財務トピックス(コンサルタントコラム)

財務分析の基本の「キ」~正しく分析する上でおさえておきたい財務指標とは?(2)

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コラムテーマは「財務分析」の基礎編・第2週目となります。

前回は
「収益性分析」「安全性分析」「効率性分析」「生産性分析」「成長性分析」
の内、「収益性分析」「安全性分析」について扱いました。

読み逃した方は次のリンクよりぜひお読みください。

前回の内容はこちら

本日は、「効率性分析」の解説から始まります。

5.財務分析の方法:効率性分析のやり方と活用方法

企業の経営がどれくらい効率的なのか、ということも財務諸表をチェックすれば分かります。
このことを効率性分析と呼びます。ここからは、その分析方法について解説します。

5-1.効率性分析とは?

効率性とは企業が保有している資産をどれくらい有効に活用しているかということを測る指標です。
企業はただ資産を保有しているだけでは意味がありません。その資産をいかに活用して利益につなげるかが重要となります。

そのため、いくら資産が多くても、それを効率的に売上につなげていかなければ、効率性に問題があると判断されます。
資産をうまく活用して売上につなげている企業は効率的と言えます。また、この効率性分析によって資産のバランスが適正かどうかも判断できます。
資産の持ちすぎや無駄がないかどうかにも活用できます。

5-2.効率性分析のやり方:押さえておきたい指標

効率性分析の指標としてまず上げられるのは、総資本回転率です。
総資本回転率は資産をどの程度効率的に活用できているかを示しています。具体的には、売上高を総資本で割った値です。
この数値が高いほど少ない資本で効率よく利益を上げていると言えます。
固定資産で売上高を割った値を固定資産回転率と言います。固定資産回転率は固定資産の活用度合いを見る値です。
この数値が低い場合、固定資産がしっかり管理できていなかったり、設備投資がうまくいっていなかったりする可能性があります。

総資本回転率(%)=売上高÷総資産×100

在庫回転率は棚卸資産回転率とも呼ばれます。売上高を在庫資産で割った数値です。
この数値によって在庫の数が適切かどうかの水準を知ることができます。もし数値が低い場合は在庫が長期に滞留している可能性があります。
ただし、どれくらいの在庫数が適正なのかは業種や会社によって異なります。一概に高いから良い、低いから悪いという指標ではありません。

在庫回転率(回)=売上高÷棚卸資産

売上高を売上債権で割った数値が売上債権回転率と言います。この数値は売上債権をどの程度の期間で回収できているかを表しています。
数値が高いほど債権を効率的(早期)に回収できていると言えます。

売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権残高

5-3.効率性分析の活用方法

在庫回転率や売上債権回転率はもちろん効率性の分析としても活用することはできますが、事業計画を策定するときに、過去の比率を活用することでより精度の高い事業計画の策定にもつながります。

6.財務分析の方法:生産性分析のやり方と活用方法

財務諸表を見ることで、その企業の生産性がどうなっているかを調べることもできます。ここからは、生産性分析の方法について解説します。

6-1.生産性分析とは?

企業の目的は、「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源を効率的に活用して利益を上げることです。

生産性とは、何かを生み出すにあたり、生産諸要素(生産を行うために必要な人やモノ)がどれだけ効果的に使われたかをあらわしています。
最先端の機械を導入して生産性を上げるのか、人(従業員)の作業効率を上げて生産性を高めるのか、生産性を高める方法はたくさんあります。

6-2.生産性分析のやり方:押さえておきたい指標

生産性を分析する際、見るべきポイントは3つあります。まず挙げられるのは資本生産性です。
資本生産性は資本に対する付加価値を示した数値です。その企業が生み出した付加価値を総資本で割って算出します。
機械や設備などへの投資が効率的に活用されているかを測る指標です。

「ヒト」の活用を示しているのが労働生産性と労働分配率です。
労働生産性は、付加価値を2期平均の労働者数で割った数値が算出されます。
一方、付加価値に対する人件費の割合を示しているのが労働分配率です。
この場合、人件費には給料だけでなく社会保険料や法定福利費なども加えます。計算式としては、付加価値を人件費で割った数値です。
基本的には、労働分配率は数値が低ければ低いほど良いとされています。
ただし、実際には業務内容や業種によってどれくらいの値が適正なのかは異なるので注意が必要です。

付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課

労働生産性=付加価値÷2期平均の従業員数

労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100

6-3.生産性分析の活用方法

労働生産性や労働分配率はただ比率を出すだけでは、良いのか悪いのかを判断することはできず、全産業や同業種の平均と比べる必要があります。

7.財務分析の方法:成長性分析のやり方と活用方法

今後成長の見込みがある企業は、それだけ銀行や投資家からの融資を受けやすくなる可能性が高くなります。
ここからは、財務諸表から成長性を分析する方法について解説します。

7-1.成長性分析とは?

成長性とは、その企業がこれまでにどれくらい成長してきたかという数値です。
この数値を踏まえ、今後どれくらい成長見込みがあるのかを判断する材料として活用することもあります。
成長性が高い企業は銀行や投資家から注目されるでしょう。
実際には、それぞれの企業特有の事情を考慮しながら、売上や利益の伸びについて検討します。

7-2.成長性分析のやり方:押さえておきたい指標

成長性分析の指標は4つあります。まずは売上高増加率です。
売上高増加率とは、前年の売上高と今年の売上高を比較したときの増減の割合です。
増収率や減収率と呼ばれることもあります。
今年の売上高が増加している場合は増収率、減少している場合は減収率です。
当期の売上高から前期の売上高を引いた額に前期の売上高を割って算出します。

売上高増加率(%)=(当期売上高―前期売上高)÷前期売上高×100

売上高ではなく利益を見る方法もあります。
利益増加率には経常利益増加率と純利益増加率など、対象となる利益をどこに置くかで算出方法は異なります。
どちらも当期の経常利益や純利益から前期の経常利益や純利益を引き、その数値に前年の経常利益や純利益を割って求めます。
利益増加率は増益率や減益率と呼ばれることも多いです。
これらの数字は基本的には単年度の数字を見るのではなく、過去数年分の変化をチェックします。
数値が大きいほど状況がよく、企業が成長していることを表していると言えるでしょう。

純利益増加率(%)=(当期売上高―前期売上高)÷前期売上高×100

売上高や利益ではなく、資産や従業員の増減から企業が成長しているかどうかを判断する方法もあります。
総資産増加率は利益の増加率を考慮しながら、企業がもつ資産がどの程度拡大したのかを確認する方法です。
資産増加額を基準時点の資産残高で割って算出します。この指標単体で判断するのではなく、利益増減率と見比べる必要があります。
従業員増加率も同じく、従業員の増加の割合から企業の成長性を確認します。
当期従業員数から前期従業員数を引いた人数に前期従業員数を割った値が従業員増加率です。
従業員増加率もそれ単体で見るのではなく、企業の成長率を照らし合わせてみることが重要です。

総資産増加率(%)=(当期総資産―前期総資産)÷前期総資産×100

7-3.成長性分析の活用方法

売上高増加率や純利益増加率は伸びているから良しとするのではなく、その要因も分析する必要があります。
場合によっては無理な成長をしているかもしれません。
また、最近では金融機関の間でも企業の定性面の情報を融資判断により加えていく傾向にあります。
数値を分析するだけでなくその要因もあわせて分析することでよりレベルの高い経営につながります。

きちんと財務分析をして経営に役立てよう

財務諸表を見ることで、企業のお金の流れや経理・経営状態を確認したり、今後どうなるか、どうするべきかの予測を立てたりするために活用することができます。
財務分析にはさまざまな分類や指標があるので、チェックする際にはそれぞれの意味や違いをしっかり把握しておきましょう。
そのうえで、どの指標が自社にとって必要なのかをあらかじめ知っておくことが大切です。
財務分析で数値を出すだけで満足せず、同業他社や過去の自社の推移と比較して、なにか改善できるポイントはないか、経営にいかすことはできないかと考えることで、初めて財務分析を活用したと言えます。
ぜひ、経営戦略に財務分析を役立てましょう。

詳細の財務分析、目指すべき指標・水準などは無料の個別相談にてお伝えすることも可能ですので、興味を持たれましたらご相談ください。

無料経営相談
【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
財務指標をただ算出してその上下を評価するのではなく、それらの指標をどのように経営判断、投資判断材料とするのか、持続的な成長を支える為に必要な資金調達額を最大にするための施策を検討、実行します。
攻めの投資を実現する際に最も大切なことは、その1期のみ最大の成果を出せることではなく、持続的に最大限の成長を継続することです。
それを資金面から実現する戦略をデザインします。

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