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財務の基礎知識

銀行に一度融資を断られた会社がお金を借りることができた2つのコツ

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1.はじめに

「これまで順調に成長を続けてきたが、最近思うように業績が伸びていかない」と感じることはありませんか?成長スピードが鈍化している企業は往々にして金融機関をうまく活用することができておらず、思うように融資を引き出せていません。そのような企業は以下のような特徴があります。〇融資金額を伸ばすために様々な金融機関から融資を受けている〇とにかく貸してくれる金融機関から融資を受けている〇利益は出しているのに融資額が伸びていない〇決算書はただ提出しているだけ1つでも当てはまった場合、今すぐに改善をしないと、今後の成長機会を逃してしまいます。それはなぜでしょうか?事例をもとに見ていきたいと思います

2.事例紹介

A社は接骨院を9院展開している医療事業者です。積極的な出店により売上高は右肩上がりで伸長しており、直近では年商2億5千万円となっております。利益についても毎期計上しており、内部留保も順調に蓄積している成長企業です。利益以上の返済があるため返済後CFはマイナスとなっておりますが、資金が必要な時は金融機関からの融資で賄っており、これまで特段の問題は生じてきませんでした。

今後についても出店をすれば間違いなく売上は増加し、これまで以上の利益を生み出せるような状況であり、さらに成長を加速させたいと考えた当社は大型の設備投資を計画し、金融機関に融資の相談を実施しました。

業績も悪くなく、順調に成長軌道にのっているため、問題なく融資を受けられると考えていた当社でしたが、結果として必要な融資額を確保することができませんでした。

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はよくある話です。

当社の融資が出なかった要因はどこにあったのでしょうか?

当社の財務を紐解くと以下の3つの問題が浮き彫りになりました。

要因 借入の拡大による債務償還年数の悪化

かねてからの積極的な出店投資に伴い、当社の借入額は一気に増加しており、事業規模、利益水準に対して重たくなっていました。そうすると金融機関が重要視している「今の利益水準で借入全てを返済する場合何年かかるか」という「債務償還年数」が悪化することになります。その指標が悪化したことで金融機関内での当社の評価が下がってしまい、融資のハードルが上がってしまいました。

 

要因 メインバンクが不在だった

当社については金融機関に言われるがまま借入を実施しており、多くの金融機関と取引をしていました。通常であれば大型の設備投資についてはまずメインバンクへ相談すべきですが、多くの金融機関に融資が分散していることでメインバンク呼べる存在がありませんでした。要因①で述べたような事情もあり、すべての金融機関が「ほかの金融機関をあたってください」と尻込みをしてしまう結果となってしまいました。

 

要因 融資取引を見越した付帯取引ができていない

付帯取引とは融資以外の金融機関との取引(例:社員の給与受取口座を作成してもらう、投資信託取引)を指しますが、金融機関は融資とともにそうした付帯取引を拡大させることで収益を得ています。なので、そのような付帯取引が今後見込める先という判断をされれば今後の金融機関の収益源として有望なので積極的に取引を深めていこうとするのですが、そうでない場合は一定のところで線引きをされてしまい、取引を深めることができません。当社はそうした付帯取引に目を向けていませんでした。

3.融資を引き出すために取り組んだこと

では、結果として当社は投資ができなかったのか、というとそうではありません。

最終的には

①計画していた大型設備投資資金について必要額の借入実施

②冷え込んでいた取引金融機関のマインドを改善させ継続的に支援してもらえる体制の構築

に成功しました。

一旦は頓挫しかけた計画を実現させるだけでなく、金融機関の姿勢を前向きに変化させるために取り組んだことは次の2点です。

 

取組 メインバンクの選定と取引の集約

今までの八方美人的な金融機関取引を改め、今後継続的に関係構築をして貰えそうな先をメインバンクとして定めて売上入金口座、給与振込口座、個人取引(クレジットカード契約、投資信託購入等)といった付帯取引を集約させました。それにより当該金融機関に当社と取引拡大をするメリットを見出させ、自他ともに認めるメインバンクとすることに成功しました。

このメインバンク選定の際に大事なのは自社を最も評価してくれている金融機関を見定めることです。単純に融資をしてくれている金額の多寡ではなく、「どれだけリスクをとっているか」を確認する必要があります。例えばすべて保証協会付で1億円融資してくれているA銀行と、プロパーで5千万円を貸してくれているB銀行では、単純な融資金額ではA銀行の方が多いですが、実際A銀行は全くリスクをとっておらず、一方のB銀行は5千万円のリスクをとってくれています。このような場合、メインバンクとなってもらうべきはリスクをとって融資してくれているB銀行になります。

 

取組 “実現可能性の高い“事業計画の提出

金融機関に対して「この先財務内容は良くなるんです!」と口頭で伝えてもまったく効果はありません。大切なのは数字の根拠をもって「今後の目指していく姿」と「金融機関が重要視する指標が改善していくこと」を示していくことです。そのためのツールが事業計画です。

事業計画の作成についてはどれだけ詳細に作成できるかが胆となります。当社においては今回の大型設備投資がどのように収支に影響を与えていくのかはもとより、既存店舗の収支についても店舗ごとに積算根拠を示しつつ詳細に記載しました。また、それによりバランスシートがどのように改善していくのかも記載し、先に述べた債務償還年数を含む、足許で悪化しつつある指標が今後改善していくことを示しました。

詳細な事業計画を提出することは副次的な効果として、財務管理体制のレベルが高いこともアピールできます。金融機関としても管理体制が整っていることはプラス材料になりますので信頼できる会社であると印象付けることが可能となります。

これら2つの取組により金融機関の当社に対する見方は180度変わりました。金融機関は融資の判断をするときには採算性と安全性を考慮します。当社は取組①により今後取引を拡大することで収益拡大につながる(採算性)と思わせ、取組②により一時的な指標の悪化により当社が傾くことはない(安全性)と思わせることができました。これらの取組は今回の大型設備投資を成功に導くことだけでなく、メインバンクが明確な支援姿勢を示している(苦しくなった時も助けてくれる)ことでその他の金融機関姿勢も前向きに変化させることに繋がりました。

4.最後に

A社の取組はいかがだったでしょうか?

財務内容に変化がなくても取引の仕方を工夫するだけで金融機関との関係性は大きく変化します。大切なのは金融機関の意識している点、求めているものを理解し、そこに合わせた対応をしていくことです。逆にそこを意識しないまま自己流で動いてしまうと却って首を絞めてしまうことにもなりかねません。

皆様におかれましてもA社の取組を参考にして頂き、金融機関との関係を深めることでうまく活用し、持続的な成長を実現させていただければと存じます。



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