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財務の基礎知識

事例から読み解く「決算対策」~勝てる会社の対策はココが違う~

唐突ですが、皆様は「決算対策」というワードを聞いて、どんな行動を連想するでしょう。

たとえば

・決算期前に古くなった備品を買い替えたり、営業車を購入すること

・決算賞与を出して、従業員の方々に利益を一部還元すること

・各種引当金を繰入して、費用に含めること

といった、節税・利益調整のことを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。企業は会計上の当期純利益が黒字であれば、原則その一部を法人税等として国に支払いしなければならないため「それならば認められる範囲で利益額を調整し、自社設備や従業員の方に利益を還元し、自社に貢献する形でお金を使いたい」と考え決算対策を行う…という行動は、自然なことかと思います。また、節税の意味合いで決算対策を行うことで、広義には直近の資金繰りにもプラスに働き、経営の安定性を高めるとも言えるかもしれません。

(※もちろん、当該対策はプロの税理士先生との打ち合わせのもと、税務署の許容する範囲で行わなければ、違法となる可能性があります。我々無資格のコンサルタントも、こうした操作をアドバイスすることは、一切許されないことです)


ところで、皆様は税務署と同じくらい、自社決算書の中身を精査している「ある組織」の存在を、忘れてはいませんでしょうか。そう、節税同様に企業の資金繰りを安定させ、多くの場合次の投資戦略を描くためには欠かせない、取引金融機関の存在です。

都銀・地銀・信金・信組…国内には多数の金融機関が存在していますが、どの金融機関と融資取引をするにあたっても、決算書は提出義務があり、金融機関はその内容を基に融資金額・金利・期間を決める仕組みになっています。

すなわち、税務署に出す決算書が正しく・十分評価されることはもちろん、同じ決算を金融機関に提出した際、正しく・十分な評価を得られるかどうかは、しっかり把握する=決算対策する必要がある、と言えるでしょう。

今回は、我々コンサルタントが200以上のご支援先の現場で見てきたケースを基に、金融機関と正しく、長期的に付き合うために必要な決算対策とは何かについて、考えたいと思います。


目次



1.前提:税務署と金融機関の決算の見方の「大原則」とは

自社の決算書を精査している2大組織、税務署(国家機関)と金融機関では、そもそも決算書のどこを確認することに、重きをおいているのでしょうか。まずは2つの組織の目線を知ることにより、今後自社が取るべき決算対策の「土台」となる考え方を確認しましょう。

【図1】税務署・金融機関が考えるはずの「大原則」



【図1】をご覧ください。税務署・金融機関は共に企業から提出された決算書を根拠に各種目的を果たそうと動きますが、決算書を「何の」根拠に使おうとしているのかが異なるために、調査項目が全く異なることが見て取れます。

たとえば、税務署は仮に決算に計上された利益が過少計上だった場合、本来支払いされるべき法人税等を適切に徴収することができないため「果たして売上は適切にルールに従って計上されたのか」「費用は過大ではなく、計上されるべきものが計上されたか」という内容を隅々まで精査し、納税の根拠が適切であれば申告完了通知を発行するはずです。

一方で一部の政府系金融機関を除けば、金融機関は預金・融資・為替の三大業務を基盤に間接金融を行うことで、金利その他の収益をあげなければならない営利企業です。もちろん、納税を正しく実施しない違法な企業は論外として、顧客に求める最重要項目は「間接金融により融資を行った際、果たしてそのお金は予定通りに返済されるのか」という部分になるはずです。せっかく融資を行い、返済時の金利で儲けようと試みたとしても、融資が焦げ付き返済されない事態が発生すれば、金融機関はリスクだけを背負う事態になり、営利企業としての存続が危うくなってしまいます。

言われてみれば当然のことなのですが、決算書の提出の際、自社はこの2つの目線の双方にとって正しく、魅力的かどうかを把握する必要があり、時にその双方が同時に満たせない場合は、どちらを取捨選択するのが正しいかを吟味する必要があります。


POINT:正しく納税根拠を表現し、返済原資が見える、債務償還力の高い決算になっていますか?



2.失敗事例:小手先のテクニックに頼った社長が陥った末路とは

では、ここからは具体的失敗・成功ケースの両方を見ていきながら、特に金融機関と正しく、長期的に付き合うための決算対策のポイントを考えていきましょう。

・ケース①:小手先で納税を抑えたが、翌年の金融機関からの融資が出にくくなった?

ある企業Aは、売上が10億円の地場住宅販売業者であり、年々増収している成長企業でした。今期は新たに1店舗の出店に成功し、ますます利益が出せる体制にはなってきていましたが、社長は大の「節税好き」。期末に50百万円近い利益が残りそうだと顧問税理士に確認したため、適切な範囲を確認のうえ、期末に自動車その他の設備投資を20百万円実施し、利益圧縮を行いました。

【図2】ある企業Aの決算期損益計算書

いかがでしょう。上記の図を合わせて再確認すると、株式会社Aは本来経常利益(≒企業が本業活動を行うことで得られる、期間あたりの利益)で50百万円近い利益を残せる企業でありながら、社長の節税好きな方針が働き、お尻の利益を20百万円削減して、費用に使ったという事例でした。

社長はこの際、きちんと顧問税理士の先生の意見を聞き、このケースでは適法の範囲内というお墨付きを得ており、法的(税務署的)には過失がないことは明らかです。

しかし、ここで税務署の「正しい会計の企業かどうか」という目線ではなく、金融機関の「返済ができるがどうか」が最優先の目線でもう1度決算(指標)を確認すると、実は節税に使った20百万円の期末投資が、債務償還能力(お金を返す力)にダメージを与えてしまったことが見えてきます。

具体的には【図2】の下部の通り、

①本来は1年間の営業活動で企業の財布に入ってくるはずの、納税後キャッシュ(=キャッシュフロー)が40百万円近くあったのに、期末投資で10百万円以上マイナスになってしまった②結果として、現在の融資380百万円をこの収入(=キャッシュフロー)で返済し続けようと計算すると、理論上「融資完済までに10年以上(プラス5年)もかかる企業」との判定になってしまった


という効果が発生しており、端的に言えば一時期の決算書を見ただけの金融機関からは「返済能力の落ちた企業」という判定を受ける危険性もはらんでしまった、ということです。

「そんな、計算だけの理論値だけで判断する程、金融機関もバカではないだろう」。

その通り、金融機関も決算書を分析するプロであり、何が何でも決算から導かれる数値を優先して融資判断を行うわけではありません。一方で、国やプロの税理士が申告印を押し、完了通知が発行された決算書は、社長の口頭での説明の何倍も有力な情報であり、まず何より決算書から自社が判断されることも事実。あらかじめ金融機関がどんな思想で、自社とどのような付き合い方をすることが好ましいと考えているのかを理解した上で対策を打たねば、あらぬマイナス評価を受けてしまうかもしれません。

実際に過度な節税によって納税を回避し、短期的なキャッシュの猶予を作り続けた企業は、毎期の利益蓄積が表現される貸借対照表の「自己資本」が事業年数対比少なく、端的に言えば「おいおい、業歴がこんなに長いのに、全然今までの利益が企業の内部に留保されていないぞ。儲かっていない企業なのでは?」と疑義をかけられるという長期的ダメージも出てきます。せっかく十分な収益力のある企業にも関わらず、一時のメリットのために今後の事業成長に必要な融資を得られないのでは、本末転倒。十分、バランスを考えた対策が必要です。


POINT:一時の納税猶予と長期的な資金調達、両方を鑑みた対策ができていますか?



3.成功事例:赤字になっても、金融機関に誠実だった社長の「勝てる決算対策」

一方で、仮に何かの理由で利益が出なかった「赤字企業」だったとしても、その原因をきちんと精査し、金融機関向けの決算対策を十分に行った社長は、赤字だったとしてもその後の成長資金を詰まらせることなく、事業の回復に努めることができているというケースも存在します。

・ケース②:災害による赤字が発生!誠実に金融機関と向き合い、翌年の融資でV字回復!

株式会社Bは、先の台風上陸に伴い、社屋の一部が破損してしまい、現状復帰資金として緊急で30百万円もの修繕費が発生してしまい、経常利益が赤字に落ち込んでしまいました。

【図3】ある企業Bの決算期損益計算書赤字という聞こえは企業にとって非常にネガティブなイメージを与えるうえ、誰もが避けたい状況です。納税という観点では繰越欠損などを活用できるため若干の猶予があるものの、やはり企業継続のためには赤字の連続は避けねばならない事態であり、金融機関も同様に赤字を毛嫌いしそうなものです。

しかし株式会社Bは本来、台風という一過性かつ不可避の事態がなければ、上記【図3】の通り十分な黒字を出すことができる企業であり、債務償還能力もあると判断できる企業でした。社長はそこを本質的に理解しており、普段付き合いをしている金融機関に誠実に状況を説明、修繕後に業績は黒字回復していることや、今後の展望を数字ベースで説明することに成功しました。

結果、赤字企業という表面上の記録は残ってしまったものの、成長のための設備投資資金の融資を受けることにも成功し、災害のない今期は再び堅調な黒字企業として運営できているケースです。

前述の通り、金融機関も決算書を分析する際、何が何でも計算結果で物事を考えるわけではありません。株式会社Bの社長のように、返済ができる展望を十分に理解し、決算書をたたき台に説明ができる経営者は、金融機関目線での決算対策ができており、まさに資金調達・その先にある事業成長を実現できる「勝てる社長」と言えるでしょう。

POINT:金融機関に対して、決算書の数値の根拠まで、きちんと対策した上で説明できていますか?



4.短期の利益か、長期の成長か これからの決算対策

今回は、中小企業の「決算対策」というテーマで、短期的な節税の目線だけではなく、決算書を重視しているもう1つの重要な取引先である金融機関の目線も持って、両軸で決算対策を行うことの重要性を、モデルケースを活用して考えました。もちろん、取引している金融機関の規模・地域性、自社の業種特性などに応じて、見るべき指標は千差万別ですので、今回の指標だけに注意した安易な決算対策を行うことは得策ではありません。一方で、最低限抑えるべき指標を抑え、いつでも金融機関と膝を突き合わせて会話でき、資金調達に動ける、あるいは税理士の先生の協力を仰げる体制を作っておくことは大切です。筆者の所属する金融・M&A支援部はそのうち特に「金融機関の目線」という部分にフォーカスし、短期的な目線に終始しない事業継続のための決算対策手法を共に考えていくチームです。もし、何か自社で気になる点が出てきたら、プロの税理士の先生の意見も十分に加味しながら、弊部にもお声がけしてみてください。


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