資金調達を有利に進めるための財務資料
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目次
1.決算書以外の財務資料を準備して金融機関の格付けが上がった会社の成功事例
1.決算書以外の財務資料を準備して金融機関の格付けが上がった会社の成功事例
私が過去に担当した会社は年商を毎年伸ばし利益も順調に出ており、過去の決算数値と比べてかなり内容が良くなっているにも関わらず、金融機関の見方(格付け)は毎年上がらず財務状態に比べてかなり損をしているような借入条件が続いていました。
ただ、社長自身も財務状態は過去に比べて良くなったのは何となく感じていましたが、過去の財務数値が悪かった時とほとんど変わらない借入条件で提示してくる金融商品に疑問を持ちながらもそのまま受け入れている状況でした。
しかし、私たちがコンサルタントとして参画し、ノウハウを徹底的に落とし込んだ結果、金融機関からの見方は大きく変わり、格付けが高い会社にしか提案をしないような金融商品を積極的に提案してくれるようになりました。
また、社長自身が自社の強みを再認識することができたため、以前に比べより自社の強みを生かした積極的な経営を行われ資金調達に関しても好条件で提案を受けながら事業を進めることに成功しているようです。
ここだけを見ると金融機関が何も知らない経営者をだまして、高い金利やその他の条件で売り込みをしていたのではないかと感じられるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
今回のコラムでは金融機関からの格付けを上げ、損をしない借入を実現する為に用意すべき財務資料についてお伝えします。
2.過去の決算情報だけで融資をする時代はもう古い?
今回のコラムの肝に入る前に前提条件として皆様に認知していただきたい事項があります。
本コラムをお読みいただいている皆様は2019年12月に施行された「金融検査マニュアルの廃止」をご存じでしょうか?
初めて聞かれた方もおられるかと思いますので簡単にお伝えすると、金融検査マニュアルとは金融機関が会社に融資をする時は財務内容や担保、保証を重要視して融資判断をしましょうと明示された物です。いわば「過去」を見て融資の条件を決めましょう。といった内容でした。
ただ、近年の時流の変化を受け金融検査マニュアルは2019年12月に廃止されました。
では今後金融検査マニュアル廃止受けて各金融機関が融資をする際、何を基準に条件判断をしていくのでしょうか。
それは各会社のビジネスモデルや事業計画をきちんと考慮して適正な融資提案をしましょうという流れに変わっていくのです。いわゆる会社の「過去」にとらわれず「将来性」も見込んで融資の判断をしていきましょうという流れに大きく変わったのです。
この大きな変化を知っているか知っていないかで今後の調達戦略は大きく変わってきます。
本コラムをお読みいただいている皆様は時流の変化に合わせて今後の資金調達を有利に進めていただければと思います。
3.金融機関からの格付けが劇的に変わる4つの財務資料とは
では、実際にどのような財務資料を用意し金融機関に提出をしたらいいのでしょうか。
今回は4つご紹介します。
(1)試算表(BS含めて)
(2)決算説明資料
(3)事業計画(BS、PL、資金繰り)
(4)事業計画(短期的、中長期的な投資計画など)
ではなぜ上記4つの財務資料を用意したら格付けがグンと上がる可能性があるのかについて説明をしていきます。
(1)月次試算表(BS含めて)
月次試算表を既に金融機関の方に提出をしている会社も多いかと思います。
ただ、ここで重要なことはきちんと各月の試算表数値がなぜその数値になったのかを把握したうえで金融機関に提出と説明をすることが大切です。
例えば単月赤字理由がわかないけど一旦、金融機関に試算表を提出しよう!の考え方は今後の調達を考えた時に不利な条件を提示されてしまう可能性があります。
というのも、ただ数値が悪い試算表を渡されても、銀行担当者も業界のプロではないのでパっと見てただ単に「単月赤字か、業績悪いんだな」と思われてしまうかもしれません。
本当は業界的に売上が下がる月かもしれないのに多分銀行もそんなこと分かっているだろうという考えが将来の調達条件で苦しめられる可能性が高くなります。
そうならないためにもきちんと月ごとのBS、PLの動きを把握したうえで業界特性を踏まえて金融機関に説明をしましょう。
(2)決算説明資料
こちらは決算書を渡す際に合わせて提出をしていただきたい資料です。
決算説明資料とは決算数値がなぜそのようになったのか、仮に赤字になったのであればなぜそうなったのか(例えば新店出店にかかる先行投資など)を説明し、業績が落ちたから単に赤字になったのかそれとも特定の事情があり赤字になったのかを説明するかしないかでは心象が大きく変わります。
こちらに関しては口頭ベースでも良いですが、できれば書類作成をして提出をした方が良いです。
理由としては、担当者が口頭で伝えたことをきちんと理解して稟議や審査部に通せるかは行員個人の差が出てくるためです。
彼らも業界に精通しているわけでは無いため(人によっては精通されている方もいますが)、保険の意味も込めてきちんと作成をすることをオススメします。
さらに社内の幹部陣や、来期以降の事業計画を作成するときの内部管理資料としても効果を発揮することも大きなメリットになります。
(3)事業計画(BS、PL、月次資金繰り)
こちらに関してはすでに作成されて提出されている会社は多いのではないでしょうか。
その中で是非、作成するときに意識していただきたいことがあります。
それはPLだけではなくBSと月次資金繰りを考慮して計画を作成することです。
実は金融機関は事業計画の中でもPLの利益にもちろん着目しますがそれ以上に、いつどのタイミングでいくらお金が必要になるのかを見ています。
その中でBS(投資が反映される場所)月次資金繰り(資金需要が発生するタイミングと必要な金額)が分かれば行員も稟議が書きやすくなること、さらに融資への必要性をなお一層理解してもらうことができます。
さらに事業計画をPL、BS、月次資金繰りでて管理できることは内部の財務管理でも大きな力を発揮するため、外向けと内向けどちらにも有効と言えます。
(4)事業計画(短期的、中長期的な投資計画など)
こちらは事業計画(BS、PL、月次資金繰り)に合わせて提出していただきたい資料です。
例えば新規出店するのであれば数値計画に合わせて次の出店の場所や坪数、どんなビジネスをしていくのか、ターゲットや利益構造などをまとめた資料になります。
それ以外にも従業員の推移や今後どの部門に力を入れていくのかなど記載した資料があるだけでかなり説明がしやすくなり、金融機関の理解も得やすくなります。
金融機関の1番気になるところは貸したお金をきちんと返してくれるかが重要なポイントのため、ちゃんとお金を生み出して返せるビジネスなのかをきちんと審査側にも理解をしてもらうために作成をオススメします。
4.まとめ
今回のコラムでは今後の調達時流に合わせて資金調達を有利に進めるためにどのような財務資料を用意したら金融機関の格付けが上がり調達に有利に働くのかについて話をしました。
調達に焦点を絞って話を進めていきましたが、会社が大きくなるにつれてどの財務資料も社内管理資料として用意していく必要があります。
調達を有利に進めながら、社内管理も整えていくことは企業のメリットにも働きます。今後の金融時流で重要視される会社「将来性」がある会社とは売上や利益を確保することはもちろんですが、きちんと財務管理が出来ている会社も「将来性」があると判断される1つの軸になります。
本コラムをお読みの皆様は時流に乗り遅れることなく今後の調達戦略のヒントにしていただければと思います。
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