財務・会計・経理の違いを徹底解説!
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企業の全体像を把握する際に大切なことは、大きく分けると2つあります。実際に運営する立地や規模、人などの「現場」の情報。そしてもう一つは、それらの活動の結果が現れる「数字」の情報です。どちらの情報も収集すること、そしてそれをどう使うか?ということが会社運営において重要な内容となります。
後者の「数字」の情報を使って、自社が置かれている状況を把握するために、会計・経理・財務というものは非常に重要な役割を担っています。これらのことは、数字の中でもとりわけお金にかかわる業務に密接に結びついていることもあり、現状をしっかり把握するためには必要不可欠です。そこで、この記事では会計・経理・財務におけるそれぞれの違いについて解説していきます。
目次
1. 企業のお金に関わる業務の重要性
当然のことですが、企業は利益を出すために活動しています。社会に貢献するという使命を持っている点ではボランティアやNPO団体の活動と同様というようにもとることが可能ですが、営利目的という点で大きく異なるのです。しかし、毎日のように取引を繰り返していると、どれだけお客様からお金を受け取り、どれだけ取引先にお金を渡したかの整理が難しくなり、現時点で儲かっているかどうかが分からなくなってしまうでしょう。利益が出ているかどうかを把握するためには、お金の流れや状況を細かく把握することが近道です。
企業が活動を続けるためには、さまざまな経費を支払わなくてはいけません。飲食店や製造業などでは材料を仕入れるための費用がかかりますし、マッサージ店や美容室などのサービス業であっても水道光熱費や人件費はかかるでしょう。お金の流れを把握し、利益が出ているかどうかをチェックするためには、売上だけでなくそういった支出も含めて、すべてを正確に記録しなければいけません。
正しく利益を計算するためには毎日の帳簿付けが必要ですし、その為のルールや資金の支払い、管理。その他にも、いつ、いくら税金を支払えばいいのか?そして業績を上げるためには、どんな指標を追いかければいいのか?これらの理解を進めることで初めて経営についての適切な意思決定が可能になってきます。そういった意思決定、経営判断における材料となる業務として、主に「会計」「経理」「財務」があり、それぞれが重要な役割を果たしています。
2. 会計の業務
企業のお金にかかわる業務は主に3つありますが、まずは会計について説明していきます。会計はどのような業務で、どのような特徴があるのでしょうか。
2-1.会計とは?
会計業務は、基本的に「お金と品物のやり取りや出入りについて記録すること」を意味します。つまり、会計は企業のお金全体の流れを把握するために必要な業務です。売り上げはもちろん、経費の支出についても記帳していかなければいけませんので、一般的には規模の大きい企業ほど会計業務の仕事量も増えていきます。また、仕訳方法には一定のルールがあるため、税務上の知識が必要になるケースも多いです。普段行っていないような取引がある場合には、税理士などの専門家の力を借りることも検討したほうがよいでしょう。
企業の会計は、「財務会計」と「管理会計」の2つに分けられます。財務会計とは、企業の営業活動の成果を財務諸表にまとめて、利害関係者に開示することを目的にした会計方法です。対象となる利害関係者は株主や融資を受けている銀行といった外部の人間になるため、一定のフォーマットに従った書類を作成する必要があります。一方、管理会計は、企業自身が経営状態を把握するためのものであり、経営方針を決めるために重要な資料となる会計方法です。対象となるのは社長や役員といった社内の人間になるケースが多いため特定のフォーマットは存在せず、必要な情報を取捨選択して臨機応変に書類を作成する能力が必要になります。
2-2.会計の業務内容
会計はお金の流れをすべて記録して、まとめることが主な業務です。最終的な目標としては、財務会計と管理会計のそれぞれにおいて、決算書を作成することになります。そのためには、日々のお金の流れについての記録をとっておかなければいけません。たとえば、「備品を購入した」「税金を支払った」といったことがあれば、その都度仕訳をしておく必要があります。また、当然のことながら「商品が売れた」「金利収入があった」というような、企業にとって利益になる事象が発生したときにも仕訳を行わなければいけません。
そのため、取引履歴の多い企業ほど、経理業務は膨大になっていきます。万が一、1円でも間違った仕訳をしてしまうと、その後の数字がすべて変わってきてしまうので、細心の注意が必要な業務です。なお、日々のお金の流れを把握する業務は「経理」として扱われるのが一般的です。会計は経理の仕事を含むお金の管理全般を指す言葉だと考えておきましょう。
2-3.会計の業務の流れ(経理業務)
会計は、すべての部署が行う毎日の業務で発生する細かいお金の出し入れの流れについて記録を取る仕事です。毎日の取引記録の結果を、「月次業務」と「期末業務」で取りまとめていきます。月次業務は基本的に月ごとに行われた取引結果をまとめる業務です。月締めの請求書を発行したり、売掛金が入金されているかどうかを確認したりします。万が一入金が確認できない業務があれば、担当者に確認したうえで未収金などに振替作業を行ったりする仕事もこなさなければいけません。すべての数字について確認がとれて、間違いないことが判明した場合には月次決算書を作成して社長や役員などに報告します。
期末業務は、年に一度の決算のための処理を行う業務です。基本的には月次決算の数字を加算していくだけですが、万が一月次決算の段階で誤った数字があると、ミスの原因を探すのに大変な労力を要することもあります。また、期末業務では月次決算ではない会計処理が必要になるケースも多いです。たとえば、「未払金や未収金の処理」「減価償却費の計上」などが挙げられます。決算処理ならではの処理も多いため、注意しましょう。決算書類を無事に作成できたら税務署へ税務申告をし、適正な所得税を納めることになります。なお、企業によっては期末決算だけでなく、中間決算や四半期決算を行う場合もあります。
3. 経理の業務
企業のお金にかかわる3つの業務のうち、次は経理について説明していきます。経理の仕事は非常に細かいものですが、企業経営を行ううえでなくてはならないものなので、詳細について知っておきましょう。
3-1.経理とは?
世間的には企業のお金にかかわるさまざまな作業を、「経理」という名称で呼ぶことが多いですが、実は経理という名称は「経営管理」の略称です。具体的な業務としては、請求や支払い業務、帳簿への記帳、伝票作成など、日々の細かい作業のそれぞれが含まれています。お金にかかわる作業のほとんどは経理を通していると考えて問題ないでしょう。反対にいうと、お金の出し入れを認可する部署を経理に一本化することで、お金の流れを把握しやすくしているといえます。
また、経理はそれ以外にも、貸借対照表の作成や損益計算書などの決算書を作成するのも仕事のひとつです。スムーズに業務を進めるためには、日々のお金の流れを把握するのはもちろん、各部署とのコミュニケーションも大切になってきます。なお、決算書の作成までは経理の仕事ですが、企業によっては経理課が設けられていて、会計と経理の両方を担当しているケースもよくあります。
3-2.経理の業務内容
経理では日々のお金の動きを把握する必要があるため、さまざまな細かい業務を担当しているのが特徴です。たとえば、仕入れに関する管理であれば、「買掛金の記録や清算、伝票整理、在庫管理など」が挙げられます。一方、売上に関する管理では「受発注の管理、売掛金の記録や清算、伝票作成・請求書の発行など」です。そのほかにも、現金や預金の管理では「経費精算、入出金管理、預金残高の確認など」も業務として含まれており、企業活動を行っていくためには必須な仕事ばかりだといえます。
また、お金に関する業務全般を担当するケースも多く、給与計算や税金の計算および納入が仕事に含まれることも珍しくありません。経理の仕事は営業活動のような目に見える数字で評価される業務ではないため、モチベーションアップが難しいと感じる担当者もいます。しかし、経理によって作成される貸借対照表や損益計算書は会社の現況を把握し、将来的な事業計画を検討するためにも必要不可欠な資料です。日ごろの支払い業務を担当しているという点も含めて、縁の下の力持ち的な存在として大切な業務だといえます。
3-3.経理の業務の流れ
経理は日々発生するお金の動きについて記録したり、実際に入出金の手続きを行ったりする日次業務の積み重ねになります。日次業務は細かい仕事の連続ですが、おろそかにすると企業活動全体に悪影響が出てしまう恐れがあるため、慎重に行わなければいけません。日次業務を進める一方で、毎月の月次業務も並行して行うケースが多いです。月次業務の行い方は各企業によって異なりますが、月の前半と後半で行う処理を分けていることがよくあります。たとえば、前半は取引先からの入金確認や前月の月次決算書の作成を行い、後半は給与計算や請求書発行を行うといった具合です。
一年間の業務の流れについては、各企業によって決算時期は異なるので一概にはいえません。たとえば3月決算の企業の場合を例にしてみると、4~5月に決算書類を作成し、6月や11月には賞与計算を行って振り込み処理も行います。12月ごろから従業員に調書を配って、その結果をもとに1月には年末調整を行い、2~3月には決算の準備を始めるという流れです。
4. 財務の業務
企業のお金にかかわる業務のうち、最後に財務について説明します。会計と経理には重複する部分もありましたが、財務は基本的にそのほかの業務と重複する部分はあまりありません。いったい、どのような特徴があるのでしょうか。
4-1.財務とは?
企業には経理課のほかに財務課を作り、独立して業務を行っているケースも多くみられます。なぜかというと、財務課と会計および経理には大きな違いがあるからです。会計や経理は、基本的に日々の取引を記録し、それを取りまとめて社内外のさまざまな利害関係者に説明する業務でした。しかし、財務は経理によって作成された財務諸表=データをもとに資金計画を立てて、実際に資金を調達し運用していくのが主な仕事です。つまり、会計や経理が現状を把握するために有効な業務であるのに対して、財務は現状を把握したうえで具体的な行動に移していく段階だといえます。
また、財務の仕事は単に資金調達を行うだけではなく、企業全体の予算を管理して企業の資産が適切に扱われるようにするための調整も含まれます。必要に応じて不要な事業の予算は削減するなど、企業経営を中長期的な目線で考えて実行することも大切です。これらのことから、財務は経営の根幹にかかわる部署であり、担当者は企業経営全般に関する知識も求められるといえます。
4-2.財務の業務内容
財務の主な業務内容は「資金調達」「財務計画」「予算管理」の3つです。資金調達では、融資をしてくれそうな銀行や投資家と交渉することが主な役割となります。融資を受けるためには、相手の担当者を納得させるための材料が必要です。具体的には、財務会計が作成した財務諸表などの資料をもとにして、客観的に信用のおける会社であることを伝えていくとよいでしょう。また、融資を受けるだけではなく、状況によっては社債や株式の発行を行い、不特定多数の人から資金提供を受ける方法を検討する必要もあります。
財務計画は、「人員計画」「資金計画」「販売計画」といったさまざまな社内の計画を考慮しながら、資金計画を立てる業務です。中長期的な目線で考えることがポイントで、必要に応じて設備投資やM&Aについて検討するのも選択肢に入れておくとよいでしょう。予算管理は、財務によって確保した資金をどのように活用していくかを検討し、それに合わせて予算を管理する業務です。適切なバランスを取らなければならず、場合によっては予算を削減する部署についても社内で調整しなければならないでしょう。財務は業務内容が経営全体に直結するため、中小企業においては経営者が業務を担っているケースもよくあります。
4-3.財務の業務の流れ
財務の業務における最大の特徴は、会計や経理のように明確に月次業務や年次業務が決まっているわけではない点です。月次業務や年次業務は決算書類を作成するために必要な業務ですが、財務はそれらの書類を作成する業務ではないことが理由だといえます。財務の業務には資金調達や予算管理などがありましたが、どのような業務が必要かは企業の状況によって異なります。たとえば、資金が潤沢にあって資金調達を行う必要のない企業は、財務計画や予算管理がメインの仕事になるでしょう。一方で、新規の事業計画を立ち上げるために、資金が必要な場合は資金調達がメインの仕事になるはずです。
しかし、いずれの場合も基本的には経理によって作成された財務諸表をもとに検討を行い、必要なアクションを実行していくという点は共通しています。なお、一定の条件を満たす企業は決算期に合わせて監査を受けなくてはいけません。その際には、会計や経理ではなく、財務の担当者が対応するのが一般的だというのは覚えておくとよいでしょう。
5. 会計・経理・財務の違いを比較!
会計と経理、財務の違いはまず日ごろのお金の流れを記録する業務が含まれるかどうかで異なります。会計と経理は日々のお金のやりとりを把握しなければいけませんが、財務はその必要はありません。また、経理は実際のお金のやりとりを担うこともある一方で、外部や社内への利害関係者への説明資料の作成に携わることはあまりないです。それに対して、会計は企業のお金の全体像を把握することを目的としており、概念としては経理の仕事を含んでいます。実際に経理課が会計を担当している企業も多いです。
財務については、経理が作成した財務諸表をもとに資金調達の準備や交渉を行う仕事が主な業務になります。時系列的には経理や会計の仕事が先になり、財務の仕事はその後でないと行えません。会計や経理が作成した正しい資料をもとに、今後の事業戦略を考えていく業務だと考えればよいでしょう。
会計・経理・財務の違いを押さえて企業運営を行おう
会計・経理・財務にはそれぞれ明確に違う部分があります。特に会計と経理については重複する部分もあるので、混同しないように気を付けなければいけません。健全で戦略的な経営を行っていくためには、それぞれの役割をきちんと把握しておくことが必要不可欠です。会計・経理・財務の違いを押さえてスムーズな企業運営を行っていきましょう。