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財務の基礎知識

【事業計画作成方法と活用術】

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1. はじめに

経営者であれば、一度は事業計画を作成されたことがあるのではないでしょうか。
ただ、
・事業計画を作成してみたが、作り方が正しいのか不安
・事業計画を活用にまで落とし込めず、絵に描いた餅で終わってしまう
といったお悩みをお持ちの経営者の方も多いのではないかと思います。

そこで今回は、事業計画の作成意義から作成方法まで詳しくお伝えいたします。

2. 事業計画の必要性と活用法

まず、事業計画はなぜ必要なのでしょうか?
事業計画がある場合とない場合では、下記のような違いがあります。

先行きが読みづらく市況に左右されやすい昨今、事業計画がないと毎月目指すべき数値が見えず決算が明けてみると計画外の赤字を出してしまったという場合もあるのではないでしょうか?計画があると、毎月の数値目標と進捗を照らし合わせることができるため計画通りの決算着地を迎えることが可能となります。また、最適な投資のタイミング・投資額が明確になるため、自社の体力に合った最適な投資のタイミング・投資額を可視化し企業成長を加速することができます。さらに、事業計画があると資金繰りを可視化することができるため、資金ショートをいち早く把握し金融機関に事前に融資を打診することができ資金繰りに余裕が生まれます。

市況が変わりやすい今だからこそ数字をもとに経営判断ができる体制を築く必要性があるのです。このようなご時世、金融機関が重視するのはやはり「数字」です。金融機関から資料提出を求められた際に、定性面だけではなく定量面で自社の事業を説明できるよう、事業計画を作成しているに越したことはありません。

では、事業計画はどのように活用できるのでしょうか?
今回は3点に分けてお伝えいたします。

①予実管理体制を整えること
まず事業計画は毎月試算表と照らし合わせ予実管理をすることにより、今期の着地見込みを把握したうえで必要な施策へと落とし込みに活用することができます。全社の売上・原価・販管費・営業利益を部門やグループの数字に落とし込みをすることにより、「いつ」「誰が」「何をすればよいか」が見えてきます。そのPDCAを回すことにより、期中に軌道修正が可能になるのです。

② 幹部育成
さらに、事業計画は幹部育成にも活用することが可能です。部門ごとの事業計画の作成・進捗管理を幹部社員に任せることにより、経営者のリソースだけではなく、幹部社員の意識付けで企業成長を加速させることができます。社長の頭の中の数字を現場の数値計画へ落とし込むことで、社長に依存しない会社経営が実現できるのです。

③金融機関交渉
また先程記載した通り、金融機関との交渉にも事業計画は欠かせません。自社の未来を数字で示すことで投資額・必要資金等今後の見通しが明確になり、金融機関交渉をスムーズにすることができます。

3. 成功事例

続いて、事業計画を作成した企業の成功事例を2社お伝えいたします。
事例①
<業種>介護・福祉
<年商>5億円
<従業員数>100人強
<事業計画活用のBefore・After>

この企業は当初1つの企業内に4つの事業が混在していましたが、経営効率化のために各事業を分社化、ホールディングス体制を取りました。新しく就任された各社の代表の方は全員経営経験がなく、これまでワンマンで経営をされてきたHD社長の数値意識を各社の代表に浸透させる必要がありました。またHDを含む3/5社が赤字であり、そのうち1社は当座貸越の継続条件上2期連続の赤字を回避する必要もございました。
この企業が各社代表の数値意識を向上させ、且つ1期目で赤字を脱却できた秘訣、それは「事業計画」にあります。
まず各社代表が事業計画の作成から運用までを担い、毎月親会社の代表+経営幹部+各社の代表者と予実確認の打ち合わせを実施するサイクルを回す体制を構築しました。売上高は問い合わせ数・契約数などのKPIに落とし込んで計画策定を行い、さらにマネーフォワードを導入しリアルタイムで実績を確認できるようにすることで各社代表の数値意識を大幅に向上することができたのです。このような体制が構築されていると、期中に数値根拠に基づいた経営の見直しができ、結果として1期目で黒字化を実現することができました。

事例②
<業種>住宅不動産
<年商>10億円
<従業員数>30人
<事業計画活用のBefore・After>

この企業は、数年後のグループ経営を見据えた先行投資とウッドショックによる影響を受け2期連続赤字という状態でしたが、今後の企業拡大に向け金融機関に対して今後の経営の見通しを説明した上で継続的にサポートいただく必要がありました。
このケースでは、定量面・定性面に分けて「事業計画」を策定しました。
まず定量面の事業計画については、出店エリアの集客の見込みを立てた上で1年後には営業利益黒字化を実現できることを明示しました。ポイントとなるのが、単に売上計画・販管費計画だけを立てるのではなく、売上は具体的な集客数や販売棟数、販管費は採用人数やグループ経営を見据えた具体的な組織体制等KPIに落とし込む点です。具体的な数値を示すことで、本当にその計画が実現できるのかを金融機関に理解していただきやすくなります。
定性面に関しては、数値計画だけでは伝えきれない企業の取組や今後の方向性を説明します。長引くコロナ禍で先行きが読めないため金融機関は定量面を重視する傾向が強いのですが、自社が目指す方向性を理解していただくためにも数値計画に加え定性面の説明は大変重要です。具体的には、HDグループ経営を推進する上での採用・人材育成、システム化体制構築、経理体制の整備、外注業者の開拓、分譲事業拡大に伴う資金調達強化等、具体的な経営戦略を記載いたしました。

結果としてこの企業は計画数値を基に具体的な融資交渉が可能となり、資本性劣後ローン5000万円の借入に成功し、業績が芳しくなくとも継続的に金融機関からサポートいただくことができました。

4. 作成の手順

続いて事業計画の作成手順についてご説明いたします。
事業計画作成のコツとしてはP/Lに加えて、B/SとC/Fを連動させる必要がございます。

まず、P/L計画作成のポイント5つをご説明いたします。
①月次毎の売上、原価、費用、営業外損益の計画を作成する。
月次での計画を作成することで、素早い経営判断に繋げることができるため期中での軌道修正が可能となります。

②売上計画は部門毎且つKPIに落とし込む
KPIとは目標を達成するために実行すべきプロセスが、適切に実施されているかを数値化し評価するものです。売上を作り出すために必要なプロセスの計画(KPI)を作成することで実績がでた際に、売上増減の分析が可能となります。さらに、目標達成のために社員それぞれがどのような行動をすればよいのかわかりやすくなり、PDCAサイクルをスムーズに回すことに繋がります。

③販管費は推移表を参考に固変分解を行う
固変分解とは、販管費を固定費・変動費に分けることを指します。固定費は売上の増減に関わらず、一定に掛かる経費、変動費は売上に比例して増減する経費のことで、販管費の項目毎に計画を立てる必要があります。

④本社経費は自社に適切な方法で部門に按分する
部門経費とは部門や店舗毎に掛かる経費のことで、本社経費とは管理部門の維持費に掛かる経費です。本社経費を部門に按分する際は下記のような方法があり、自社に適切な方法を選択頂く必要があります。
A,従業員数基準:所属する従業員数を基準に按分(例:経理・人事の人件費)
B,使用面積基準:使用面積によって按分(例:地代家賃)

⑤売上対比の割合を可視化する
全ての項目に対して、売上対比を%で記載することで異常値を発見しやすくなります。

最後に、P/L計画の確認し、今期必要な利益は出ているのか?達成可能な計画になっているか?営業利益が黒字となるかをチェックします。

続いてB/S計画作成のポイントの5つをご説明いたします。

①B/Sは大項目で捉える
B/Sは自社にとって重要な勘定科目を洗い出します。製造業なら在庫、物流業なら償却対象資産、医療・介護福祉業なら売掛金等、業種によって重要な項目は変わります。

②P/Lと連動させる
P/L項目の中でも、①減価償却費、②当期利益、③成長率の連動は必須でございます。

③借入は返済計画より引用する
毎月の返済分を前月の借入金から差し引き、新規投資分の融資を追加します。

④現預金は最後に調整する

⑤貸借の一致を確認する

最後に、CF計画作成のポイントの2つについてです。
①営業CF・投資CF・財務CFを作成する
お金の流れを営業・投資・財務に分けて整理します。
②P/LとB/SとCFを連動させる
P/LとB/Sへ反映させた数値をCF計画へ反映させます。

これらのP/L計画、B/S計画、CF計画の3つの計画が出揃えば金融機関の格付の際に重要視される「4つの財務指標」を算出することができます。
①自己資本比率・・・10%以上
②借入依存度・・・60%以内
③実質長期負債返済年数・・・10年以内
④有利子負債返済年数・・・10年以内

この指標を適宜確認しながら事業計画を作成・活用していただければと思います。

4. まとめ

本コラムでは、事業計画作成のメリットと成功事例、作成ポイントについて紹介しました。
事業計画は作って終わりではありません。年商に関わらず社内での幹部育成、社外での資金調達の円滑化のための説明資料として使うことができます。
今後の貴社のビジョンに沿って財務面の整備を整えていくことで、社内・社外での活用メリットがございますので、早期に対応していただくことをオススメします。
このコラムが貴社の財務を見直すきっかけとなれば幸いでございます。

お読みいただき、ありがとうございました。


事業計画の作成方法と活用術

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