財務トピックス(コンサルタントコラム)

「キツい時」こそ企業が考えるべき最善の財務戦略

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赤字、未収、減収減益…。
これらは正直、目にもしたくない企業経営が「キツい時」に出てくるマイナスワードです。

原因はもちろん企業によって千差万別で、決してこれらが100%悪だという断定はできませんが、多くの場合は資金繰りが厳しくなったり、社員のモチベーションが落ちたり、取引している金融機関から厳しい指摘を受けたり等の悪影響が出るものです。企業の現場でお世話になる筆者も、できればこうしたイベントを経験せず、皆様には一直線で売上・利益を伸ばしていただきたいのですが、その一方で外的環境である現代社会はますます不透明さを極めております。2019年も消費増税、相変わらず上向かない景気、次々に出てくる技術革新などを背景に、正直なところ5年先を見通すことも難しいほど、世の移ろいは激しくなっていることを痛感します。今や、好調な企業でも一寸先の闇に潜む悪魔を撃退する方法を知っておくことは、必須と言って過言ではないのかもしれません。

今回は、自社が迎えるかもしれない「キツい」状況を、財務の面からどのように乗り越えていくべきかに関して、事例を想定しながら1つの手法をご紹介したいと思います。

【手法】「ものさし」がないと「キツさ」も分からない! 過去決算の重要性

天候や市況、あるいは政策の変更など、企業経営には不測の事態を引き起こす要素が多数存在します。
「今月は受注がうまくいかず、赤字になってしまいました」といったことは、どんな会社にもある致し方ない出来事と言えるでしょう。ただ、財務の観点におけるこうした状況下での最重要事項は、ものさしを作って徹底的に「曖昧なキツさ」を定量化するということに尽きると考えます。

人間は、良い情報にはたくさん触れたいと思う一方、業績が下振れしてしまった等の耳の痛い情報に対しては、どうしても目を背けてしまう性質を持っていると思います。しかし、いつまでも風邪を放置していたら、いつの間にか大病を患ってしまうように、諸悪の根源が「いつ・なぜ・誰の影響で」起きたのかということを整理しないと、一向に「キツさ」からは解放されません。

たとえば、前述の「今月は受注が…」という発言は、事実を理解するためには十分ですが、肝心の原因部分ははっきりしておらず、そもそも比較対象がないので、赤字がどの程度まずいのかをはっきりと理解できません。そこで、筆者はまず現状を「昨対比」でとらえ、下のようなシンプルな図を用いて可視化することをお勧めします。

【図1】「ものさし」を設けた悪い事実に対する分析

いかかでしょう。もちろん、現場においてはさらに複雑な要因が絡んでいるケースもあるため、何でもフレーム化できるわけではありませんが、前述の社長の曖昧な言葉よりは、原因・対策、期日設定、そして何より「どの程度キツいのか」という部分が、誰相手でも同じレベル感で伝えられるのではないでしょうか。

明確な赤字や案件数の落ち込みを「昨対比」というものさしではかり理解できれば、あとはゴールに向かって各人が努力するのみです。まずはそのためにも、今年の試算表・案件管理表等を用意したら、前年同月の試算表・案件管理表も横に置くことを癖付け、計測できる準備を整えましょう。

【事例】債務超過でも1億円を資金調達した企業がとった「ある戦略」

では企業の現場で「ものさし」を使って自社の弱みを可視化した経営者は、どのような具体的成果を上げているのか、ある想定事例で考察してみましょう。

ある観光業を営む株式会社Aは、例年地元で開催される冬のお祭りの時期が「かき入れ時」であり、当月だけは1ヶ月で平均の2倍の営業利益を稼ぎ、閑散期のマイナスを補うような収益構造をしていました。しかし今年は度重なる天候不順に見舞われ、さらに悪いことにお祭り前の連休に台風が直撃したことから、繁盛どころか、単月で大赤字になってしまう状況が発生してしまいました。業種・業態は異なれど、どのような会社でも経営を脅かすこのような不確定要素は、存在するのではないでしょうか。

1年で最も収益が上がるべき場所で赤字を出したAは、決算着地の段階でも大きな累積赤字を消し去れない見通しでした。一方、使用している設備は毎年のように古くなり、少しずつ設備投資にお金を回して刷新していかねば、長期的には集客にも悪影響が及んでしまう、つまり金融機関からの資金調達は欠かせないため、赤字で引かれてしまうことは絶対に避けねばなりません。

一時は見たこともないような赤字額を目の前にして「何とか税理士の先生にうまく決算を”操作”してもらえないか…」と良からぬ発想も頭をよぎりましたが、さすがは長年当社を支えてきた実績を持つ社長、とにかく現状を誰が聞いてもすぐに分かるように資料の準備を進めました。

・現状は赤字だが、今後のツアーの予約状況は昨対比10%伸び、今後の集客が昨対比でプラスに転じること
・入出金のサイクルが比較的早い業態で、今後1年間の資金繰りに問題がないこと
・赤字改善策として紙媒体での広告費を昨対比▲1%圧縮し、ネットメディア中心の広告戦略を進めること

はじめは金融機関も目の前の赤字に及び腰な様子でしたが、赤字になっている試算表はあくまで「過去」の情報であり「いま・未来」をしっかりと説明する社長の話を聞くと、様子は好転。

納得しました。これなら今後の設備更新投資もお手伝いができそうです

結果、株式会社Aは毎年の設備更新投資に必要な融資はもちろん、実は懸案となっていた設備の修繕費用1億円に関しても、赤字期間中に調達することに成功しました。これは、一見「見せ方」を工夫するだけという非常に単純な手法ですが、その一言を根拠と比較対象を持って発信できるかどうかが、明暗を分けることがよく分かる想定事例ではないでしょうか。

【まとめ】自社が重視するべき数字はどこに?

今回は赤字・減収など、企業が「キツい時(過渡期)」を迎えた際、正確な比較対象を用いて、誠実に情報発信を行うことが、危機から脱出するカギとなる可能性をお伝えしてきました。とはいえ、業種・業態・規模・外的要因など、企業は実に多岐にわたる要素で成り立っているだけに、過去の決算・試算表等の情報のどこを、前述でいう「ものさし」として利用するのがふさわしいのかは企業によって全く違います。

・集客数なのか、単価なのか、件数なのか。
・粗利なのか、営業利益なのか、販管費の水準なのか。
・景気動向なのか、外部評価機関のランクなのか。

自社にとってどんな数字を目標に掲げて管理していくことが最善かに関して、まずは社内でしっかりと打ち合わせを行うことから、スタートしてみることをお勧めします。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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