財務トピックス(コンサルタントコラム)

5年前から経営者保証は不要だった!?時流に合った融資取引とは

  • 最終更新日/

店舗拡大、事業規模拡大に際して足枷になりかねない「経営者保証」。
金融機関から理解を得て無保証融資で取引できる3ステップとは。

 
非上場企業にとって、成長に欠かせないのが「金融機関からの融資による調達」です。
しかし当然ながら融資は負債であり、一定期間がたてば全額返済を求められますし、
融資を受ける期間中、企業と一心同体である経営者が「保証(経営者保証・連帯保証)」を差入し、
万一の際に融資の返済責任を負う形式を取ることがほとんどです。
 
もちろん融資を依頼する金融機関も営利企業であり、
融資というリスクを負うからには対価となる「守り」、つまり経営者保証を求めるのは当然です。
一方で仮に経営が難局を迎え、融資の返済ができない事態が発生すると、
簡単な差入手続きからは想像もできないような厳しい制裁が経営者に降りかかり、
融資を受けたメリットの何十倍ものデメリットが残る仕組みであることも間違いありません。
また、
 
・後継者へ事業承継したいが、融資についての保証まで引き継ぐことを拒んでおり、承継が進まない…
・何十年と事業を展開する中で、今どの金融機関と、どんな保証契約を結んでいるか分からなくなっている…
・店舗、工場ビジネスで常に出店・拡大融資のニーズがあるが、借りるたびに保証額が膨らむのが負担…
・金融機関に保証を解除してほしいと話したが、何となく話のなかで断られてしまった…

 
など、経営者保証に関する悩みは、じわじわ経営のあらゆる側面に影響を及ぼします。
 
「お世話になっている金融機関とは良い付き合いを続けたい」しかし、
「経営者保証を外せるものなら外して、大切な企業を今後もスムーズに運営・拡大したい」。
今回は、こうした相反した気持ちを解決するための金融時流と、3大ポイントを紹介します。
 
 

◎既に5年以上前から必須でない経営者保証

 
「経営者保証に関するガイドライン」の初版が金融庁から発行され、はや5年以上が経過しました。
これは中小企業経営者に対する重い保証負担の状況を鑑み、一定水準や要件を満たすことを条件に、
積極的に無保証での融資を検討することを制定したガイドラインであり、
度々ニュースでも取り沙汰されたものです。
20年以上のデフレ経済の下「担保・保証主義」だと言われ続けた金融業界に対して一石を投じた画期的なものであり、
施行当時は多くの会社が取引銀行へ保証解除の申し出を行ったと聞いています。
 
一方、5年以上たった現在でも、期間当たりの新規融資に対する「経営者保証なし」の融資割合は、
半分どころか30%にも満たない状況が継続している事実も依然として存在します。
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20190128/01.pdf
出展:金融庁HP平成31年1月28日発表「民間金融機関における『経営者保証に関するガイドライン』の活用実績」(平成30年4月~平成30年9月末)
 
企業の財務は千差万別、もちろん個別事情が存在するとはいえ、
実は経営者保証なしで融資を受けられる経営者が、今も10人に2人の割合でしかいない
金融機関の絶対的な上級組織として存在する金融庁のPRをもってしても、
なぜここまで施策が前に進まないのでしょう。
実はその裏にこそ「自社で知るべき3大ポイント」が隠されているのです。
 
 

◎個人保証解除への3ステップ

 
実は、前述の経営者保証に関するガイドラインの前提には
「(1)中小企業が経営者保証を提供することなく資金調達を希望する場合に
という文言が付与されており、こうした一連の施策が、まずは自社から取引金融機関に相談を持ち掛けるべきものだと示されています。
 
【ステップ1】個人保証解除案件は、自社からの打診で第1歩が始まる。
 
しかし、いくら自社で主張を繰り返したところで、金融機関のロジックに沿う情報提供や、
財務内容でないことには、せっかくの第1歩は水泡に帰してしまいます。
そこで次に必要となってくるのが、自社決算の必要部分のディスクローズや、
その開示を継続するというガラス張りの経営姿勢です。
 
◎Check!
□自己資本比率、資本効率、インタレスト・カバレッジレシオは一定水準を超えているか?
□試算表は、毎月タイムリーに金融機関に提出できるか?
□毎月、試算表の「中身」がどうしてこの数字になっているのか、展望も含めて金融機関へ説明しているか?
 
【ステップ2】個人保証解除の可否は、自社の決算内容を深く知ることで決まる。
 
【ステップ3】個人保証解除案件は、情報開示のレベルが高いと大きく前に進む。
 
自社はこれらのチェック項目やステップを、どの程度のスピード感で達成できるでしょうか。
あるいは、何を改善すればこのステップを踏むことができるでしょうか。
自社を知り、適切な発信を行うことこそが、今後融資を拡大したとしても、
経営者保証なしで取引できる最速の手段なのです。
 
 

◎明日の資金調達を有利に継続するために

 
今回は、金融機関からの融資を受ける際に話題に上がってくる「経営者保証」なく、
融資取引を継続して、出店や業績拡大を継続するための3大ポイントに関してご紹介しました。
 
金融機関からお金を借りる、という行為は業績を拡大するための「手段」に過ぎません。
しかし、手段をうまく使えないがために「本質」である業績の拡大につなげないのは、あまりに残念です。
 
いかに「手段(財務)」を高速化し、
「業績を伸ばす・拡大し続ける」という「本質」をじっくりと手掛けるか。

 
今回の記事が、少しでも今後の経営のお役に立つことを願っております。

無料経営相談
【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

船井総研の財務コンサルティングは、企業の業績アップを「資金と管理面」からバックアップする実行型コンサルティングです。
財務指標をただ算出してその上下を評価するのではなく、それらの指標をどのように経営判断、投資判断材料とするのか、持続的な成長を支える為に必要な資金調達額を最大にするための施策を検討、実行します。
攻めの投資を実現する際に最も大切なことは、その1期のみ最大の成果を出せることではなく、持続的に最大限の成長を継続することです。
それを資金面から実現する戦略をデザインします。

flag人気の記事
gradeオススメの記事
中小企業が次々と資金繰り改善に成功した究極の資金繰り改善策
expand_less