財務トピックス(コンサルタントコラム)

金利だけじゃない!銀行と上手に付き合う社長とは?

「金融機関交渉術とは、金利をいかに安くするか。そのテクニック伝授します!」
そんな近視眼的な書籍は、今すぐゴミ箱に捨てて下さい

金融業界の目まぐるしい発達により、資金調達の世界にも「クラウドファンディング」や「AIレンディング」といったカタカナが並ぶようになってきました。今や個人ローンであれば、30分程度のAI審査があれば一定額の融資が受けられる時代であり、あと10年もすれば、多額の資金が動く企業融資にもこのようなデジタル化の動きが完全定着するのではないでしょうか。

とはいえ傘が平安時代から傘のままであるように、企業融資は未だ黒カバンを抱えた金融機関の融資担当と社長が面談を行い、交渉を行うなかで最終形が作り上げられる流れが継続しています。AIであればその「ロジック」さえ把握してしまえばコントロールできますが、人間の心は複雑怪奇なものです。いくら金融機関にルールがあるとはいえ、支店長・担当と社長の相性・発言のタイミング・微妙な心の揺れなど、意外にも「超属人的」な世界が残されたままになっています。皆様は、いまだ「ふんわり」したつかみどころのない金融機関との付き合い方に関して、明確な目線・目的を持った動き方ができているでしょうか。

金利・借入金額・借入期間・担保保証…。今回は、設備投資をはじめとする資金調達、ならびにそのお金の出し手たる金融機関と上手に付き合う社長が一体何をしているのか、事例に基づいて紹介したいと思います。

【目次】

1.【失敗事例】金利を叩くことに喜びを感じていた社長の陥った「お断り地獄」

2.【成功事例】誠実な情報開示と「金庫番」の活躍で、銀行が評価する社長とは

3.【まとめ】1年先の3万円か、10年先の3億円か

1.【失敗事例】金利を叩くことに喜びを感じていた社長の陥った「お断り地獄」

ところで「金融機関と上手に付き合う」というのは、一体どういうことを指すのかという定義を、考えたことはあるでしょうか。

日本国内には100以上の地方銀行、そしてメガバンクや政府系金融機関、信用金庫、信用組合と多数の金融機関が存在し、最も差異が付きやすいのが「借入金利」であるため、つい低金利で借りることばかりに目がいってしまうかもしれません。しかしそれは低金利社会の現在ではなく、20年以上前のバブル、定期預金に3%以上の金利が付いていた在りし日の日本での化石交渉術であり、「危険思考」と言わざるを得ないかもしれません。

株式会社Aは、地場で有名な自動車部品メーカー。年商20億円を超えており、海外現地法人も設立を果たした成長企業です。当然、取引する金融機関も上位の地方銀行からメガバンクと、いわゆる「ブランドのある」銀行の専務・頭取が表敬訪問でやって来るような企業でした。
3月末の銀行の決算期ともなれば、各行「社長、今ある当座貸越の枠を、3月だけで構わないので満額利用していただけませんか」といったお願い営業も激しくなり、格式高いメガバンクまでも頭を下げる資金調達環境に社長もご満悦。

「いやあ、〇〇銀行さんはおたくよりも0.2%安い金利で持ってきているけど?」
「〇〇銀行さんは渋いねえ。そちらからのお願いだから、これ以下でないと借りないよ」

と、各金融機関が持ってくる融資提案書をとにかくばらまき、なんと賞与資金や当座貸越を0.1%台で調達できるような環境を作り出したのでした。

そんな株式会社Aでは今後3億円を投資し、既に進出している海外工場を増強する案件がありました。3億円規模ともなればメガバンクでもしっかり交渉をしなければ融資が出にくい金額ですが、ここまで何度もお願い営業を受けた社長にしてみれば、今回も余裕で低金利の提案書が来るものとばかり考えていました。しかし予想とは裏腹に、これまで融資に積極的だった担当者の顔は厳しく、曇っています。

「社長。今回は通常の融資と異なり、金額も3億円に上りますので、もう少し実態を把握しながら進めたいと思っています。この案件の支払い時期と支払い先の業者名、支払い通貨は何でしょう。また、現在までの試算表と、今の受注の明細、他行からの借入も含めた借入明細はありますか。あと、できれば資金繰り表も…。」

突然、金融機関が今まで求めてきたことのないような資料を大量に要求してきて、社長も「きょとん」としてしまいます。そんな面倒なことを言うならと、他行の担当者に同じ融資依頼を持っていっても結果は同じ。タイミングを見ながらまた別の融資でご提案したい、担保をいただければ対応できなくもない、既に相応の金額の融資をご支援しているので今回は…等、今までなかったような厳しい交渉結果となってしまいました。

・社長は金利を下げて調達することばかりを考え、金融機関ごとの融資額を把握していなかった
・金融機関ごとの特性を考えず、「提案のある銀行から」借りていた
・資金繰りを考えた自社目線での交渉ではなく、相手の提案条件を叩くことばかり優先していた
・税理士から出てくる試算表を確認せず、銀行の誉め言葉の通り「自社は良い企業だ」と考えていた
・資金繰り表など、見たことも作る気もなかった

Aの社長ほど極端なことなないにせよ、皆様も、銀行員の語る寸評が良かったり、融資条件が改善されていくと、つい自分の目で自社の良しあしを判断することを忘れてしまうのではないでしょうか。金融機関の反応にかかわらず、常に自社の財務を1番理解すべきは、やはり経営者本人であることを忘れてはいけません。

2.【成功事例】誠実な情報開示と「金庫番」の活躍で、銀行が評価する社長とは

株式会社Bも業歴50年を誇る堅実な企業であり、金融機関取引では地場最大手の銀行上席が表敬訪問をするような、株式会社Aと同クラスの優良企業でしたが、取引の姿勢はAの社長とは正反対でした。

Bも事業規模が大きくなるにつれ、リスク分散のためにメガバンク、政府系金融機関、地方銀行、信用金庫と数多くの金融機関との付き合いがあったものの、創業期から付き合いの長いメインバンクとの紐帯は決して緩めず、融資額や預金のバランス、日々の入出金取引までバランスを考えていました。また社長は財務面だけではなく、人事・総務・営業等も気配りせねばなりません。忙しさで財務の把握がおろそかになってはいけないと、金庫番である「財務・経理担当」を置き、社長と同じ水準で金融機関とやり取りできるNo.2に動いてもらうことで、なるべく金融機関と密な接点を持つようにしました。

さらに社長は「数字は嘘をつかない」ということで、毎月の試算表は必ず分析会を設け「会社の、誰のどんな動きがこの結果を導いたか」を落とし込み、No.2と共有しました。それまで会計の専門的な勉強まで取り組んだことはありませんでしたが、見るべき指標を把握した上でシンプルに理解することを心掛けたことで、前以上に金融機関と共通言語で、密に現状を知ってもらえている感触がありました。

「この業績進捗と計画であれば、問題ないはず」。

財務をないがしろにせず、習慣を継続した社長は、かねてより考えていた設備投資を金融機関に打診。その場しのぎで出てくる計画や資料ではなく、節目で業績を把握し、気持ち良い取引を継続していたメインバンクから「ぜひ、B社に協力したい」とばかりに、無担保・無保証で好条件の資金調達提案を受けることに成功したのです。

相手も1つの営利企業と知り、一方で自社のために誠実に金融機関と対峙したことで、金利をいたずらに叩いた社長以上のメリットが享受できた、まさに「無欲の勝利」と呼べる好事例ではないでしょうか。

3.【まとめ】1年先の3万円か、10年先の3億円か

今回は、資金調達の窓口として最も重要な金融機関との付き合い方は、小手先の交渉テクニックではなく、誠実かつ的を射た財務の情報提供と、担当者を置くことによる接触頻度の向上から始まるというお話を紹介しました。前述の通り、ここ数年は金融緩和もあり空前の低金利時代です。

たとえば20百万円の資金調達を5年間、金利1%以下で調達すると、5年間の支払利息が1百万円にも届かない等、金融機関からすれば最悪の状況ということができるでしょう。そんななかでも、経営者は目先の数万円のコストメリットを望み、金利0.1%の勝負をかける短期的目線が大事か、それとも10年後に数億円の資金調達を実現するため、金融機関と共に歩める環境を作るべきなのか。

今回のコラムが今一度、各金融機関とどのような付き合い方をしているのか再考する機会となれば幸いです。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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