財務トピックス(コンサルタントコラム)

すぐに結果の出る費用削減 コロナ市況下でキャッシュを生み出す実践論(1)

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■すぐに結果の出る費用削減 コロナ市況下でキャッシュを生み出す実践論

新型コロナウイルスの感染拡大リスクが未だに潜むなか、制度融資等の資金繰り対策に奔走される経営者の皆様から、ここ最近でご相談をいただくテーマ、それが「費用削減」に関する話題です。
金額的なインパクトは小さくとも、即効性が高いこのテーマは、今すぐにやりたいと思う一方で何から手を付けるべきなのか…と、ファイナンス以上に難しく、現場の協力も欠かせないものです。

そこで今回は、財務支援を企業現場で行う筆者が、実際に半年で昨対比▲90百万円の費用削減に成功した企業事例をご紹介しながら、すぐに結果を出すための費用削減の考え方をご紹介したいと思います。

■「費用削減」の第一歩は「事業計画」にあり

「費用削減」で重要なことはやりきることにある。
だからこそ、蓋然性と説明性をもった計画を策定し、「現場で使いこなせるか」が重要である。

では「費用削減」の実践論についてお伝えする前に、まずは全体像についてお伝えできればと思います。

ポイントは、「事業計画の策定」にあります。
即効性のある実践論について知りたいのに、いきなり時間のかかりそうな内容からか…とお感じになられるかもしれません。
しかし筆者は「事業計画」に関する考え方を、有事においては転換していくことが「費用削減」を進めるうえで何よりも肝要だと考えています。

【表1】様々な事業計画の例

事業計画を作る目的は、計画を「みる」相手に働きかけ、目指す行動を生みだすことにあります。
だからこそ根拠に裏付けられた蓋然性と、相手の行動に繋がる説明性を担保することが求められます。
そして、金融機関向けなのか。社内向けなのか、あるいは社内でも売上・利益に責任を持つフロント向けなのか。それとも守りを固めるバックオフィス向けなのか。

計画は「みる」対象によって、訴求するポイントを変えていくことが望ましいでしょう。

更にコロナウイルス禍の現在の市況では、

・今まで通りの手法で売上・利益を見通すことは困難なこと

・蓋然性の高い計画を作ること自体が困難なこと

という2つの難しさがあります。
だからこそ、保守的、かつ自社の力でコントロールできる内容に絞った計画を策定することが求められます。

現市況で自社の方向性を最も正確に照らしてくれる羅針盤(事業計画)とは、

・ストレスをかけ、それでも自社が十分に事業継続できるという根拠になるもの

・かつ、自社が最も早くコントロール可能な「費用(削減)」に焦点を当てているもの

だと言うことができます。
「費用削減」というキーワードを聴くと、大規模なリストラ等を思い浮かべてしまいます。
しかし、削減においても重要なことは「きちんと現場で使いこなせる計画となるか」という点です。意識して費用削減を織り込んだ、使える計画の策定を進める必要があります。

■費用削減計画は、3つの仕訳から始まる

コストを、削ると会社の根幹が揺らぐ固定費、削ると事業に著しくマイナスに働く変動費、事業推進には重要だが不要不急の変動費の3点で分析把握する。

それでは次に、費用削減を織り込んだ事業計画を策定していくための具体論を紹介していきます。
ポイントは、「費用削減は、3つの仕訳(フィックスコスト、フラットコスト、ドライブコスト)を起点に行う」ことにあります。

フィックスコストとは、そう簡単には削減できず、減少させれば会社の根幹が揺らぐもの(固定費)です。
具体的には、水道光熱費、正社員の人件費等を指します。

フラットコストとは、変動費のうち、会社の根幹を支える費用で削減すれば著しくマイナスを及ぼすものです。
広告宣伝費・販売促進費やパート社員の雑給等を指します。

ドライブコストとは、変動費の中でも事業成長を推進できる可能性はあるが不要不急のもので、研究開発費、研修費、新聞図書費、諸会費等があります。

現場活用ファーストで、しっかり自社の費用を見直すためには、この3つまでコストを細分化することが大切です。
たとえば、ある企業が費用削減を考える際に使っているフレームワークで、以下の例を考えていきましょう。
視点は、費用の種類、費用のトレンド、費用の削減方針とその影響の3つです。

【表2】ある企業が費用削減を考える場合

ここでの取り組みを解説すると、

(1)費用の種類

「費用」といっても、企業には簡単には減らせないものもあれば、今すぐにでも削減可能な費用もあります。
まずは現状がどうなっているかを分析し、仕訳する必要があります。特に、変動費をあえてフラットコストとドライブコストに区分することが重要です。
有事の際は不要不急の費用だけを削減するのではなく、時には少し傷を負ってでも、資金繰りを優先する方が良い場合もあります。
その苦渋の決断を少しでも緩和するために、変動費は上記のように削減後のダメージ別に区分しておくことをお勧めします。

(2)費用のトレンド

それぞれの費用を自社の決算書を3期並べた際に、「増加、横ばい、減少」のどのポジションにあるかの認識してみましょう。
増加・減少に転じている場合はその理由が明確に付記できると、計画・管理上でも大いに役立ちます。
たとえば、大きく増加している費用に蓋然性がないのであれば、そもそも削減していくべき費用としてKPI設定をするべきですし、減少に転じている費用が実は大変重要なものだったということが分かれば、再度社内で合議をする必要があるでしょう。

(3)費用の削減方針とその影響
費用のタイプ・トレンドが分かったら、期間当たりどの程度その費用を削減するか決断をする段階です。
費用削減は多かれ少なかれ、無駄なものでない限りは何か影響が出るはずなので、その「何か」を特定し、マイナスが起きても今後の事業継続において影響がないのかも、確認しておく必要があるでしょう。

いかがでしょうか。
これはあくまで費用削減を考える際の一例で、細かく留意するべき点は他にもあります。
ただ、まずはこれだけでも把握しておけば、自社の費用が「どこを改善すべきで、どうすれば削減ができるのか」が明確になってくるはずです。

実際にこの考え方を実践し、

・販促費の中でもインパクトの乏しい手数料を見直す

・法人クレジットカードの諸会費を削減する

・外注先への支払手数料を見直す・節約する

といった地道な取り組みから、半年間で昨対比90百万円のコスト削減に成功した会員企業もあります。
企業規模や業種柄によっても異なりますが、それだけ数字の根拠を持ち、可視化された運営に効果があることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

次週のコラムでは、「ヒト」にまつわる策定後の注意点をお伝えしていきます。
是非、その点も踏まえたうえで「キャシュを生み出すための費用削減」を実践してみてください。

次回の内容はこちらから

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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