財務トピックス(コンサルタントコラム)

利益が出ているのにお金がない!?事例でわかる資金繰り管理の重要性と可能性(2)

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100億企業を実現した5人の経営者の成功事例

前回、「資金繰り」とは何かについてご紹介させていただきました。
前回の内容はこちら

第2章 花火会社で見ていく資金繰りの重要性(事例)

第1章では資金繰りがそもそも何なのか、入金と出金の癖などをお伝えしてきました。
第2章からは実際に資金繰り管理をしないとどのようなことが起こってしまうのかを事例を通じてお伝えします。

※それでは早速、実際の事例で見ていきましょう
今回の事例会社はある製造会社です。
主力製品は打ち上げ花火用の尺玉です。
尺玉が1番売れるのはお祭りが多くなる5月から9月までの間です。

となると、5 月から売上が多くなるのであれば火薬などの材料を仕入れるタイミングは、尺玉製作までの時間を含めて1月前の4月ぐらいから8月ぐらいまでが年間で1番仕入れにお金がかかると想定されます。

この説明だけだと少しイメージしにくいと思うので図も合わせて説明をしています。

※前提条件
この会社は売上が発生した時点で該当月に売上を計上(発生主義)
1月前に仕入した材料をその月内に加工し、次の月には全て売り切る完全受注生産型の会社です。

こちら尺玉製作工場の社長が作った事業計画です。
この図の中身には月ごとの売上や仕入の金額が記載されています。
この図を見ると、「なるほど2月から利益が出るようになるんだな」と感じられると思います。

しかし、皆様お気づきのようにこの計画はあくまでも売上のタイミングと仕入のタイミングで切り取った、いわゆるお金の動きには着目を一切していない計画になります。

冒頭に記しましたように、売上や仕入には入金と出金のタイムラグが存在します。
では、この事業計画を基に現金の入出金ベースで見た場合どのようなことが起きるでしょうか。

この図を見ていくと、イメージ図①では入出金ベースで流れを見ていなかったので2月には利益が出ると見ていましたが、実際のお金の増減では3月に増えることになっています。

さらに4月と5月には再度現金ベースで見ていくとマイナスになるという現象が起きているのです。
ということは実際に資金繰りが安定するのは5月以降ということになります。

要するに、仕入の量が尺玉の売れるピークに合わせてその前月に大量に仕入れるので、前月のピークではない売上入金額を超えてしまうことでこの現象が起きてしまうのです。

貯金額で見ると、この計画のまま進めば資金がショート(貯金が無くなる)することは無いので安心です。
ちなみに、資金がショートしてしまうと会社は倒産してしまう恐れがあります。
詳しいことは後程説明していきます。

これで資金繰りの管理は完成でしょうか?
実はさらにここに追加して人件費の支払いなどのいわゆる経費が重くのしかかってきます。
その場合、資金繰りはどのように変化していくのか次の図で説明します。

どの会社にも共通して言えることとして、経費の中で多くを占めるのは人件費です。
しかし、人材がいないと売上を作れないのでこの支出は会社を続けていくうえで絶対に必要な経費になります。

さて、人件費を加えた場合の現金の流れを資金繰りで見ていくとどのようなことが見えてくるでしょうか。
先ほどは資金繰りが安定し始めるのは5月以降でしたが、今回の人件費を考慮すると6月以降から安定し始めるという結果になります。

この時点で①の図では2月から利益が出る予測になっていたのに、様々な経費を含めると7月に利益が出始めるということが分かります。

さらに貯金額で見ていくとどうなるでしょう。
先ほどの図②に比べて資金繰りが悪化し不安が増えてきました。

元々10万円あった貯金が資金繰りの1番苦しくなる6月には1.5万円となってしまい、もう少しで最初は10万円あった貯金が底をついてしまうしまうのではないかということが見えてきます。

さて、これで入出金含めた資金繰りは本当に完璧になったでしょうか。
いいえ、追加であるものが支出に追加されます。
それは銀行への毎月の返済です。

これは会社を立てるために銀行からお金を借りて会社を始めた場合、その借りた分の毎月のお金の返済が生じます。
これが会社にとってはかなり資金繰りを圧迫する原因となります。

この圧迫状況を見える化した図がこちらです。

さて、いよいよ最悪な状況が来てしまいました。
貯金額に注目すると、5月にはなんとマイナスになっています。
要するに資金がショート(底をつく)してしまったということです。

こうなると会社はお金の足りない部分をどうやって補うのかという話になります。
もちろん、その他の現金などが無い場合、銀行からまた借入をします。
この新たな借入を銀行からできない場合、この会社は利益を出しているのにお金が無いので倒産してしまう可能性があります
これをいわゆる黒字倒産と呼びます。

黒字倒産の原因として自社の資金がショートするタイミングが分かっていないことは大きな原因になります。
最悪の場合この会社は6月には倒産をしてしまう恐れもあるのです。
7月8月のお祭りピークを前に倒産してしまうなんてとても悲しいですよね。
この記事を見ていただいた方は資金繰りをきちんと見ておかないといけない理由がご理解いただけたのではないでしょうか。

第3章 まとめ(資金繰りの可能性)

今回は資金繰りを管理していくことの重要性について事例を踏まえて進めていきました。
資金繰りを甘く見ると痛い目に合うということが少しは理解していただけたのではないでしょうか。

今回のポイントのおさらいとして
・売上や仕入、経費の実際の入出金のタイミングは計上時とズレる可能性がある
・ズレを考慮したうえで資金繰り管理をしなければ最悪の場合、資金がショートして倒産してしまう可能性がある

ということが言えます。

では、実際に資金繰りを管理していくうえで何が必要なのか。

①それは自社の入金と出金のタイミングを把握すること
(飲食業であれば基本現金売上なので売上時に資金も増えるが、介護業であれば保険分の売上入金は2,3か月後になるので、その分入金も遅れてくるなど)
②今期経費以外で支出しそうなもの(建物や車など)があれば事前に予測として表などに落とし込む

この計画がきちんとできればいつどのタイミングでお金が無くなるのかを把握することができます。
この管理がきちんとできている会社ほどいくらお金があっていくらまでなら自由に使うことができるのかを把握できるので戦略も立てやすくなるメリットがあります。

優先順位的にどうしても低くなりがちな資金繰りですが、このように事業計画を立てる上では外すことができないツールになります。
逆にこの仕組みを理解していないまま計画を進めると絵に描いた餅になりかねません。

守りの部分でも活用される資金繰りですが、今回この記事を見られた方は是非戦略的なツールとして資金繰り表を利用してみてはいかがでしょうか。
きっと新たな財務の出会いがあるはずです。



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【この記事を書いたコンサルタント】
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