財務トピックス(コンサルタントコラム)

株式会社の歴史から見るホールディングス体制の本質とは?(1)

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1.ホールディングス化とは

日本の人口が減少していく中で、2019年後半から世界的に好景気の波が急速に小さくなっていくことが予想されています、中小企業の経営者にとって、縮小経済の流れにおいて、いかに生き残っていくのかといった下山経営が求められてきます。
 
特に生産年齢人口が減少し、採用が困難になっている中で、いかに優秀な人材を後継者候補として確保し、また育成していくのか、また、縮小経済に伴い、各ビジネスモデルのライフサイクルが短縮化していく中で、いかに時流の変化に適応した新規事業及び新規ビジネスモデルを展開していくのかといったことが、今後の大きな経営課題となります。
 
そのような経営課題に対応していく組織体制として、現在、中小企業のホールディングス化が注目を集めています。
 
ホールディングス化とは、二つ以上の法人がある場合に、一つの会社が、他方の会社の株式のすべてを所有することで、両社で親子関係を創出する組織再編を言います。
 
上記において、親会社のことを、子会社の株式を持っている会社ということで、持株会社やホールディングス会社といった言い方をします。
 
 
そもそも、ホールディングス体制は、戦後GHQの指導によって、独占禁止法で禁止される前は、日本におけるグループ企業つくりの中核的な仕組みでした。
 
三井、三菱、住友等の戦前の財閥において、ある一つの家系が、幅広い業種の企業の株式を所有することで、株式市場を独占しており、まさにホールディングス体制がその基盤になっていたといえます。
 
戦後、財閥が解体されるに伴い、ホールディングス体制(厳密に言うと純粋持株会社)についても、株式市場を開放するという趣旨の下、独占禁止法で禁止されました。
 
ホールディングス体制が全面的に解禁されるようになったのは、1997年になってからです。
 
このような歴史の裏を返せば、ホールディングス体制は、一つの家系が、株式市場を独占するほどの強大な経済力をつけ、永続経営を実現するために効果的な仕組みということができます。
 

2.ホールディングズ体制の本質とは

では、中小企業において、なぜホールディングズ体制が、永続経営を実現するために効率的な仕組みということができるのか。その本質は、「所有と経営の分離」にあります。
 
そもそも株式会社とは、「所有と経営の分離」の下、多数の資本家から事業運営の資質がある経営者に対して、「資本を集中する」ことで、効率的な経済活動を可能にする仕組みとして存在します。
 
その起源は、17世紀の初頭のオランダ東インド会社と言われております。
 
当時は、オランダ、イギリスなどのヨーロッパにおいて、アジアの香辛料は、非常に価値が高いものであり、アジアから香辛料を持ち帰ることによって、莫大な利益を生み出すことができました。
 
もっとも、当時の航海技術においては、アジアからヨーロッパまで船で香辛料を持ち帰ってくることは非常にリスクが高く、一人の資本家が、船の設備費用や航海士の雇用費用といった莫大な費用をすべて負担して、その事業に投資をすることは「ハイリスクハイリターン」であり、一種の博打に近いものでした。
 
そのため、多数の資本家が互いに出資をし合い、事業から生まれる莫大なリターンについては出資割合に応じて分け合うことで、「ハイリスクハイリターン」な事業にも積極的に投資することができる仕組みが生まれました。
 
それが、株式会社の起源と言われております(諸説あります)。
 
 
それに対して、日本の中小企業においては、創業者(又はその一族)が、会社の株式のすべてを保有しており、「所有と経営が一致」しています。
 
このような「所有と経営が一致」している中小企業において、創業者は、オーナー経営者として、従業員をまとあげ、事業をすべて管理することで、一定規模までは会社を大きくすることができます。
 
しかし、会社規模が大きくなり、オーナー経営者が一人で事業を管理することが難しくなった場合、会社を成長させる過程で、オーナー経営者に事業のノウハウがないような他業種に参入する場合、または、創業者一族に経営の資質がある後継者がおらず、経営権を親族外に承継する場合等では、オーナー経営者やその一族が自らの資本の下、すべての事業を執行していくことは難しくなり、自然と「所有と経営を分離」していくことが求められてきます。
 
そのような中で、ホールディングズ化は、複数の法人を活用して、親会社は、子会社の事業の監督や資本投資戦略を担い、他方、子会社は、事業の執行を担うといったように、中小企業において、「所有と経営を分離」する体制を構築するために有効な手法と言えます。
 
 
次回、ホールディングス体制のメリット・デメリットとそのポイントについてご紹介します。
 
次回の内容はこちら

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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