財務トピックス(コンサルタントコラム)

【読めばわかる】「会社分割」の活用方法 <前編>

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4回シリーズの「ホールディングス化・組織再編関連コラム」の第3回目のテーマは「会社分割」です。

◎第1回目「ホールディングス化のメリット・デメリット」はこちら

◎第2回目「ホールディングス化に活用される「株式移転」」はこちら

会社分割と聞くと、企業再生時に用いられる「第二会社方式」など収益性を有する事業と不採算事業の切り分けの際に活用するイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、前向きな組織再編時にも利用されています。

そもそも会社分割とは、「組織再編の手法の1つであり、会社が持つ既存事業に係る権利義務を他の会社に包括的に承継させる行為」であり、会社の持つ事業を別会社に移すということを言います。
最近、注目を浴びているホールディングス化(持株会社化)の際に用いられるスキームの1つでもあり、会社の将来を考える上で避けては通れない「事業承継」の問題においても、会社分割が活用されるケースがあります。

 □ 優秀な人材が辞めてしまう
 □ 成長部門をより加速させたい
 □ 組織再編について知りたい
 □ ホールディングス化に興味がある
 □ 事業承継を考えていきたい
 □ 事業承継に関して情報収集をしたい

上記の項目に1つでも当てはまるあなたは、ぜひ読み進めていただきたいです。
なお本コラムは前編・後編に分け2週間に渡りお届け致します。

概要とメリットデメリット

先程、会社分割がどういうものなのかを簡単に説明しました。
ではなぜ経営者は、会社分割を行うのでしょう?

なぜ会社分割を行う?
会社分割は、経営の効率化や後継者育成を目的にして行われることが多いです。その他には成長部門の子会社化、不採算部門の切り離し、グループ内の重複事業の集約化があります。

会社分割を行うメリットとデメリット
会社分割を行いたいと思っている方も、今後考えたいという方も、会社分割を行う際にどのようなメリットとデメリットがあるのか、把握する必要があります。

【メリット】
 (1)経営判断を迅速に行うことができ、効率化が可能となる
 (2)不採算事業のカット
 (3)後継者の育成
 (4)税金負担の軽減

  
(1)経営判断を迅速に行うことができ、効率化が可能となる
1つの会社に複数事業がある場合、会社全体の最適化を考えることで1つの決定に時間を要する場合が多々ありますが、事業ごとに会社を分けることで、決定判断に過度に時間をかけずに済むため迅速に対応が可能となります。

(2)不採算事業のカット
1つの会社で不採算事業がある場合、その不採算事業が会社全体の利益を減少させてしまいます。
しかしこの不採算事業を分割し別会社とすることで、独立採算の体制を敷くことができます。

(3)後継者の育成
近年、人手不足や優秀な人材の流出等の問題をニュースで見かけることが多いように思います。
特に中小企業でこの傾向は顕著です。
また限られた人的リソースで事業運営をされている中小企業にとっての人材流出のダメージは、大企業のそれよりも多大であり重要度の高い問題です。

その対策の1つとして会社分割を行い、子会社の代表取締役というポストを与えることも有効と言われています。
一国一城の主となるポジションを任せることで、自身の裁量範囲の拡大によるやりがいの向上や責任感の醸成が図られ、他社流出を防ぐことに繋がります。

将来の後継者候補に企業経営を経験させるという点でも、会社分割による代表ポストの設置は効果的であり、中長期的な事業承継にも寄与します。  

(4)税金負担の軽減
M&Aや事業譲渡に比べると、要件を満たせば税負担が少なく事業を会社から切り離すことが可能です。
どのような要件を満たす必要があるのかに関しては、下記デメリット(1)で説明します。

【デメリット】
 (1)税金負担が重い場合がある
 (2)複雑な手続き
 (3)管理コストの増加

(1)税金負担が重い場合がある(適格分割と非適格分割)
会社分割をする際、一定の要件を満たすと適格分割を行うことが出来ます。
通常の分割時は移転資産を時価評価し、その譲渡損益に課税されますが、適格分割が適用される場合はその移転資産を簿価評価とするため、課税が繰延べられます。
要件を充足し「簿価での資産移転が可能な分割」を適格分割、要件未充足につき「時価評価での資産移転となる分割」を非適格分割と言います。

(2)複雑な手続き
組織再編ではつきものですが、会社分割するにあたり税務や会計手続きを行う必要がある上に、登記や株主総会の開催など各種手続きを伴うため、労力がかかります。

(3)管理コストの増加
ケースバイケースですが、単純に会社分割し法人を増やす場合は、各社で管理部門のコストが生じるためグループ全体でコスト増となります。
但し会社分割を機にホールディングス体制を敷き、しっかりとした役割をホールディングスに付加することでコストコントロールを図っている企業もあります。

そのほか確実に増加するコストとしては、企業数が増えることで発生する「法人住民税の均等割」等がありますが、一方で中小企業に該当する場合は「年間所得の800万円以下の部分について法人税の軽減税率が適用される」といったメリットも享受できます。
管理コスト増減の判断は、上記内容を勘案の上で行く必要があります。

いかがでしょうか。
会社分割の大まかなメリットとデメリットは把握頂けたのではないでしょうか。

そんな会社分割にもいくつかの種類があります。
自社であればどの分割の方法が最適なのかぜひ考えてみて下さい。

◎【読めばわかる】「会社分割」の活用方法 <後編>はこちら



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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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