財務トピックス(コンサルタントコラム)

破産事例から読み解く財務責任者の重要性 簡単資金繰り作成法

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手前味噌ですが、船井総合研究所では
経理・財務責任者アカデミー」という名の新設アカデミーが、2019年1月より開始しました。

今後ますます不透明さを増す世の中において「財務」という新たな武器の使い方を体系的に理解し、
企業成長に向け論理的に対策できるようになろうという趣旨のものであり、
初回は50社以上の方にご参加いただきました。

僭越ながら筆者も登壇し、ワークを通して
財務の重要性・財務を熟知する人材がいることの大切さをお伝えしました。

CFO(財務最高責任者)というと、どことなく上場企業の偉い人というイメージが強く、
非上場企業には無関係のものと思われがちです。

一方、上場企業のように直接金融市場からの資金調達ができない非上場企業は、
お金の調達手段が「金融機関から借りる」か
「自社で資金繰りを管理し、お金を儲ける」の2択しかありません。

その点で、上場企業よりもお金の面で脆弱な立場にある非上場企業こそ、
CFOの立場を担う経営者・右腕・責任者を設ける意義を持ち合わせています。

とはいえこうした意義の話ばかりでは、実際にCFOを置く場合とそうでない場合で、
それぞれのメリット・デメリットがイメージしにくいかと思います。

そこで…。

〇【ハザードマップ】未来設計/ミラリード 過大な金融債務に資金繰り悪化

https://www.sankeibiz.jp/business/news/190131/bsm1901310500012-n1.htm
(2019年1月31日 SankeiBizより引用)

これは売上30億から100億円の非上場企業が財務を毀損し、
倒産に追い込まれた事例を取り上げたニュースです。

預り金着服、在庫回転率の悪化、返品在庫の発生…理由は様々あるものの、原因は全て
・財務情報から、企業の実態、特に「カネの流れ=資金繰り」を読み込めなかった、対策を打てなかった
・財務に明るい人材がいなかったことで、企業の異変・不正に気付けなかった

ことに集約されます。

年商30億円以上の企業であれば、従業員も相当数抱えており、
間違いなく「営業部」「総務部」「○○支店」といった“部署別業務管理”もある程度できていたはずです。

特に年商100億円超企業の事例は、この倒産が業界内で最大規模ということですから、
大企業だけに相応の逸材も集まっていたことが考えられるのですが…。
母体が大きくなり拠点が増えたからこそ、逆に管理や素早い把握が難しくなっていたのかもしれません。

以上のように創業~年商100億円超、さらに上場企業でも、
いつまでも重要な要素としてあり続けるのが財務です。

夢を大きく叶えるためには、カネという極めてシビアで現実的問題が寄り添うという世知辛い話であり、
決算書や資金繰り表を見たことがない方・これから学びたい方はゲンナリしてしまいますが…。

今日はそんな方に向け、あるモノを使って、
財務の基本「資金繰り」の簡単な管理方法をお伝えしたいと思います。

※「企業経営は1にも2にも資金繰り、資金繰りは企業を活かす」ということで、
過去執筆した記事もございます。よろしければ、こちらもご参照くださいませ。⇒Click

〇まず通帳の並べ替えだけ 資金繰り表基礎の基礎

さて、前段では企業における財務の重要性をお伝えし、
特に資金繰りは何よりも重要だということを主張しました。

また、今回取り上げた記事でも“カネが詰まって”倒産したという
資金繰り破綻の典型事例が紹介されていた通り、
財務を勉強するうえでまず資金繰りを理解することは、門出の部分とも言えます。

とはいえ、書籍を読み込んで資金繰り表の形や意味を理解しても、
実際に現場ではどこを見て自社の資金繰りを作ればよいか。
実は難しく考える必要はありません。

資金繰り…つまり日々の入出金が分かる通帳さえあれば、簡単な形ですが、
ある程度お金の流れ・構造は把握が可能です。

以下の表をご覧ください。

左上図は、ある会社の1ヶ月の通帳に印字された入出金記録であり、
確認すると1ヶ月で15百万円の現金残高を、
プラス14.3百万円の29.3百万円まで増やしたことが分かります。

しかし、通帳はあくまで小遣い帳と同じ仕組みで記載されるだけの記録のため
「増えた14.3百万円は一体どのような会社活動によって生まれたか」
という部分は見えにくい状態です。

そこで、これら入出金を6項目に分類し、右上図のように縦に並べ替える作業をしてみましょう。
すると、ざっくりと会社のお金が
「本業活動絡み、投資絡み、資金調達絡み」
のどれで増減しているのかが、浮き彫りになります。

この会社の場合、本業で19百万円程度入金したうち約半分を手元に残せているので、
本業できちんとお金を儲け、そのお金で投資を賄えていそうなので、
良い資金繰りではないかと推察できますね。

かねてから当サイトでは、キャッシュフロー・資金繰り改善に関して
簡単な部分から難易度の高いところまでをお伝えしておりますが、
実は基本的な会社の資金構造だけなら、通帳の記録1つで導き出せるのです。

簡単な表とはいえ
・自社は今月、本業活動できちんと収益を残すことができていたのか
・今月大きな投資があるが、金融機関から調達をしなくても良いのか
・金融機関に毎月返済をしているが、その額は会社の収益構造に見合ったものになっているか

という部分に関して、十分検証に耐える表になるのではと思います。ぜひお試しください。

〇まとめ:やがてお金を「誘導する」存在へ

今回は、どんな企業でも財務知識を活用することは重要であり、
特に資金繰りは企業規模問わず財務の「心臓部分」であるというお話とともに、
通帳だけで作成できる簡単な資金繰り表作成法をお伝えしました。

特に資金繰り表に関しては、何となく難しいと感じている方が多いのではと思いますが、
実は分類の6項目だけマスターすれば誰でもすぐに作成することが可能です。

意外や意外、実は今まで感じていなかったような課題や強みも、
この作業から見通せる可能性がありますよ。一方で通帳からの後追いではなく、
・決算書の「売上・利益」とのつながりまできちんと理解して資金繰り表を作りたい
・通帳が何冊もあり支店も多数存在するので、資金を分類するだけでも一苦労だ
・後追いで資金繰り結果を読むだけではなく、今後1ヶ月~1年にわたって資金繰り予測をしたい

といった課題やご意見もあるかと思います。

おっしゃる通り、今回の記事の作成法をマスターした上でこれら課題にチャレンジすれば、
やがて自社のお金の流れを誘導しているかのように動かせる感覚を得ることもできるかもしれません。

弊部にもこうした「さらに1段階上の資金繰り管理」に関するノウハウが蓄積されておりますので、
気になる方はぜひ1度ご相談下さいませ。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
財務指標をただ算出してその上下を評価するのではなく、それらの指標をどのように経営判断、投資判断材料とするのか、持続的な成長を支える為に必要な資金調達額を最大にするための施策を検討、実行します。
攻めの投資を実現する際に最も大切なことは、その1期のみ最大の成果を出せることではなく、持続的に最大限の成長を継続することです。
それを資金面から実現する戦略をデザインします。

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