財務トピックス(コンサルタントコラム)

取引先金融機関と融資可能額が増える 正しい銀行交渉

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規模を大きくしたい・仕入れを加速させたい、そんなタイミングで銀行からの資金調達が困難になった経験はありませんか?そのようなときは、銀行が自社に貸してもいいと考える金額の上限に到達してしまっている可能性があります。財務の壁にぶつからないための銀行交渉の秘訣をお伝えします。

こちらは、銀行内での融資可能額の推移を示すイメージ図です。

横軸が会社の評価となる「格付」、縦軸は決済する場所です。横軸が正常先に向かうほど、縦軸が本部に向かうほど銀行からの融資可能額は大きくなります。

つまり、銀行からさらにお金を借りるには、自社の格付と銀行内の決裁権者を上げる必要があります。

ここで銀行からの借入可能額の計算式を見ていくこのようになります。

「一行あたりの融資額」×「付き合う銀行数」=「自社の借入可能額」

「一行あたりの融資金額」もしくは「付き合う銀行の数」を増やすことで借入可能額は増えます。

1、「付き合う銀行数」を増やす

まずは「付き合う銀行の数」を増やす方法を解説します。取引銀行を増加させるには、正しい手順とコツがあります。

自社が付き合うべき銀行の選び方

新たな金融機関と取り引きをしていきたいと考える際、皆様は以下のような選び方をしていませんか?

・とりあえず、規模が大きくて安心のメガバンク

・とりあえず、地場で有名な第一地銀

このように自社の状況と周辺の銀行を分析せずに、新たな取引先銀行を選んでいては、結局うまくいきません。自社の財務内容▽規模▽業種3つの軸を分析する必要があります。

自社の財務指標は銀行に評価してもらえる水準に達しているでしょうか。上場企業レベルの財務状況であればメガバンクにアプローチしても成功するかもしれません。しかし、基本的に大きな銀行になればなるほど財務指標を見る目は厳しくなります。

また、銀行がターゲットとする年商規模を達成しているかどうかも必要です。さらに、不動産や自動車など銀行によって得意とする業種はさまざまです。銀行が得意とする業種を自社が営んでいるのかもポイントなのです。

図は会社の年商規模とターゲットとなる金融機関の関係をまとめたものです。一般的には自社の年商規模と合った「適正ゾーン」の金融機関を選びます。


ここであえて、適正ゾーンから1つ下の金融機関を選んでみるのも一つの手です。

例えば、年商規模3億円ほどの企業は第二地銀と付き合うのが「適正ゾーン」ですが、1つ下の信用金庫や信用組合と付き合うということです。そうすることで、自社に対して、よりよい融資の提案をしてもらえる可能性が高まります。

銀行が得意とする業種の判別方法に関しては、IR・ディスクロージャー誌を参考にしてください。財務や業務の内容など経営内容が記載された資料です。銀行のIR・ディスクロージャー誌には注力する業種や商品の記載があるため、銀行が今後取引を行いたいと考える情報を知ることができます。こちらを見ながら戦略を立てるのがベストです。WEBでも閲覧が可能です。

新しく銀行取引を始める際の作法

新たに銀行取引を始める際、突然銀行に電話したり、社長自身が銀行窓口に直接行って依頼したりしているケースが非常に多いですが、これらは絶対にしてはいけない行為です。
その理由は、銀行から「他の銀行での借り入れが難しいから相談に来た客」として扱われてしまうおそれがあるからです。
そうなると銀行が主導となる取引が始まってしまうため、たとえ取引できたとしても自社にとって融資の条件が悪くなる可能性があります。さらに最悪の場合、自社の財務状況がどれほどよい場合でも、取引開始を拒否されることも起こり得ます。銀行に一度取引を拒否されると、その後、取引を成功させるのは非常に難しくなります。
ここで、金融機関から見た営業案件を「銀行からのセールス」「誰かの紹介」「顧客からの相談」の3つに分けて分析していきます。

銀行が審査する目線は「銀行からのセールス」ほど緩くなり、「顧客からの相談」になるほど厳しくなります。ですので、新しく銀行取引を始める際には以下の方法で連絡を取っていくとスムーズに進めることができます。

①税理士に紹介してもらう

②社長仲間につないでもらう

③以前営業に来ていた担当の名刺に連絡する

銀行取引の進め方を間違えてしまうと、その後数年間、取引が始められなくなるリスクもあります。銀行との新規取引は入口が非常に重要なのです。正しいアポイントの取り方を学んで銀行取引を成功させる可能性を広げましょう。

2、「一行あたりの融資金額」を伸ばす

次に「一行あたりの融資額」を伸ばすポイントを解説していきます。

①銀行からの評価を上げる

自社の格付を「正常先」と評価してもらう上で、重要となる4つの指標を覚えてください。


これら重要指標に共通するのは「利益を出すのが大前提」ということです。

銀行からの評価を上げるためには節税策はできる限り抑制して、納税をした上で、純資産を蓄積する必要があります。4つの重要指標を銀行から評価される「正常先」の基準に上げるには、毎年の決算で利益を出すことに注力していく必要があります。

②融資審査において補足となる資料の開示

なぜ補足資料が必要なのか解説します。

下の図は銀行の融資プロセスです。会社からの決算書を基に、銀行の支店の融資担当が本部に格付申請を行っていきますが、この流れの中で注目していただきたい点があります。


それは銀行支店の融資担当です。金融機関はいま、収益が悪化しており人員削減が進んでいます。支店の担当者は担当先を数十社(最大100社程度の場合も)持っているのが当たり前です。そのため、1つの企業に対して時間を割けず、企業の実態をよく把握できていない状態なのです。融資担当者が、自社の決算書の内容だけではわからない「利点」まで本部に伝えることが難しくなっています。

融資担当者は自社の代弁者です。決算書を提出する際に適切な情報開示(補足となる資料)があれば担当者をサポートすることに繋がります。

そうすることで、支店担当者は時間をかけずに銀行本部に資料を提出することができ、自社は本部に伝えたい意図を直接書面で伝えられるため、Win-Winな形をつくることができるのです。

補足資料の内容としては、事業概要書と事業計画を必ず作成することを勧めます。

・事業概要書:会社や事業の概要、販売戦略を盛り込みましょう。銀行にお金を返済することができるよいビジネスモデルであるとアピールできます。格付されるときにも非常に重要視されるポイントです。

・事業計画:売上だけでなくB/S計画など財務状況を提示しましょう。今後の数値計画とそれに伴う必要調達額を金融機関に示します。

「一行当たりの融資額を伸ばす」ためでも、絶対にしてはいけない行為があります。それは、金利など他行の条件を提示して条件改善を図ることです。さらに、他行と比較して融資の条件が悪いからといって取引関係を解消するのも勧められない行為です。継続的に多くの金融機関と良い関係性をつくっていくのが理想です。

まとめ

自社の事業をさらに拡大させていくには、金融機関からの借入可能額を増やす必要があります。今回ご紹介したポイントを参考に自社の格付を上げた上で、上手に金融機関との交渉に臨んでみてください。財務の壁にぶつからずに事業を進めていくことに繋がります。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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