ここ数年の銀行再編動向
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最近、金融機関の再編ニュースをよく耳にします。大手都市銀行が三つに集約されたものの、ながらく地方銀行は再編の流れは起きていませんでした。
しかし、ここ最近の金融機関の逆風環境下においては、地方銀行も再編に踏み切る動きも多くなってきました。
今回、ここ数年の金融機関の再編の動きを時系列的にまとめてみたいと思います。自社が関わる金融機関であれば、記憶にあるものの、新規で取引を検討した際には「あれっ?こんな金融機関あったかな?聞いたことない金融機関では不安だな?」と思わないためにも、グループ再編について述べていきます。
合併や再編とニュースで耳にするなかで、まずは、経営統合と合併の違いについて触れておきたいと思います。大きく分けると二つのパターンがあります。
【持株会社傘下の経営統合】
親会社としてホールディングス会社を設立し、傘下でこれまで通りの金融機関名にて営業を継続する形式です。
【合併】
文字通り、複数行が一緒になり、一つの金融機関へ合併されることを指します。
それでは、以下に再編の動きを見ていきます。※カッコ内は経営統合された年月です。
◇九州フィナンシャルグループ(H27.10)本社所在地:熊本県 本店所在地:鹿児島県
熊本県の肥後銀行と鹿児島県の鹿児島銀行が経営統合。ホールディングス会社を設立し、傘下で両行が営業を継続する形です。トップシェアを誇る地方銀行同士の経営統合は本件が初。
◇トモニホールディングス(H28.4)本社所在地:香川県
徳島県の第二地銀である徳島銀行、香川県の第二地銀である香川銀行を傘下とする金融持株会社(ホールディングス会社)として平成22年4月に設立。その後、大正銀行が平成28年4月に経営統合され、現在の形となりました。また、平成31年(2019年)秋までに徳島銀行と大正銀行は合併することが発表されています。
◇コンコルディア・フィナンシャルグループ(H28.4)本社所在地:東京都
神奈川県の第一地銀(※)である横浜銀行と東京の第二地銀である東日本銀行が経営統合。持株会社であるコンコルディア・フィナンシャルグループを設立。総資産では18兆円規模と地銀グループでは大手。
◇めぶきフィナンシャルグループ(H28.10)本店所在地:東京都
茨城県の第一地銀である常陽銀行と栃木県の第一地銀である足利銀行を傘下に持つ足利ホールディングスが平成28年10月付で経営統合し、めぶきフィナンシャルグループを設立。こちらは傘下に両銀行が存続する形。コンコルディア・フィナンシャルグループ、ふくおかフィナンシャルグループに次ぐ第三位の資産規模。
◇西日本フィナンシャルホールディングス(H28.10)本店所在地:福岡県
福岡県の第一地銀である西日本銀行と、同じく福岡県の第二地銀である福岡シティ銀行が平成16年に合併。その後、平成28年10月に長崎県の第二地銀である長崎銀行が株式移転により持株会社である西日本フィナンシャルホールディングスが設立されました。
◇三十三フィナンシャルグループ(H30.4)本店所在地:三重県
三重県の第一地銀である三重銀行と、同じく三重県の第二地銀である第三銀行が平成30年4月に金融持株会社を設立し、経営統合。三十三フィナンシャルグループの総資産は4兆円規模であり、三重県の第一地銀である百五銀行の総資産6兆円弱と経営統合後でも総資産規模では及ばない水準となっています。
◇東京きらぼしフィナンシャルグループ(H30.5)本店所在地:東京都
東京都内を地盤とする東京都民銀行と東京との第二地銀であった八千代銀行が平成26年10月に東京TYフィナンシャルグループを設立し、両行を傘下へ。その後、新銀行東京との経営統合が発表されました。平成30年5月に八千代銀行が東京都民銀行と新銀行東京を吸収合併し、きらぼし銀行として始動。東京TYフィナンシャルグループの社名も東京きらぼしフィナンシャルグループに変更されました。
◇第四北越フィナンシャルグループ(H30.10予定)本店所在地:新潟県
新潟県の第一地銀である第四銀行と、同じく新潟県の第一地銀である北越銀行が持株会社を平成30年10月に設立し、経営統合する予定です。まずは持株会社を設立し、両行が傘下に入りますが、持株会社設立から二年後を目途に両行が合併した新銀行が誕生する予定です。
◇関西みらいフィナンシャルグループ(H31.4予定)本店所在地:大阪府
りそなホールディングス傘下の金融持株会社として平成29年11月に設立。設立時は近畿大阪銀行を傘下として始動。その後、平成30年4月に三井住友銀行子会社の関西アーバン銀行と兵庫県の第二地銀であるみなと銀行が経営統合し、同グループの傘下へ。
平成31年(便宜上、平成を使用しています)4月に近畿大阪銀行と関西アーバン銀行が合併し、関西みらい銀行となる予定です。総資産規模では11兆円を超える規模となり、関西圏では最大手になります。
◇ふくおかフィナンシャルグループ(H31.4予定)本店所在地:福岡県
福岡県の第一地銀である福岡銀行と熊本県の第二地銀である熊本ファミリー銀行が経営統合し、福岡フィナンシャルグループを平成19年4月に設立。その後、同10月に長崎県の第一地銀である親和銀行を傘下へ。九州最大かつ全国的にも有数の地銀グループを形成。
平成28年に長崎県の第一地銀である十八銀行との経営統合を発表するが、独禁法に関する公正取引委員会の審査が難航。債権譲渡による融資シェア調整により、公正取引委員会からの承認がおりました。直近の資産規模ではふくおかフィナンシャルグループは連結総資産で20兆円と地銀グループでは最大手。一方、十八銀行の総資産は2兆9千億円であり、ふくおかフィナンシャルグループとの経営統合が決定すれば、二番手であるコンコルディア・フィナンシャルグループの16兆円を更に引き離す規模になります。
※第一地銀は各都道府県で一番という意味ではなく、一般社団法人全国地方銀行協会の会員であるという意味で使われています。
ここ三年程度の動きをみると、再編が活発なのが、関東圏、九州地域です。一方、東北、関西地域においては、これまでは動きがあまりありませんでした。しかし、関西みらいフィナンシャルグループの誕生により関西でも大きな動きが出てきました。
金融機関を取り巻く環境は厳しく、今後も同様に再編の動きは活発化していくかもしれません。合併や再編により金融機関のこれまでの取引スタンスが変化していく可能性もあります。引き続き、金融機関の再編動向は注目していきたいと思います。
以上

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