財務トピックス(コンサルタントコラム)

経営者に必要な「数字を味方にする技術」の身に着け方

  • 最終更新日/

創業スタートアップ支援・資金調達に特化していて、儲かる会社の「しゃべる」数字という著書もあるはぎぐち公認会計士・税理士事務所に、見るべき会社の数字と、節税に関する考え方をお聞きしました。動画にした内容を文字化しています。

①はぎぐち公認会計士・税理士事務所について

私、萩口義治は公認会計士・税理士として「はぎぐち公認会計士・税理士事務所」の代表を務め、財務コンサルタントとして「株式会社HG&カンパニー」を経営しています。

創業から10年、顧問先は170社ほどあり業界では売上規模で上位5%に入っています。私たちの会計事務所の特徴は「財務の視点から税務を扱っていく」点にあります。現金残高を最大化するという財務の視点から企業の支援を行っています。

その中で創業以来取り組んでいるのが創業支援です。

経済白書によると、創業して3年以内でなくなる会社が50%あるとのデータがありますが、私たちの顧問先では95%以上が3年以上継続できています。創業のお客さまの財務部代行といった存在として貢献できたことで、そういった数字を残せていると感じており、大きな成果ととらえています。

創業から支援しているお客さまも成長期に入ってきて、そういった方に対して貢献したいと始めたのが事業計画のコンサルティングです。事業計画を作り進捗管理をして行くことで、業績に貢献していく取り組みを6年ほど前から始めました。

私が考えていたのは「作る・読む・生かす」の3段階で数字をとらえることです。簿記や決算を作る税理士の基本的な機能がありますが、そこから今の数字を読んで、今の会社の現状を知り、さらに生かしていくというところに取り組んできました。

いま辿り着いたのが、行動の結果が数字であることから、数字だけを扱うのではなく行動をしっかり定めて「行動が変わるから数字が変わり未来が変わる」。こういったところを重視してコンサルティングをしています。

②なぜ「経営者」は数字を見るスキルが必要なのか?


私は事業とは「お金を増やすゲーム」だと言っています。

目的として「社会貢献」や「従業員を幸せにすること」があったとしても、お金がある方が目的達成の幅が広がっていくため、お金を増やすことは1つの大きな目的だと考えます。

お金自体が数字です。お金を「扱う」「増やしていく」ゲームの「キャプテン」「監督」である社長が数字に弱いのは致命的ではないでしょうか。良い悪いではなく、非常に不利だと感じます。

③「しゃべる数字」の見つけ方

経営者が本当に見なければいけない数字は、もしかしたら決算書の外にあるのかもしれないと考えた方がいいと思っています。難しいことを考えるのではなく、例えば人数で売上高を割ってみて、1人当たりの売上高の推移を毎年見られるとしたら、それだけでも何かを教えてくれるかもしれません。

本当に必要な数字を要素ごとに分解して見ていくことによって、数字は多くのことを教えてくれるようになります。数字は経営者にとっての武器であり、味方になるものと考えています。数字が黙ってしまうのは様々なものを一緒にしてしまうからです。

創業時は何をしていいのか・何が正しいのか分からない中で試行錯誤を繰り返していくと思いますが、税理士はきちんと選んだ方がいいです。「金を増やすゲーム」でお金のことをアドバイスしてくれる専門家であり、ブレーンをどう選ぶかがゲームを左右します。

税務だけを見ているのか・財務の視点も見ているのか、といった視点の広さの違いでアドバイスの範囲が変わってきます。財務視点があるかどうかは、税理士を選ぶ上でのポイントだと思います。

・誰がやっても同じ
・紹介なので断れない
・できるだけ安い人

といった理由で税理士を依頼する考え方は失敗していると考えます。最初に正しい知識やお金に対する考え方・決算に対する考え方・税金に関する考え方の方向性がきちんと定められていたら正しい方向に進んでいきます。そこを最初に得られるか得られないのかは非常に大きいと感じます。

④社長が節税を頑張りすぎてはいけないワケ

節税をどう考えるのかが会社の大きな分かれ道になっていきます。これが税務と財務の考え方の違いの最たる例です。

決算前に100万円の利益が出ていて30万円の税金が出るとなった時、社長はどうにかしたいと考えると思います。

税金を最小化する立場からすると、例えば経費として、生命保険や共済で100万円の支出を作って利益を0にして30万円の税金を0にすると、30万円節税できたという見方になり、経営者は喜ぶかもしれまん。

しかし、私は財務の視点から「税金を払わないと会社は大きくなりません」と言っています。

財務というのは現金残高を最大化させることです。

30万円節税するために100万円の手元現金を支出しているのですが、税金を払っていれば70万円が残ったはずです。この70万円の資金で翌期に事業投資することができます。手元に現金が残っていないと事業投資で更なる売上を生む可能性をなくしてしまいます。

事業投資ができないと来期も大体同じぐらいの利益になります。そうするとまた同じことを毎年繰り返します。これが「節税による縮小均衡」です。

一方で、70万円を残した社長は事業投資ができますし、70万円の利益を蓄積したことによって銀行から借り入れができます。70万円の資金で、仮に後70万円借りたとすれば、140万円の資金で事業投資ができます。

事業投資をすると翌期はもっと利益が出て、もっと税金を払うことになりますが、残る資金は増えていくので、もっとお金を借りることができます。そして次の事業投資につながっていきます。

税金を払っていくことで「拡大スパイラル」が得られます。利益は税金で一部はなくなりますが、70%残して次に回していくことで現金が最大化されていきます。

毎年同じことをしている縮小均衡の会社と拡大スパイラルに入ってる会社の10年後をシュミレーションすると数字は非常に大きな差になってきます。1期目の決算の際に顧問税理士がどのように対応してくれるかが、大きな分かれ道です。

⑤会社の成長において、ほかに重要ポイントはありますか?

中小零細企業が成長できないのは役員報酬で失敗しているケースが非常に多いです。

ここをどう考えていくかによって、会社の3年後、5年後、10年後が変わってきます。

⑥なぜ、役員報酬を高くしすぎてはいけないのか?

オーナー企業か上場を目指してる会社なのかといった会社の置かれている状況によって考え方が変わってくるので一概には言えませんが、100%株主の社長の役員報酬と外から連れてくる役員の報酬は別で考える必要があります。

100%オーナー企業の社長の役員報酬に関しては、できるだけ下げていくことで会社に回っていくお金が増えていきます。会社を大きくする視点から役員報酬は社外流出のため小さい方が良いと言えると思います。

一方で、外から連れてくる優秀な役員に関しては事業投資という考え方になります。その方に投資して、それ以上の利益を増やすのは間違っていないと思います。

⑦萩口さんのオススメする、正しい資金調達タイミング

銀行側からすれば、会社にお金が必要な時は貸したくないが、お金が余っている時こそ貸しても大丈夫だと考えます。

資金調達のタイミングは「お金が必要な時」ではないので、借りるべき時を考える必要があります。コロナの影響で困ったから資金を調達するのではなく、コロナでも困らないように既に調達してありました、というのがあるべき状態です。

私は「無駄な資金を持ちなさい」とアドバイスしています。

お金の意義は2つあるからです。1つ目は「体力」。2つ目は「投資の源泉」です。

体力については、コロナだけではなく地震などの災害が起きた場合、体力がなければ事業が終わってします。何が起きても尽きない位の体力を持つ必要があります。

一方で、コロナ禍でも新しい事業に投資しなければいけませんし、チャンスが訪れた際に掴みにいくにはお金が必要です。

体力を減らして投資しないためにも「体力」と「投資の源泉」を経営者はどちらも持っていないといけません。

社長が考えているよりも多くの額を持つことを勧めます。「今は大丈夫」だと思ってる時に余分な資金を借りられるかどうかが重要だと思います。

今年はコロナ禍で始まったゼロゼロ融資の返済が始まってきますが、それに対して新しく追加の保証枠ができて、新しい融資が始まると言われてます。また、経営者保証をなくす融資が出るといったことも言われています。

情報を適宜掴みながら、資金調達のストーリーを組み立てていければ、苦しい時・苦しくなった時にも活路が開けると思います。

話者紹介
萩口義治
財務コンサルタント。公認会計士・税理士。認定経営革新等支援機関。
株式会社HG&カンパニー代表取締役。はぎぐち公認会計士・税理士事務所代表。
1978年、青森県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業後、2003年に公認会計士2次試験に合格し、現・EY新日本有限責任監査法人やコンサルティング会社・税理士法人勤務を経て、2012年に独立開業。いかにすれば事業は継続し成長するのかを考え続け、「創業補助金採択支援数 東京都の会計事務所で1位(2014年4月採択分)」「マネーフォワードクラウド会計を50社に導入した関東で最初の会計事務所」「早期経営改善計画案件数 東京都の公認会計士で最多(2022年10月末現在)」など、多くの実績を上げている。その他、資金調達支援・財務コンサルティング・事業計画のコンサルティングなど数値による新しい価値を創出し続けている。口癖は「数字はすげー」。著書『儲かる会社の「しゃべる」数字』(日本経済新聞出版)は八重洲ブックセンタービジネス書部門で1位になり発売より1か月半で重版している。

無料経営相談
【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
財務指標をただ算出してその上下を評価するのではなく、それらの指標をどのように経営判断、投資判断材料とするのか、持続的な成長を支える為に必要な資金調達額を最大にするための施策を検討、実行します。
攻めの投資を実現する際に最も大切なことは、その1期のみ最大の成果を出せることではなく、持続的に最大限の成長を継続することです。
それを資金面から実現する戦略をデザインします。

flag人気の記事
gradeオススメの記事
中小企業が次々と資金繰り改善に成功した究極の資金繰り改善策
expand_less