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財務戦略とは?策定のポイントや知っておきたい分析手法について解説!

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専門の部署を置かず、経営者や経理担当者が財務に関する業務を行っている企業は数多くあります。しかし実際は、財務戦略がどのようなものであり、どのように策定するのかも分からずに行っているということはないでしょうか。財務戦略を策定するには、ポイントを押さえつつ、企業の状況をしっかり分析する必要があります。ここでは、財務戦略を策定する際のポイントや知っておきたい分析手法を説明します



1.「財務戦略」ってどんなもの?

経営者が直面するものの最も他人には共感されにくい業務はお金に関する業務ではないでしょうか。世の中にはそれらにかかわる書籍や、資料はあるものの、結局何をしたらいいのか?とシンプルにわかりやすいものは意外に多くはない印象があります。当記事上にもあるように特に重要なのが「会計」「経理」「財務」というものであることはわかってはいるものの、「一言でいうと?」と問われて端的に回答できる方は意外と多くありません。以下、それぞれをシンプルに説明していきます。

 

1-1.「財務戦略」が表すもの

財務とは、企業のお金の流れを管理したり、資金を調達したりする業務を意味します。企業を円滑に経営するためには、資金が必要です。その資金は、必要な部署に無駄なく行き渡るように気を配らなくてはいけません。

そのためには、取引先への支払いを遅らせたり集金を早めたりすることが必要な場面もあります。もちろん、在庫の見直しや仕入れの調整も必要でしょう。人件費を削減したり残業代を見直したりも行います。そのようにして、企業のお金が不足しないようにするのです。

必要ならば金融機関から融資を受けたり、株式を発行したりして必要な資金を調達することもあります。逆に、投資先を選定して資産運用を行うことも財務の重要な業務です。そのため、どのような業務を行うかは、企業の状況によって異なります。

一方、戦略とは、局所的な状況での戦い方を意味する戦術と違って、大局的な視点に立った計画を意味します。企業においては、中期的または長期的に取り組む計画が戦略です。つまり、財務戦略とは、企業全体に関わる財務についての、中長期的に取り組むための計画を立てることを意味します。

資金調達や資産運用についての中長期的な方針や計画も、財務戦略の重要な要素です。財務戦略に基づき事業計画を立てることで、社内に対しても社外に対しても、効果的なアプローチが可能になります。

事業計画を立て、実行することで、企業の経済状況は明らかになるのです。その結果、どの部門、どの商品の利益率が高いのか、また、収益性の高い会社にするためにはどうすればよいかなどを、経営陣に提案することができるようになります。銀行などから資金を調達する際にも、事業計画があると速やかに行うことができるでしょう。いつ頃、どのような手段で資金を調達すればよいかを、あらかじめ考え抜いているからです。

企業にとって、もっとも効率的な方法とタイミングで、資金調達をすることができます。財務戦略に沿って資金の管理や調達を行うことで、適切な財務の運営が可能になるのです。

 

1-2.経営戦略と財務戦略の違い

企業の目的とは、「利益を出すこと」ということができるでしょう。経営戦略とは、その目的のためにどのような行動をとるのかを検討し、具体的な方法をまとめたものです。経営戦略を遂行し、利益につなげるためには、お金の流れをしっかりと管理しなくてはなりません。

新たに事業を立ち上げたり設備投資をしたりすることが経営戦略に含まれているなら、社外から資金を調達しなければいけない場面もあるでしょう。企業は、経営戦略を実行するために、財務機能を強化する必要もあるのです。経営計画において重要な財務機能を適切に運用するために、財務戦略が必要となります。

例えば、新しく店舗を開店することが経営戦略としては正しくても、財務戦略としては正しくない場合もあるでしょう。つまり、経営戦略と財務戦略は、別のものなのです。ただし、財務戦略は、経営戦略の内容を前提にして練る必要があります。はじめに経営戦略があり、そのためにあるのが財務戦略です。

2.財務戦略を練るときに意識したいポイント

ここでは、財務戦略を練るときに意識したいポイントについて説明します。

 

2-1.財務状況

企業を経営していくなかで、新しい事業を始めたり設備投資をしたりなど、さまざまな場面で資金調達が必要になります。財務において、資金調達は重要な業務のひとつです。しかし、資金調達をスムーズに行うためには、企業の財務状況を良好に保つ必要があります。

なぜなら、財務状況の良し悪しは、金融機関の信用格付に影響するからです。
信用格付けとは、金融機関から、国や企業の発行する債券の信用力や元利金の支払い能力の安全性などを総合的に分析しランク付けしたもので、アルファベットなど分かりやすい記号で示されることを言います。
資金調達の実現の可能性を考慮することなしに、具体的な財務戦略を立てることは難しいでしょう。そのため、財務戦略を策定する前に、現在の財務状況をしっかりと把握しなければならないのです。財務状況を確認するためには、さまざまな財務分析の手法を活用します。なお、具体的な手法については次の段落で説明します。

 

2-2.企業を取り巻く環境

企業の経営状態には、世界の経済情勢や市場の動向、世の中の需要の変化、さらに、競合の存在など、さまざまな経済環境が大きく影響します。そのため、財務戦略の策定の際にも、このような経済環境を考慮する必要があるのです。場合によっては、人材不足やノウハウ不足など、社内の状況が経営に影響する場合もあるでしょう。

そのため、例えば設備投資を行う時期についても、経済環境の流れや社内の状況を意識してタイミングを決める必要があるのです。それぞれの企業によって何に大きく影響を受けるかは異なります。財務戦略を練るときは、状況を冷静に見極めることが大切です。

 

2-3.経営陣の意向

企業の経営方針は経営陣が決定しますが、世の中には安定を好む保守的な経営陣もいれば、常に挑戦したいと考える革新的な経営陣もいます。経営に関する考え方や戦略には、企業によってそれぞれ違いがあるのです。

しかし、財務戦略は経営陣が練る経営戦略に基づかなくてはいけないので、経営陣の意向をきちんと把握する必要があります。例えば、経営陣が保守的である場合は、経済環境の変化に対応しつつも、収益を維持することに重きを置かなくてはなりません。逆に、経営陣が革新的であれば、多少のリスクがある選択を財務戦略に盛り込まなくてはならないケースもあります。ただし、状況を冷静に見て助言をすることも重要です。

3.財務戦略を立てるために必要な財務分析

財務戦略を立てるためには財務分析が必要です。ここでは、財務分析の手法を5つ紹介します。

 

3-1.収益性分析

企業の目的は利益を上げることです。十分な利益を出すことができている企業は財務状況が健全であり、継続して事業を運営していくことが可能であるといえるでしょう。企業がどれくらいの利益を出しているかを把握するためには、収益性分析を用います。

ただし、収益性分析では企業が稼いだ利益の具体的な金額を見るのではない点に注意が必要です。財務分析では、売上に対してどれくらいの利益があったかや、資本に対してどのくらいの利益があるのかなど、パーセンテージで比較します。単純な金額だけでは規模の違う同業他社と比較することができないからです。

収益性分析には2種類あります。売上と利益の関係や費用と利益の関係を見る取引収益性と、資本をどれだけ効率よく活用して利益にすることができているかを判断する資本収益性です。取引収益性では売上高総利益率、いわゆる粗利率や、売上高営業利益率を指標として用います。

売上高総利益率は企業の売上高に対する売上総利益の比率を、パーセンテージによって表した数字です。売上高総利益率では、企業の大まかな利益率を調べることができます。売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の比率をパーセンテージで表した指標です。売上高営業利益率を計算すると、企業の営業活動や販売活動の効率性を知ることが可能です。

一方、資本収益性の指標としては、総資本経常利益率や自己資本当期利益率などがあります。総資本経常利益率では、会社が利益を上げるためにどれだけ資本を効率的に活用したかを知ることが可能です。この場合の資本には、銀行からの融資や店舗、工場なども含みます。総資本経常利益率は、ROA(Return On Assets・リターンオンアセット)と呼ばれることもあります。自己資本当期利益率は、ROE(Return On Equity・リターンオンエクイティ)とも呼ばれる指標です。こちらの指標は、企業が株主の資本をどのくらい効率的に活用したかを表します。

 

3-2.安全性分析

安全性分析では、企業が保有するお金の状況を考慮して、借り入れをした場合の返済能力を分析します。この分析によって、企業の経営状態が安全かどうか分かるのです。安全性分析の結果がよくない場合は返済能力が低いと判断され、銀行からの融資が受けにくくなるでしょう。

賃借対照表を用いてある時点での収支のバランスをチェックするストック分析は、代表的な安全性分析の手法です。他には、キャッシュフロー計算書を使用してお金の流れを確認するフロー分析も、安全性分析のひとつとしてよく用いられます。

安全性分析にはさまざまな指標が使用されますが、よく使われるのは流動比率や自己資本比率、固定比率、当座比率などです。流動比率は、企業が1年以内に返済できる能力を表します。流動比率が小さい企業は、短期的な支払いが多いということです。

そのため、流動比率が高い企業ほど、財務的な安全性は高いと判断されます。自己資本比率は、総資本における自己資本の比率を表した指標です。この指標によって、その企業が自己資本によって資金を調達しているのか銀行からの融資などの他人資本によっているのかが分かります。自己資本比率が高ければ、安定した経営をしていると判断することができます。

固定比率は、自己資本のうちの固定資産の割合です。この数値は、低いほどよいと判断されます。当座比率は、流動負債に対する当座資産の割合です。短期間での返済能力を表し、数値が高いほど返済力があるとされます。

 

3-3.活動性分析

企業の資産がどの程度活用され、それがどのくらい売上につながっているのかを分析するのが活動性分析です。この分析によって、企業の活動が活発かどうか分かります。例えば、活動性分析を用いると、資産のバランスをチェックすることで、余分な資産はないか、無駄になっている資産はないかを判断できるのです。資産が余っている場合は、企業の活動は活発ではないといえます。活動性分析では、在庫の回転率や売上債権の回収状況、さらに、設備投資が適正かどうかも検討することが可能です。

活動性分析でよく用いられる指標には、総資本回転率や固定資産回転率、在庫回転率、さらに、売上債権回転率などがあります。総資本回転率は、資本を効率的に活用できているかを表す指標です。この数値が高いほど、少ない資本で大きな売上を上げることができていると判断できます。

固定資産回転率は、固定資産が活用されているかを確認する指標です。設備投資が適正であるかどうかも、この指標で分かります。在庫回転率は、棚卸資産回転率と呼ばれることもある指標です。在庫の量が適切であるかを判断するための指標ですが、どの程度の数値が適正であるかは業種によって変わります。売上債権回転率は、どれくらい売上債権を回収できているかが分かる指標です。回転率が高いほうが、回収できています。

 

3-4.生産性分析

企業の経営資源は、設備や資金だけではありません。企業で働く従業員も、その企業の経営資源に含まれます。従業員も含めた企業の経営資源が、売上や価値の創出にどの程度貢献しているかを判断する指標が、生産性分析です。生産性分析で用いる指標は、基本的には数値が高いほどよいとされます。指標が示す数値が高ければ生産性が高く、経営資源を効率的に活用できていると判断できるのです。主な指標としては資本生産性、労働生産性、労働分配率などがあります。

資本生産性は資本に対する付加価値を金額で表したものです。数値が高いほど、より多くの付加価値をプラスしたと判断できます。労働生産性は、社員一人あたりの売上総利益を金額で表したもので、一般的には高いほど生産性はよいです。労働生産性が同じである場合、従業員の数が少ないほど一人あたり多くの付加価値を生み出したことになります。労働分配率は、付加価値に対する人件費の割合で、人件費が適正であるかを判断する指標です。人件費には社会保険料なども含みます。労働分配率は一般的に低いほうがよいと判断されますが、どの程度が適正であるかは業種によって異なります。

 

3-5.成長性分析

成長性分析では、企業がどのくらい成長したのかを表します。分析には企業の過去の状況と現在の状況を数値で比較しますが、分析の結果によって企業の未来の成長について、予測を立てることもできるのです。

主な指標としては売上高増加率や利益増加率、総資産増加率、そして、従業員増加率などがあります。とはいえ、企業には成長期もあれば成熟期もあるのが一般的でしょう。企業が迎えている局面によって、望ましい増加率は変わってくるのです。そのため、成長性分析においては企業独自の事情も加味しながら、利益や売上などがどのくらい向上したのか検討することが大切になります。

経営戦略に即した財務戦略を立てよう
企業が成長するためには、財務戦略が欠かせません。財務戦略は、資金を調達したり資産を運用したり管理するのに必要なものだからです。まずは財務分析を行い、企業の財務状況を正確に把握する必要があります。そのうえで、ポイントを意識して財務戦略を練る必要があるのです。企業の経営戦略に即した財務戦略を立てましょう。



 

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