産性分析」「成長性分析」を解説していきます

次回の内容はこちら



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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
財務指標をただ算出してその上下を評価するのではなく、それらの指標をどのように経営判断、投資判断材料とするのか、持続的な成長を支える為に必要な資金調達額を最大にするための施策を検討、実行します。
攻めの投資を実現する際に最も大切なことは、その1期のみ最大の成果を出せることではなく、持続的に最大限の成長を継続することです。
それを資金面から実現する戦略をデザインします。

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