コンサルタントがわかりやすく説明!
財務の基礎知識

社長が知るべきあらゆる「投資資金」の考え方

「投資なくして、企業の成長なし」。
工場設備のように「設備」という分かりやすい投資対象を持つ企業でも、コンサルティング会社のような無形商材ビジネスで「人材」に投資しなければいけない企業でも、投資を辞めた会社に明るい未来は存在しません。一方、自己資金や金融機関の融資枠にも限界があり、さらに景気の先行き不透明な現在、投資は慎重にならざるを得ない状況が続いています。

(※ご参考)
「建設需要が景気を押し上げ、一部で駆け込みも」
http://www.tdb-di.com/visitors/index.htm
(2019年10月23日現在・TDB景気動向調査(全国)より抜粋)

・設備投資をして業績を伸ばしたいが、数億円規模の融資が必要であり、足踏みしてしまう
・優秀な人材に投資して社内の体制を整えたいが、固定費が増えてしまうのが怖い
・そもそも今の業績でどこまで投資・資金調達することが可能で、どんな手法が取れるのかが分からない

コンサルタントとして、全国の企業経営者の方にお世話になる筆者のところには、よくこうした相談が舞い込んでくるのですが、特に2019年10月以降は消費増税もあり、ますます投資はしにくい環境になってしまいました。今回は上記のような企業のあらゆる「投資資金」について、経営者は何を考え、どんな手段を講じることができるのか、重要な考え方・手法を紹介します。

目次



1.あらゆる投資に使える「収益化マップ」を作ろう

「工場設備の更新のために、〇億円が必要だ」

「来期の新卒採用のために、広告宣伝費等の費用が〇百万円必要となっている」

等、投資を考える上ではその「総額(金額)」に注目が集まりがちですが、金融機関への借入を検討するにしても、自己資金を使うにしても、これでは資金の見通しを立てる上で不確定要素が多すぎます。たとえば

・そもそも現在いくらのお金を保有していて、経営にはどの程度経常的に資金が必要か

・投資金額はいつ、どのタイミングで発生し、それが収益化されるのはいつになるのか

・その投資による効果はいつ頃から、どのように発生するのか

・仮に計画がうまくいかなかった時に耐えられるだけの資金はあるのか、二次的な手段は?


など、よく考えれば気になる要素は山盛りです。そこでまずは、こうしたブラックボックスになっている要素を1つ1つ洗い出し、抜け漏れのない明瞭な1枚のマップにすることから、投資を始めてみてはいかがでしょうか。

言葉だけではわかりにくいので、早速1つの事例を参考に、どのようなものが効果的かを見てみましょう。


【事例】

株式会社Aは、2020年4月に向けて新卒1人の採用を計画している。当該人材は不足している営業マンとして、2ヶ月の営業研修の後、6月から担当先を持たせて現場で活躍してもらう計画を立てている。優秀な人材を確保するためにも、年明けから人材派遣会社への委託費や広告費総額570万円を投下する予定だ。

→以上の人材投資計画を考えた際、金融機関に効果的に説明し、必要投資額の一部を借入するためには、

どのような説明・資料が好ましいだろうか。

金融機関との日々面談をしている経営者の方は、この手の投資でお金を借りるのは非常に難しいのでは?と感じたのではないでしょうか。それもそのはず、今回の事例は「機械」「車両」といった投資効果が見えやすく、融資対象物がはっきりした投資ではなく、不確定要素の多い人材投資です。それだけに検証を行う我々はできる限り様々なシミュレーションを考慮する必要があり、二次的、三次的なプランも考えておく必要があります。事例では、まず下記のような簡易的な「収益化マップ」を作ることからスタートしました。


【表1】株式会社Aの社長が考えた「収益化マップ」

収益化マップ


〇考えた要素

1.2020年1月~5月にかけ、人材採用~育成に合計で570万円の費用がかかる

⇒特に2020年1月には人材派遣会社に支払いする費用が200万円発生するため、単月の資金赤字が出る

2.2020年3月には、金融機関の借入がないと繰越現預金残高がマイナスになってしまう

⇒つまり、2020年3月には遅くとも借入をしておきたい。借入期間は仮に7年間の毎月返済と考える。

3.新卒社員は、入社2ヶ月は研修のため収益を生まないが、6月からは前任者の引継ぎで案件を1つ担当し、毎月見込める顧客からの収益が30万円ある予定

⇒一方で金融機関への返済と、新卒社員へ支払いする給料が新たな固定費として発生する


〇この表から読み取れること

投下投資金額 :570万円

今期回収見込 :210万円(=まだ、投資金額全額を回収できない)

金融機関借入 :500万円(=70万円は自己資金で賄う)

期間当たり返済: 54万円(=今期回収する収益のなかから返済できる)


いかかでしょうか。株式会社Aは、1つの投資を「投資~回収」までのストーリーと考え、時系列で表現をしたことで、隔月の資金収支と月末残高が見えやすい表を作りました。金融機関への明瞭な説明はもちろん、そもそも投資が正しいのかどうかという判断がしやすくなっています。

たとえば事例では「この表から読み取れること」の通り、1年間で投資金額の40%弱は回収が見込めるものの、すぐに新卒が辞めてしまったら投資が「おじゃん」になってしまうことが分かります。一方、500万円を期間7年の返済条件で借入できれば、2020年6月からは新卒が毎月稼いでくれる30万円の収益のなかから十分返済原資を賄えることも読み取れました。何となく570万円が必要だと述べるだけではなく、これなら十分に金融機関相手でも理解を得られそうです。さらに「この表の各要素がたしからしいかどうか」たとえば、

・新卒がそもそも6月から十分に担当先を持ち、毎月30万円を稼ぎ出せるのか

・新卒が退職してしまい、投下金額が回収不能になることはないのか

・金融機関からの資金調達が7年ではなく、5年返済になってしまっても資金繰りは耐えられるか

・市場価格が吊り上がり、そもそもの投資金額が600万円以上になる可能性はないか

・30万円の月額費用を支払いしていた企業が、値下げを打診してくる可能性はないのか

・そもそも、繰越できる現預金に間違いはないのか

といった不確定要素の検証を行い、根拠となる情報を付与すれば、収益化マップはますます有効な資料として活用できるでしょう。

投資はまず収益化マップから。投資の入り口から出口までの1つの流れを可視化し、自社内でも対金融機関とも膝を突き合わせて検証できるこのマップを埋めることが、まずは投資成功の第1ステップです。



2.投資資金の事業計画は収益化マップから踏み込め

簡単な「収益化マップ」を書くことさえできれば、投資への不安はだいぶ和らぎ、仮に金融機関から資金調達を行う場合も、根拠資料としてマップが活躍してくれる可能性は高いでしょう。しかし、投資金額が億単位に上る場合、あるいは投資~回収までのストーリーが年単位に及ぶような「大規模投資」の場合は、金融機関からの協力が不可欠になり、より精緻な事業計画(根拠の説明)を求められるケースも発生します。投資回収と言っても、その回収原資が日々の商売で発生する入金(営業収入)から生まれる場合もあれば、追加的に生まれる収益(営業収益)の場合もあり、収益化マップで語れない要素が次々出てくるでしょう。

「事業計画って言ったって、簿記も持っていないし決算書もいまいち理解できないし…」

と焦ってしまうかもしれませんが、心配無用です。この場合もまずは、作った収益化マップを頼りに、金融機関が欲しい情報を考えて、もう少し踏み込んだ分析をしてみましょう。


【表2】図1の収益化マップから踏み込むと

キャッシュフロー

ここでもう1度原則の確認ですが「投資・借入」において何よりも重要なのは、投下資金に対して十分な回収(リターン・返済原資)が得られるかどうかという点です。ということは、金融機関が求めているのは一見会計知識をふんだんに盛り込んだスマートな事業計画書に見えるものの、本質的には「きちんと投資に対してお金が生み出されるのか」「借入を返済できるだけの要素は整うのか」という部分が見えれば、事業計画として十分事足りるということになります。

そして、実はこの要素は既に【表1】の右端から取り出せるものばかりであり、あとは上記【表2】のように、四則計算を使って決まった指標に「加工」さえできれば、事業計画の検証としてもある一定耐えうるものが完成します。事例の場合は、

・2020年の1年間では新卒社員から210万円の収益力(キャッシュフロー)が生まれる予定であり、

・対する人材投資時に借りたお金の年間元金返済額は54万円で、返済後の手残り収益は154万円となり、

・期末の現預金残高は500万円から446万円に減少するが、黒字であり、

・期末借入残高を返済後の手残り現預金で返済しようと考えると、3年弱かかる返済能力となった

ということが読み取れました。

もちろん切り取る期間や借入から発生する支払利息の考慮、今までの自己資本蓄積、借入に対する依存具合など、まだまだ投資の検証に必要となる変数は存在するものの、ここまで分析が進んでおり、バックアップ策もあるとなれば、金融機関も前向きに投資に協力をしてくれることでしょう。

小難しい会計知識のいる事業計画で頭を悩ませる前に、ひとまずはこうしたシンプル思考・シンプルなアウトプットで頭の中を整理すると、意外に余分な労力を使わず、投資計画を前向きに転がせる可能性も出てくるかもしれません。



3.まとめ:不況時代でも勝つ社長の投資スタイル

今回は先行き不透明なこの世の中でも、企業成長には欠かせないあらゆる投資を不安なく、根拠をもって行うために有効な「収益化マップ」の考え方に関して、事例を用いて紹介してきました。「投資」を考えるのは企業の前向きな未来を考える行為に等しく、考えれば考えるほど夢は膨らんでいきます。財務コンサルタントである筆者も、こうした非常に前向きな投資のお手伝いをする際にはワクワクするものですし、何とか成功に向けてお役に立ちたいと考えます。しかし、勝てる社長はワクワクした気持ちも持ちながら、少し引いた目線で投資資金に関して考えており、そこから生まれるあらゆる不安・不確定要素を解消できるだけの数的根拠を詰める冷静さも兼ね備えています。また、こうした社長の考える計画は、机上の空論に終わらず、現場で起きている実態を反映した、蓋然性の高いものであると同時に、極めてシンプルで、誰でも理解できる内容であることも特徴的です。

貴社は投資の1つ1つに、なんらかの判断基準を設けているでしょうか。シンプルな統一フォームを用いて、「投資資金」を考えることができているでしょうか。もし、まだモヤモヤしている部分があるとのことでしたら、ぜひ今回紹介した収益化マップを使いながら、経営陣や取引金融機関と、じっくりと話し合う機会を設けてみるのも良いかもしれません。


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