財務トピックス(コンサルタントコラム)

会社を永続させたいなら金庫番(財務担当)を置くべし

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1.はじめに

近年、中小零細企業の後継者不足問題が多く報じられています。
2019年帝国データバンク「全国・後継者不在企業動向調査」によれば、後継者不在率は65.2%となっております。
(出典:帝国データバンクWEBサイトより)https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p191104.html

また後継者の属性について、子供や親族で約35%を占めているとのことですが、単なるサラリーマンから経営者になるためには、経営者の個人保証の引継ぎ、自社株買取資金の準備の問題など、多くのハードルが存在しております。
以上、後継者不足問題が国内において大変深刻であることは周知のとおりです。

一方それと同じくらい大きな問題といえるのが、金庫番つまり財務担当の引継ぎです。
日本の多くの中小企業では、経営者自身が財務担当を兼任していたり、経営者の親族が財務担当となっております。

経営者個人の役員報酬や、経営者との会社間のお金のやり取りが筒抜けであるため、経営者の配偶者をはじめとする親族が、会社の財務を全てを管理していることも珍しくありません。

会社の資金繰り管理や資金調達の計画といった財務業務については、属人的な業務になりがちです。
これらの業務を次の世代に上手く引き継いでいくことが、後継者と同様、大きな課題となっていきます。

経営者としての地位を後継者に引き継いだとしても、会社の財務戦略を担うことのできる財務担当を引き継ぐことができなければ、後継者が客観的な財務数値に基づいた戦略を立てることができず、承継後の経営に支障が生じてしまいます。

本コラムでは経営者が財務担当を兼任していた会社が、経営者の親族以外の社内人材に財務担当を切替え、半年間で成果が出た事例を紹介いたします

2.事例

会社が成長し売上規模が一定水準を超えたら、財務担当を設置するべきと私たちは考えます。
売上規模でいえば、3億円超えたくらいが目安です。
「家業から事業へ転換」を考えるタイミングが、ちょうどそのくらいの売上規模からといっていいでしょう。

財務担当への引継ぎに成功した事例企業では財務担当を経営者が兼任していましたが、財務担当を社員の中から経営者が無理やり選定し、財務担当を設置しました。
無理やりという言い方にしたのは、そもそも財務担当に就任した方は、就任時以下のような状況だったためです。

◆財務担当就任時の状況
・簿記の知識がない
・貸借対照表(B/S)を見たことがない
・銀行との折衝をしたことがない

⇒以上からやりたくない

上記のような中長期的な目線で事業承継を考えたうえでの財務担当設置ではなく、もっと目先の財務改善のために設置し、無理やりスタートしたような恰好です。
結果として経営者が担っていた財務周りの業務は引き継げたわけですが、銀行との関係性に絞ってみると、引き継いだことで得られたメリットは絶大でした。

◆財務担当を置いたことにより得られたメリット
(1)経営者が本業に専念できるようになった
(2)銀行からの借入条件を劇的に改善できた(金額、金利、期間、保証人、担保)

(1)経営者が本業に専念できるようになった
【Before】
事例企業では財務担当設置前は、経営者が日々の銀行とのやり取りを一手に担っていました。
当時は取引している信用組合の担当者から、毎日のように経営者の携帯に電話がかかってきたものです。
・銀行にとっての期末(3月、9月末)に一泊二日だけ借入してほしい
・定期預金を一時的に預けてほしい
・経営者個人名義のクレジットカードを作ってキャッシングを利用してほしい
・取引先の経営者を紹介してほしい
・ゴルフに一緒に行ってほしい

銀行にとっての本業にかかわる要請から、プライベートなお誘いに至るまで枚挙にいとまがない様々なお願いを経営者が直接受けていたわけです。

これらのお願いに付き合ったからといって業績がアップしたり、借入の条件が良くなったのでしょうか?答えはノーです。会社の中で最も忙しい経営者が、こんな瑣末なお願いにいちいち付き合っていたら業績が上がるわけがありませんし、また借入の条件は一向に良くなりませんでした((2)参照)。

銀行サイドが自分たちのノルマ達成のために、お願いしやすくかつ、即決してくれる経営者にダメもとでお願いしているのです。財務担当設置前はそれがわからず、経営者がお願いに応じてしまっていたわけです。

【After】
財務担当設置後もお願い営業は相変わらず続きましたが、財務担当が経営者との間に挟まることで、お願い営業に意味があるのかどうか聴けるようになりました。
「(そのお願いに)お付き合いすることで何か当社にとってメリットがありますか?何かメリットがないと社長に上げられないのですけど。。」
財務担当が経営者でなくなるだけで、経営者が「うん」と言った瞬間に最終意思決定していた状態から、お願いに意味を求められるようになり、銀行の会社に対するお願い営業の参入障壁を上げられるようになったのです。

意味のない銀行のお願いセールスを切り捨てられるようになり、経営者が本業に専念できるようになる、これが一つめの大きなメリットです。

(2)銀行からの借入条件を劇的に改善できた(金額、金利、期間、保証人、担保)
【Before】
経営者が銀行と相対していた時代は、言葉を選ばずにいうと銀行から「良いカモ」にされていました。
(1)にも記載した通り、銀行より意味の分からない内容のお願いをしても、即断即決してくれる上顧客という、銀行にとってありがたい顧客として認定されていたため、借入条件についても銀行のいわれるがままでした。
融資の提案は、(本当は短期資金が必要にもかかわらず)長期運転資金の一辺倒だったり、金利は2%超の高い水準だったり、なんの説明もなく個人保証をとられる等々やりたい放題でした。
銀行の提案を経営者がストレートに受け、即断即決してはいけないのです。

【After】
財務担当設置後は、銀行に対して経営者の考えをブラックボックス化することを目指しました。
銀行からのお願いセールスを受ける①のときと同様、財務担当ではその場で意思決定ができないため、「社長に確認してから回答します」のという受け答えに終始するようにしたのです。
以上の受け答えを財務担当が徹底し、自社の財務改善に必要な提案を取捨選択し、回答することで、借りてもらうにはどうすればよいのか銀行サイドに考えさせるようになったのです。

「会社の財務改善につながる提案でなければ、この会社は借りてくれないのではないか」
「他行よりも良い条件でなければ、この会社は借りてくれないのではないか」

など勝手に銀行側が考えてくれるようになったのです。
結果、別にお願いしていないにもかかわらず、融資枠が開設され、金利も下がり、中には個人保証を外してくれる銀行も出てくるという状況となりました。

経営者が財務担当を担っていてはこのような条件改善は望むべくもありませんでしたが、財務担当を交代し、たった6か月で(1)、(2)のような成果が得られたのです。

3.まとめ

事例企業では取引銀行との関係性に絞って、財務担当を設置するメリットをお伝えしました。財務の知識が全くない方を財務担当に置いても、短期間で成果を出すことに成功しております。

売上規模が一定水準(目安:3億円)を超える会社であれば、財務担当の設置を考えてみて実践されてみてはいかがでしょうか。

【この記事を書いたコンサルタント】
石田 武裕

政府系金融機関にて10年超、融資営業・審査一体となった業務を経験した後、船井総合研究所に入社。
300社超の企業経営者に対する課題解決に向けた融資営業・審査業務を通じ、多岐にわたる業種の財務分析・審査・金融商品等に関する豊富な知識・経験を有する。
経営者の夢に寄り添いながらも、徹底した現場主義を貫き、企業経営者、従業員とともに汗をかいて支援に取り組むことをモットーとしている。

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