財務トピックス(コンサルタントコラム)

危機を乗り越えるために今すぐやるべき資金繰り対策

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自社の危機対応レベルの確認手順から、具体的な資金調達の方法まで、いま必要な「財務×コロナ対策」をまとめました。

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はじめに

前回のコラム「対コロナ、危機発生時の財務戦略」では、危機発生時の財務戦略についてどのように対応するべきかをお伝えしました。

以下はサマリーです。

(1)リーマンショックのときの事例
筆者が過去に経験したリーマンショックの事例、具体的には、リーマンショックの影響により、受注のすべてがストップし、単月の売上がゼロになり、資金繰りに窮することになった企業を紹介しました。
事例より歴史に学び、最悪の事態つまり売上がセロとなることを想定して、資金繰り対策をすべきであるということをお伝えしました。

(2)自社の危機対応レベルを知るべき
歴史に学んだ後にやるべきことは、自社の危機対応レベルを知ることです。
危機対応レベルを知るとは、

a.信用保証協会の一般枠の空き枠
b.当座貸越やコミットメントライン等融資枠の空き枠
c.担保に提供できる資産があるかどうか

以上3点を把握することです。
a~cの空き枠や担保提供可能な資産が大きければ大きいほど危機対応レベルは高く、小さければ小さいほど、危機対応レベルは低いといえます。
ここで言いたかったことは、危機対応レベルの多寡で一喜一憂するのではなく、自社のレベルを正確に現状把握することが重要だということです。

(3)危機時は現預金の積上げ最優先、資金調達必要
自社の融資枠や保証協会の借入枠がどのくらいあるのかを現状把握した後、現預金の積上げを最優先するべきです。
(aやbの空き枠を含め)最低でも平時の月商対比3か月分以上の現預金の積上げを目指し、不足分については、後述する優先順位で新たに資金調達をするべきです。

(4)危機用の資金調達の順番を知るべき
平時と危機時では資金調達の優先順位が異なります。
平時にはプロパー融資を引き出すことを目指すべきですが、危機時には制度融資を最優先して資金調達をするべきです。
制度融資は概ね以下A,Bの2種類に大別され優先順位もそれぞれ異なります。

A.民間金融機関から保証協会を通じて借入する
制度融資→一般枠
B.政府系金融機関から直接借入する
制度融資→一般枠

(5)大きく長く借りるべき
最後に借入条件についてです。
借入条件について、平時には低金利を目指すことに代表されるように、より良い借入条件を目指して金融機関から借入していくべきでした。
しかし、危機時においては、借入条件で最優先すべきは金額と期間です。
金利は多少高くとも、担保・保証を差し入れてでも、金額大きく、期間(据置含む)長く借入することを優先すべきです。

以上が前回コラムでお伝えした内容です。

今回のコラムでは、近時の支援先事例や金融機関の動向に基づき、より具体的な対策をお伝えいたします。

選ぶべき金融機関・制度融資の優先順位

危機を乗り越えるため、いざ融資を受けようと決断した後、どの金融機関を最優先して利用すればいいのかわからないという方もいるでしょう。
前回コラムでも民間金融機関と政府系金融機関を分けて借りる順番の説明を行いましたが、ここでは政府系金融機関に絞って説明します。

中小企業向け融資を取り扱う政府系金融機関は、日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業)、商工中金があります。
中小企業経営者にとって、現時点で最優先して選ぶべき金融機関・制度融資は、日本政策金融公庫(国民生活事業)・新型コロナウイルス感染症特別貸付です。

窓口の混雑や審査スピード等、ネガティブな面が報道により取り沙汰されていますが、真っ先に選ぶべき金融機関・制度は以上の一択です。
注意してもらいたいのが、政府系金融機関の日本政策金融公庫(中小企業事業)もありますが、日本政策金融公庫(国民生活事業)の方だということです。

日本政策金融公庫(国民生活事業)を最優先して選ぶべき理由は、

◇スピード感が最も早い
⇒既存取引有無にかかわらず、最も審査~借入までのスピード感が最も早い
◇一般枠で借入→新型コロナウイルス感染症特別貸付への借換えが容易
⇒借入申込時に、新型コロナウイルス感染症特別貸付の制度要件が満たせず、
一般枠で借入したとしても、制度要件が当てはまった後、直ちに借換え可能
◇繰上返済手数料がゼロ
⇒コロナ対策用借入について、コロナが終息した後で、繰上返済する場合にも、
手数料がかからず繰上返済をすることが可能

売上減少幅(5%~20%)により、適用可能な制度融資は異なりますが、ここでは日本政策金融公庫(国民生活事業)・新型コロナウイルス感染症特別貸付を最優先して選ぶべきと覚えれば良いでしょう。

借入申込時、金融機関に開示するべき情報とは

借入を申込む金融機関が決定した後、次はいよいよ借入申込し、審査へ進むこととなります。

平時であれば、金融機関窓口へ行き、担当者と面談、資金の必要事情、事業計画、返済見通し等のヒアリングを受けて、審査が進められます。
しかし、感染症対策のため窓口に行って担当者に会うことなく、必要書類をメールや郵送等で、審査が進められてしまうことが、危機時のスタンダードな借入申込となっています。

このような状況下では、口頭で説明できない分、金融機関サイドが審査に必要となる情報を自社で、可能な限り書面に落とし込んだ書類を提出することが重要です。
書面に落とし込むべき内容は、以下の通りです。

【根拠】粗利減少実績
【見込】粗利減少見込
【理由】粗利減少見込=借入額
【返済見通し】翌期以降の収支計画


根拠では、売上減少実績(制度融資要件)にとどまらず、粗利の減少実績を記載することがポイントです。
危機時の融資審査において、粗利減少実績は融資に必要な基礎金額となるため非常に重要であるため、ここまで踏み込めれば、他社の一歩先んじて審査を進めることが可能です。

次に、粗利減少実績をもとに、今期の粗利の減少見込を記載します。その後に、粗利の減少見込み額と同額の融資必要金額を記載しましょう。
最後に、返済見通しを伝えます。

新型コロナウイルスの影響が終息すれば今回の借入金を返済することは十分可能であると伝えるのです。
返済見通しの中に、アフターコロナを見据えた中長期の事業計画まで、織り込むことができればなお良しです。

貸し剥がし・貸し渋りには注意するべき

ここまでの内容を実践し、融資を受ける後も、危機時には注意しなければならないことがあります。それは貸し剥がし・貸し渋りです。
多くの中小企業経営者は「うちの会社ではそんなことは起きていないし、これからも起こらない」と考えるのではないでしょうか。
しかしながら、広い意味での貸し剥がし・貸し渋りは身近に起きていると考えておいた方がいいといえます。
具体的な例を挙げてみましょう。

(1)プロパー融資提案なし
「信用保証協会付のコロナ特別制度融資を借りていただいたから、今期はもうプロパー融資はいらないですね?」と金融機関から言われた場合。
これは、保証協会付融資でプロパー融資を回収しようとしているという点で、広い意味での貸し渋りといえます。保証協会の融資は危機に備えたものであって、プロパー融資とは分けて考えて、プロパー分を別途借入検討する必要があります。従って、決して首を縦に振ってはいけません。
(2)期限到来する手形借入の長期切替提案
「公庫さんでコロナ特別融資を借りましたね。資金がダブついても困るでしょうから、今度期限が到来する手形借入は、期間を長めにとりますから、毎月の返済を付けて借入金の残高が減るようにしましょう」と金融機関から言われた場合。
これは、銀行が返済を前提としない短期継続融資を、返済が前提の長期借入へ切替えをしようという広義の貸し剥がしです。
もちろん、ここでも首を縦に振ってはいけません。
(3)利用実績の少ない当座貸越の閉鎖提案
「弊行でご利用いただいている当座貸越の期限が到来しますけど、他行さんの方が金利も安いですし、弊社の当座貸越はあまり利用実績ないですよね。いったん閉鎖して仕切り直ししましょうか?」と金融機関から言われた場合。
これは他行動向にかこつけた当座貸越の閉鎖交渉で、一旦閉鎖に応じてしまったら、仕切り直すことは決してありません。絶対に応じてはいけない提案です。

以上3つの具体例を挙げましたが、いかがでしょうか。
一般的に言われる、貸し剥がし・貸し渋りとはイメージと違うのではないでしょうか?同じようなことを言われた経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

貸し剥がし・貸し剥がしにもレベルがあるのです。下表を参考にしてください。

<短期借入から長期借入への転換><短期借入の期限の短期化>の打診は、金融機関は担当者1名でフランクに伝えてきたりします。
<当座貸越や手形借入の減額><期限更新の拒絶>の打診は、金融機関は複数名で強い覚悟をもって伝えにきます。
<返済交渉><当座貸越枠閉鎖>は、金融機関は必ず複数名で相当堅い意思をもって伝えにきます。

危機時においては、融資先の業績悪化→金融機関の業績悪化→貸し剥がし・貸し渋りの話が出てくるものです。
本コラムを読んでいる皆さんには、貸し剥がし・貸し渋りを自分事として捉えていただきたいと思います。

貸し剥がし・貸し渋りへの対抗策とは

では、具体的にどうやって貸し剥がし・貸し渋りに対抗していけばいいのでしょうか。

対抗策は『借入期限の把握』と『自社主導による能動的な情報開示』です。
例えば、当座貸越であれば、金融機関は当座貸越の極度期限が到来する遅くとも1か月前までに当座貸越を更新するかどうか審査を行います。

そこで皆さんがまずやるべきことは、当座貸越の極度期限がいつなのかを把握することです。
極度額を把握している方は多いと思いますが、しっかりと期限も確認するようにしましょう。

次のステップは金融機関に対して、自社主導で能動的に情報を開示することです。
能動的な情報開示により、金融機関の貸し剥がし・貸し渋りトリガーを弾きにくくするのです。

具体的には、決算説明だけではなく四半期ごとに試算表のみならず、金融機関別借入一覧表を提出しましょう。
金融機関別借入一覧表には、当座貸越の極度金額・期限を記載します。
他の金融機関が当座貸越をきちんと継続しているかどうかの支援実績は、審査をするときにプラスに働くためです。

このように借入期限を把握し、自社主導で能動的に情報開示することで、金融機関同士をけん制させて、貸し剥がし・貸し渋りの余地を与えないようすることが最も効果的です。

コロナ危機の出口に向けたプランニング

以上を実行することで、当面の現預金の確保しつつ、貸し剥がし・貸し渋りへの対抗策を講じることが可能ですが、皆さんにはコロナ危機の出口を見据えた財務戦略を考えてもらいたいです。
そのためにここでは、2つのことをお伝えします。

1つ目は事業計画を作成するということです。今回の新型コロナウイルスによる経営への影響が未知数であるため、資金調達を優先的に行いますが、本来はお金を調達した後の展開もあわせて考える必要があります。
従って、P/L、B/Sの計画だけでなくキャッシュフローや返済の計画も策定することで、現在の会社の置かれている状況を整理し、どのくらいまで耐えることができるのか可視化しておくのが良いでしょう。

2つ目は金融機関とのリレーション強化です。
コロナショックにより金融機関の方々は多忙を極めています。
これを機に、金融機関へ自社主導による能動的な情報開示進めることで、コロナショック以降、金融機関の取引先企業の中でも優先度を高めることが可能となります。

本コラムを読んで、いち早く準備し実行に移せる方は、コロナショック以降、いち早く経営を成長軌道に戻し、危機を乗り越えた経験を活かして、永続可能な企業をつくりあげられる経営者だと確信しております。

今回の新型コロナウイルスという危機事象をチャンスに変えるべく、誰よりも早く準備をしていただけたら幸いです。



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【コロナ対策】制度融資に頼らない無担保無保証借入実現のポイント
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【この記事を書いたコンサルタント】
石田 武裕

政府系金融機関にて10年超、融資営業・審査一体となった業務を経験した後、船井総合研究所に入社。
300社超の企業経営者に対する課題解決に向けた融資営業・審査業務を通じ、多岐にわたる業種の財務分析・審査・金融商品等に関する豊富な知識・経験を有する。
経営者の夢に寄り添いながらも、徹底した現場主義を貫き、企業経営者、従業員とともに汗をかいて支援に取り組むことをモットーとしている。

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