財務トピックス(コンサルタントコラム)

【中小企業版】金融時流を理解し銀行を味方につける令和時代の「新常識」とは? ~彼を知り己を知れば百戦殆うからず~(1)

  • 最終更新日/

1.はじめに
2.金融検査マニュアルとは
3.金融検査マニュアルの廃止により何が変わるのか?
   3-1.事業性評価 「過去」から「将来」へ
   3-2.求められるコンサル力 「もの売り」から「サービス」としての融資へ
4.「メイン」を考える
5.まとめ

1.はじめに 彼を知り己を知れば百戦殆うからず

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とは、誰もが知る中国の兵法書「孫氏」の一説です。彼とは敵、己とは自分自身、またはその味方のことを指しています。

ビジネスにおいて、敵とは競合企業や市場環境、己は言わずもがな自社のことですが、さて、銀行・信金・信組といった金融機関をあなたはどちらに位置づけているでしょうか?

「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」を絵に描いたような銀行
自社の苦しい時期をリスクを取って支えてきてくれた銀行
可も不可もなく、あくまで銀行は銀行(お金さえ融通してくれたらOK)

と、これは「金融機関とどのような付き合いをしているか」によって意見が大きく異なるでしょう。

このコラムは、金融機関を警戒すべき「敵」ではなく、企業経営をサポートしてくれる「味方」につけるために、読者の皆様に金融機関がイマ置かれている「金融時流」を理解していただくことを目的に執筆されています。

令和元年の2019年、
金融機関は「金融検査マニュアル」の廃止という大転換期を迎えました。

この出来事に端を発する、令和時代の金融時流「新常識」を理解し、是非自社の金融機関取引の戦略を考える材料としてみてください。

2.金融検査マニュアルとは

金融検査マニュアルとは、金融庁の検査官が金融機関を検査する際の基準として使用するマニュアルのことを指しています。この中に膨大なチェックリストがあり、そのチェックがきちんとつくか否かが、金融庁のみならず、検査が入る金融機関にとっても、とても重要になってきます。

理解しておく必要があるのが、「なぜ金融検査マニュアルが誕生したか」ということです。このマニュアルは、バブル経済がはじけたことで多くの不良債権を抱え、経営悪化に陥った金融機関が不良債権の処理を推し進めるために1999年に策定されました。

金融機関が「不良債権を処理し、安全な経営をする」ためのマニュアルなのです。

そして安全な経営とは「リスクを取りづらい」ということに繋がります。金融検査マニュア策定以前は、現場の職員による取引企業自体、その経営者、従業員、必ずしも決算書には表れない定性情報も含め「目利き」し、「短コロ」と呼ばれる、日々の経営に必要な経常運転資金分の短期融資を継続的に毎年更新するといった融資も特別珍しい話ではありませんでした。月々の返済が伴わない、貸し手側からしてもリスクのある融資となるので、当然職員にも日頃から取引先企業とコミュニケーションを取り、企業の現状を把握していることが求められます。

ただしこれは、「不良債権を処理し、安全な経営をする」という金融検査マニュアルの下では相反する考え方、融資姿勢となってしまいます。結果、貸し渋りや貸し剥がしといった行動にもつながり、属人的で不確かな目利きによる「定性情報」よりはるかに決算書に現れる「定量情報」が重視され、信用が十分ではない取引先に対しては、担保、保証協会融資があって初めて融資が可能となる、という今にも繋がる金融機関の常識が形作られていきました。

だからといって「銀行=悪」ではありません。
「金融機関の破綻」という最悪の事態を少しでも緩和するために、必要として生まれた金融検査マニュアルは、その後確かな「不良債権の縮小」という結果でその目的を果たしました。多額の融資を行う以上、銀行はリスクに対して保全をかけるのも至極当然のことです。

ただ、既にそうした元来設定された「窮地」を脱し、日本の地域経済そのものが衰退している局面において、同マニュアルが今でも通用するかというと別の話です。

現に、金融検査マニュアルは長く運用され過ぎたという声もあり、その弊害が指摘されるようになってきました。

そうした金融庁、有識者の動きもあり、2019年12月、金融検査マニュアルが正式に廃止となりました。では、マニュアル廃止後の2020年、何がどう変わっていくのでしょうか。

次回コラムにて、
「金融検査マニュアルの廃止により何が変わるのか?」
具体的に掘り下げて参ります。

次回の内容はこちら

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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