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財務の基礎知識

【障がい福祉】企業成長を見据えた財務戦略

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1.はじめに

皆様、自社の未来を見据えた財務戦略を立てられていますでしょうか。

長引くコロナ禍において先行きが読みづらい中、今後の経営の舵取りをどうするべきかお悩みの経営者の方も多いのではないかと思います。

2022年の障がい福祉業界における成功の2大要素は下記2点と言われています。

①オンリーワンとなりえる特色を持ったサービスを構築する

▷総量規制の可能性がある人気事業では児発、放デイ、就労B型、GHを早期開業

▷幹部候補・サビ管の採用・他人材の育成にコストをかけておく

②1種類のサービスよりもワンストップで事業を立案しておく

この時流に乗って成功するためには、事業の展開を見据えた「資金潤沢のための積極的な融資活用」と「企業成長を見据えた財務戦略」をかけ合わせることです。

 

本コラムでは「企業成長を見据えた財務戦略」を下記3ステップに分け、成功事例企業をもとにそれぞれについて詳しく解説してまいります。

ポイント自社の財務管理体制を整えよう

ポイント新規出店の資金調達戦略を考えよう

ポイント新規出店の収益性を見極めよう

障がい福祉業界を事例に解説いたしますが、本日お伝えする財務戦略に関する視点はあらゆる業界の皆様にご活用いただけるものとなっておりますので、ぜひご一読いただけますと幸いです。

2.企業成長を見据えた財務戦略①自社の財務管理体制を整えよう

企業成長を見据えた財務戦略の第一ステップは「自社の財務管理体制を整えること」です。

「財務管理体制を整える」という言葉を少し大げさに感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし金融機関が融資判断をする際に必ず確認する財務数値を自社で把握することで、金融機関目線で融資交渉ができるだけではなく経営判断のスピードがUPします。今回は、成功事例企業をもとにどのように財務管理体制を構築するのか解説いたします。

 

<事例>

〇事業内容:放課後等デイサービス(運動型、学習型、就労準備型)・訪問介護事業

〇年商:1.4億円

〇従業員:10名

 

<財務管理体制構築before/after>

<財務管理体制構築までのステップ>

① P/L、B/S、CFが連動した財務管理表を作成する

P/L、B/S、CFのそれぞれの役割は下記の通りです。

P/L:業績と今期着地見込みを把握

B/S:財務指標等、金融機関からの見られ方を把握

CF :現預金水準の予実管理、借入が必要な次期を把握

資金繰りが不安な方、今後投資を検討されている方は、まずは自社の財務現状の把握から始めていただくことをおすすめします。

 

② 部門・全社ごとの財務管理

▷部門ごとに自社の財務を見える化、予実管理を行うことで適宜次の取り組みを実施

▷金融機関がすぐに見たい数字を出せる体制構築

全社と、部門ごとで売上・費用・利益を把握し、毎月試算表と照らし合わせて予実管理を行うことで売上・費用・利益の増減の要因分析を高い精度で行うことができます。

分析結果を見ながら期中で軌道修正をするとともに、金融機関に対しても自社の状況・今後の具体的な取り組みを数値的な根拠をもって報告できるようになります。

3.企業成長を見据えた財務戦略②新規出店の資金調達戦略を考えよう

企業成長を見据えた財務戦略の第二ステップは「新規出店の資金調達戦略を考えること」です。資金調達戦略作成のポイントは、「自社の年商規模に合った金融機関取引」と「資金調達方法(適切な借入方法)」です。

今回も成功事例から資金調達戦略について解説いたします。

 

<事例企業>

〇事業内容:放課後等デイサービス(運動型、学習型、就労準備型)・訪問介護事業

〇年商:1.4億円

〇従業員:10名

 

<金融機関交渉までのステップ>

① 金融機関に事業の説明資料を作成

② 借入の年間返済額減額と当座貸越枠の設定を依頼

⑴ 自社の強みを定性的に金融機関に説明

⑵ 部門別の定量的な数字の推移と今後の成長・改善の計画を説明

⑶ 事業計画や資金繰り計画から成長投資のために必要な当座貸越の決定

 

<金融機関交渉の結果>

金融機関からの当座貸越の設定と年間返済額の減額により、資金調達力を2.3倍向上することを実現しました。

<ポイント>

〇取引金入機関戦略

今、自社の取引金融機関は何行でしょうか?

投資の設備資金を借入する際の金融機関の規模はどのくらいが良いのでしょうか?

自社が付き合うべき金融機関とその数は、年商規模に概ね準拠します。

企業規模の成長に応じて上位地銀や他取引銀行と取引を開始して融資シェアを移行し、自社の必要資金や意向に答えてくれる金融機関を選定してくことをおすすめいたします。

例えば、年商1億円規模の企業は第二地銀や信用金庫、信用組合を取引行とし、

中でも将来的に自社の成長に応じてくれそうな積極行を選定していくことが理想です。

〇最適な資金調達方法の選定

最適な資金調達の方法は年商規模と金融機関からの見られ方によって決まります。

金融機関は決算書をもとに融資先を財務内容に応じて6段階に分類しています。

(正常先>要注意先>要管理先>破綻懸念先>実質破綻先>破綻先)

「正常先」に位置することで好条件での融資が可能となります。

金融機関が融資の際によくみる財務指標は下記3つです。

自己資本比率:返済不要の自己資本が資本調達の何%を占めるか

借入依存度:企業が保有する資産のうち、どの程度借入に依存しているか

債務償還年数:現状のCFで何年で借入を返済できるか

こういった財務指標を自社であらかじめ把握・管理しておくためには月次で財務管理を行う必要があることがご理解いただけるかと存じます。

 

また、ここでは併せて適切な借入方法についても押さえておく必要があります。

良い借方とは、「資金用途と借方があっている状態」のことを指します。

具体的には、経常運転資金は毎月の返済のない短期借入で行い、設備資金は毎月返済のある長期借り入れで行うということです。運転資金には、手形貸付と当座貸越があり、後者の方が融資難易度が高い分より自由度の高い活用ができます。こういった借入の種類を押さえておくことで、自社に最適な投資判断を行うことができます。

4.企業成長を見据えた財務戦略③新規出店の収益性を見極めよう

企業成長を見据えた財務戦略の第三ステップは「新規出店の収益性を見極めること」です。

<投資案件を検討する際の3つの軸>

① 投資案件の概要

まずは自社が参入したい事業に関わる総投資費用を洗い出し、そのうちいくらを借入るか検討します。

 

② 計画期間(=借入期間中)、いつ事業黒字化するか、投資回収できるかをシミュレーションする

最初は簡易で構いませんので、単年度の簡易収支シミュレーションにて、出店後何か月で事業黒字化(単月黒字化)するか投資回収できるかを確認します。

 

③ 事業単体のキャッシュフローで借入返済を賄えるか、または足りない場合はそれを補う本業の収益性があるか

 

<ポイント>

〇現預金は月商の3か月分確保しておく

新規出店に際して、「うちは手もとの現預金に余裕があるから、初期投資は借入はせず手もとの現預金で賄うつもりだから大丈夫」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、その現預金、実は使わないほうが良いお金かもしれません。

先行きが見えないこのご時世では、現預金は手厚く(目安は月商の3か月分)持っておくことを強くおすすめいたします。また、1種類のサービスではなく、ワンストップで事業を立案する場合、自己資本で投資をしてしまうと次の投資までに時間がかかることがあります。そのため、適切に金融機関から融資を受け企業の成長を加速していくことをおすすめします。

 

〇出店を加速するポイントまとめ

1.自社財務の(全社・部門別)の見える化

2.金融機関に必要な情報を適宜公開(公開できる体制作り)

3.自社の体力に合った投資計画の作成

まとめ

本コラムでは、障がい福祉業界の成功事例を用いながら企業の成長を見据えた財務戦略構築方法について、3ステップで解説いたしました。

企業を成長させる投資を成功させるには

① 自社の財務管理体制を整える:自社財務を見える化する

② 新規出店の資金調達戦略を考える:金融機関の「見方」を押さえる

③ 新規出店の収益性を見極める:年商ステージごとに必要な借入方法を理解する

 

これら3ステップを経て投資案件の事業計画を作成し、具体的な計画を組み立てることで、お金の不安なく投資のサイクルを回しながら企業成長を加速させることができます。まずはステップ1から取り組んでいただき、自社の財務管理体制を構築するきっかけとしていただければと思います。

 

本コラムが皆様の企業経営の一助となれば幸いでございます。

お読みいただきありがとうございました。



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