財務トピックス(コンサルタントコラム)

脱P/L主義。脱感覚経営。成長を実現する財務戦略・資金調達(6)

前回、「脱感覚経営」を目指すための素地として中小企業のステークホルダーについてお伝えさせていただきました。
前回の内容はこちら
 
今回は「脱感覚経営」を目指すための計画の必要性を銀行の実態という側面からご紹介します。
 
 

銀行の実態

ここで、銀行のおかれる実態を見ていくことで、先ほど述べた、中小企業が中長期的な経営を実践することが難しい(=短期的な成績を求められる)原因を突き詰めていきたいと思います。
 
銀行はよく企業のB/Sを特に見ていると言いますが、実はP/Lに囚われた考えを持っています。
なぜなら銀行が企業の格付けを行う際に「債務を何年で返済するか」という基準があるからです。
2期連続で営業赤字、経常赤字が続くと途端に融資の姿勢が厳しくなることがあります。
 
この格付という考えは、企業が資金調達を有利に進めるためにクリアすべき基準と呼べます。
この格付は正常先(融資をしても問題ない先)、要注意先(融資は注意して行う先)、破綻懸念先(融資は難しい先)というように銀行独自に企業をいくつかに分類しています。
この格付けを基に企業への融資姿勢を決定しています。
 
銀行は多くの個人から集めた預金を貸出(融資)にまわしている以上、融資の回収可能性を特に重要視します。
預かった預金を返せないということがあってはならないからです。
そのため、企業の格付が「正常先」であることが重要であり、貸したお金をしっかりと返してもらえるかという判断基準が一番のポイントになります。
 
ただ、企業を見るポイントは、過去の決算でも、2期、3期という短いスパンでの事業成績を基にしています。
最近では「事業性評価」、「会社の将来性」という言葉を耳にするようになりましたが、実際にはほとんどのケースでは理想と現実とのギャップが大きいことが現実です。
 
これまで銀行の指針として「金融検査マニュアル」がありました。
金融検査マニュアルとは、金融庁が銀行の経営の健全性を検査する手引書の役割を果たしていました。
 
しかし、2019年4月からは金融検査マニュアルがなくなり、銀行が自主性をより求められる時代になります。
今後の銀行の動向は気になるところですが、おそらくたちまちのうちに大きく変化するということは考えにくいかと思います。
 
だからこそ、短期的な成果を求められる中小企業で粉飾決算が多くなっているのかもしれません。
1期、2期の赤字で融資を引き上げられるかもしれない。
新たな資金の借入に対して対応してくれないかもしれない。
お金にまつわる不安は、即座に経営に大きな影響を与えます。
 
粉飾の動機は「銀行からの資金調達が悪くならないように」という思いがあります。
経営者の方々も銀行の態度や言動が厳しくなると感じているからこそ、肌感覚的に赤字が数期続くことを恐れているのではないかと思います。
 

なぜ事業計画・投資計画が必要なのか

上記のような、状況のなかで、自社を守っていくためには、銀行任せの状態にしていてはいけません。
自社の情報を正しく・戦略的に開示することで、自社を守るだけではなく、攻めとして「財務」を活用することが出来ます。
 
短期的な業績を求められる中小企業であったとしても、中長期的なビジョンを数値で示すことで、銀行の厳しい目線を抑えながら、会社を成長させていくことが出来ます。
 
そのなかで重要なポイントは事業計画、投資計画の作成と言えます。
 
そんな基本的なこととお思いになられるかもしれません。
ただ財務的に言えば「そんな基本的なこと」が出来ている企業はどれほどあるのでしょうか。
 
事業計画を作成する目的としては、会社の財務を中長期的に可視化することが出来るというポイントがあります。
「可視化」することのメリットは小さいようで実は大きい効果があります。
 
人は悩みや不安を潜在的な理由で恐れる傾向にあります。
紙に書きだした途端、不安や悩みの心理的負担が軽減することはないでしょうか。
「可視化」による効果が少なからず影響していると言えます。
 
つまり、会社の経営においてもしっかりと数値を「可視化」=事業計画の作成を行うことで不要な心配要素を排除することが出来る可能性があります。
 
次に、投資計画の重要性についてですが、こちらはもちろん「可視化」の効果は言うまでもなく、この投資によってどれだけ会社の発展に貢献するのかということを図る指標になります。
 
単純な収支計画を例に挙げるとすると、1億円の投資を行ない、10年で投資回収する計画があるとします。
ここで別の見方をすると1億円のお金を使って、10年間でプラスマイナスゼロにようやく持ってきたという考え方も出来ます。
 
つまり、その1億円を他の投資に充てるともっと効率的に資金を回収出来た可能性はなかったのかということです。
1億円の投資で他の事業に相乗効果があり、それ以上のリターンがあるという話であれば、良いかと思いますが、実際にはそれを図るためにも事業計画や投資計画は必要になってきます。
 
一つの目線としては、中小企業が資金を調達するコストを意識するという点が挙げられるます。
中小企業の資金調達コスト=銀行からの借入金利と言えます。ほとんどの中小企業では資本調達は稀なケースと言えます(一部、資本性ローン等はありますが)。
 
だからこそ、銀行から金利〇%の借入をして調達した資金を投資資金として使うとすると、最低限、銀行からの借入金利以上を確保することが条件となってきます。
 
さらに言えば、それは最低限のレベルの話であり、この投資でどれだけの利回りを上げたいかという考えを持たなければいけません。
 
個人の投資話でも、不動産の利回り5%、想定利回り3%などいろいろな投資の話はあると思います。
この考えを企業にあてはめると、投資した資金を回収するだけではなく、この投資によってどれくらいの利回りを確保したいかという考えが重要になります。
 
単純にこの投資をすれば、売上が1億円伸びる、利益が1千万円増えるという考えでは結局のところ、ふたを開けてみれば自社の首を絞めてしまっている可能性もあります。
 
B/SやCFを含めて自社の成長にとって最も合理的な投資はどの選択肢か、この考え方を意識するためにも投資計画を作成する意義はあります。
 
自社の経営状況の把握としての事業計画、投資計画としての意味を持ちながら、重要なステークホルダーである「銀行」との協力関係を築く上で重要な役割を持つという側面も持ち合わせています。
銀行は数字で物事を理解する人たちです。だからこそ、数字の根拠の妥当性を極端に気にしてきます。
 
次回は実際に事業計画を作成していくうえでの「事業計画作成のポイント」、「投資計画のポイント」についてご紹介します。
 
次回の内容はこちら

【この記事を書いたコンサルタント】
竹村 良太

早稲田大学卒業後、地方銀行に入行。8年間の銀行業務では、中小・中堅企業から上場企業まで幅広い法人営業を経験。その後、船井総合研究所に入社。
前職時代は事業性評価・財務分析に基づく融資業務に取り組み、中小企業・上場企業向け融資実績を数多く残す。
経営者に寄り添い「三方よし」の精神で財務コンサルティングの提供を行っている。

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