財務トピックス(コンサルタントコラム)

事業性評価を考える ~結局、銀行とはどう付き合うべきか~

「2019年、金融業界に大変革が到来。さて、何が起きるでしょう」。

即座に回答できるのは、おそらく金融業界で働く人の中でも、銀行の支店長クラスや、財務コンサルに従事するプロだけという現実。まだまだ業界変革がこれからであることを感じます。

さて皆様は2019年度以降(2019年12月中とも伝えられていますが)のタイミングで、金融庁が「金融検査マニュアル」を廃止することはご存知でしょうか。 金融機関は20年以上もの間、マニュアルを行内の教典とし、企業を決算書から導かれる定量データ・格付に変換して判断・融資を行ってきましたが、今般の撤廃でいよいよ「事業性評価(=数字に出てこない、企業の実態に即した財務・事業評価)」を行い、柔軟に対応していく方向へと舵を切ることになりました。機運は5年程前から高まっていたものの、現実にマニュアルがなくなる2019年度は、決算書主義の金融機関がようやく重い腰を上げる時代になるのかもしれません。

具体的に撤廃により、

・債務超過(=自己資本がマイナス)や赤字でも、成長企業には積極的に融資する(事業性評価)
・経営を回すために経常的に必要な「運転資金」は、
毎月返済条件がなく継続的に融資し続ける形式を推進する(短期継続融資や当座貸越取引)
・決算書や財務データに依存せず、実際の経営実態を見ながら柔軟な融資を心がける

といった内容が、金融業界に求められる新たなミッションとなります。

つまり「どうせこの決算書じゃ貸してくれないよね」という今までの常識が、しかるべき情報発信を行うことで、劇的に変化する可能性が秘められています。特に成長途上にあり、おカネさえ安定的に活用できれば拡大できるのに…という企業にしてみれば、将来性を加味してくれる、且つ資金効率の良い借り方ができる点で、画期的な取組みと言えるでしょう。
しかし一方で、こうした金融庁の取組みの弊害とも言える事案が顕在化しているのも事実です。

〇地銀にモラトリアム法の影 返済猶予した企業が破綻
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39992050U9A110C1MM8000/
(2019年1月15日 日本経済新聞電子版より引用)

中国地方の地銀である広島銀行では、2009年のリーマンショック後に制定されたモラトリアム法により、債務超過や業績不振に陥った会社に対しても返済猶予・支援を行ってきたものの、それが次々と不良債権化しているというニュースです。
モラトリアム法は一過性の恐慌に対して発令された例外規定であるものの、金融庁がこれからまさに金融機関に求める「柔軟な姿勢」を取ったがゆえ、銀行が大きな痛手を被ったという話題は、取組みに対して大きなマイナス材料と言わざるを得ません。

やはり、金融機関は今後も保守的な決算書主義に基づく融資スタンスを継続するのか。
それとも、リスクを取って融資を行うことで、企業へ積極支援を行うのか。
結局我々は何に注意し、どんな借り方・付き合い方を想定するのが1番なのか。

本日はこのテーマを考えます。

〇「引き締め~緩和」で揺れるここ20年の業界スタンス

「事業性評価」は我々借り手にとってみれば、おカネが借りやすくなる緩和策と言えます。
あれやこれやと決算書の数字ばかりをこねなくても、しかるべき方法で情報発信すれば融資を柔軟に受けられると考えれば、こんなにありがたいことはないと思います。このところ日本国内は空前の「カネ余り(資金需要が乏しく、貸し手である金融機関は過多)」ですから、金融庁としてもできるだけお金を使いやすい施策を取りたいと考えるのは自明の理です。

一方前述のリーマンショックの頃、またそれ以前では金融検査が始まった1999年から2003年午頃にかけて「貸し剥がし(※)」という言葉が世間で大きな話題になりました。
それまで継続的な短期資金等で企業を支援していた金融機関が、金融検査マニュアルや不況による貸出債権の劣化=借り手の業績悪化に合わせ、いっせいに短期資金回収や当座貸越閉鎖に動いた引き締め策…実は、これがそう昔でない当時の業界トレンドだったのです。

「俺は、できるだけ短期資金では融資を受けたくない。銀行は融資継続しますと言っていても、いつ業況が悪くなって貸し剥がしてくるか分かったものではない」。

これは筆者が過去お会いした、リーマンショック時代に貸し剥がしを経験された経営者の方の言葉です。銀行員の経験がある筆者にとって、これだけ心にグサリと突き刺さる意見もないと感じた一件でしたが、つまり平成30年間、このわずかな期間だけでも、業界スタンスは「緩和~引き締め」の間を揺れ動いているのです。

時流はその時の景気や、お上に君臨する人の方針、風潮によって生み出される、まさに砂上の楼閣のようなもの。いかに我々がその時の金融機関の言いなりで取引せず、借り方・返し方の勉強をしなければならないか、見えてくるのではないでしょうか。

(※)補足
「貸し剥がし」という言葉を聞くと、金融機関が既に融資したお金を無理やり回収する構図を思い浮かべる方も多いかと思いますが、実は全く違います。債権者(貸し手)は債務者(借り手)よりも強い立場にある、というのは間違いないことですが、一方で債務者は1度借りたお金を「借り続ける利益(=期限の利益)」を持ち、これに守られることで債権者に対抗できるため、実はそう簡単に金融機関もお金を回収できないのが現実です。
では、なぜ貸し剥がしと世間が騒ぐ事態が発生したのか。実は前述の「期限の利益」は、銀行が契約時に規定している様々な事由の発生(倒産や業績不振による財務悪化、延滞等)に伴い喪失するものであり、喪失により金融機関は法的に正しく融資回収・融資継続の終了を行うことができるのです。
「今まで、あんなに銀行の支店長とも仲良くしていたじゃないか…」
といった心情面はあるにせよ、金融機関は決して悪徳業者のようなことをしているのではなく、普段あまり気にされない各種約定に基づき、合法の範囲内で行動しているだけなのです。
金融機関と付き合いするにも、やはり約定書の内容を理解することが大切です。

〇まとめ:さて、金融機関との今の付き合い方を整理しよう

今回は、金融業界が金融庁の方針に従って変化しつつあり、それにより起きた事象を取り上げながらこれまでの業界トレンドをおさらいし、トレンドに流されずもう1度金融機関との取引状況・約定等を整理することの大切さを確認しました。

金融業界が大きく変わるなかでも、自らがきちんと現在の借入金額や借入条件を正確に把握するために、筆者はまず基本となる「借入明細」を作成することをお勧めします。担保・金利・期間・借り方…そのすべてが貴社の資金繰りや決算に影響を及ぼす要素になる、しかし多くの会社はこうした各種条件の把握が意外にもあいまいで、実際に返済・借換えをする段階になってようやく問題が表見するケースも見られます。

どんな借入明細で管理すれば良いか、たとえば、もう少し自動化したフォームで管理をしたいなどのご要望も承りますので、ご希望の際は弊社まで連絡をいただけますと幸いです。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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