財務トピックス(コンサルタントコラム)

AI時代の融資審査を考える

出張族である我々にとって、新幹線や飛行機等のチケットが柔軟に取得できる環境は非常にありがたいです。最近はスマートフォン1つあれば、移動中だろうが自宅だろうが、クリック1回で取得から変更・払戻しまで受付してもらえるうえ、改札・搭乗口の通過も切符の発券なくICカードやスマホで代用できるため、もはやチケット取得に対面のコミュニケーションが不要となり、乗車5分前に誰とも話さず新幹線の座席を変更することもできるようになりました。一連の行為には当然ながらチケット代というお金(決済業務)が発生しますが、こうしたお金の流れも、もはや電子世界でしか見えない仕組みが構築されています。決して少額ではないお金がパソコンの画面上に「決済完了」とだけ表示され口座から消える…既に見慣れた商取引とはいえ、よく考えると怖いなと感じます。

しかしそんな思いをよそに、金融業界では今や「決済」のみならず「融資」においてもシステムが人間を凌駕するかもしれない時代が到来しているようです。話題のフィンテック関連の上場企業が、審査業務に100%AIを活用して融資を完結させる仕組みを開発し、来春にも実用化するとのことです。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32869970R10C18A7000000/

(2018年7月11日付 日本経済新聞電子版より引用)

 

金融庁が平成26年指針において事業性評価を掲げて久しく、銀行員は決算書から出てくる財務データだけに依存しない審査を行うよう言われているなか、下手をすればAIという無機物が会社を審査し「あなたの会社に●●万円の融資を金利〇〇%、〇年間で実行します」と判定する時代が来るかもしれない。時代の先を行く画期的な融資手法となるか、あるいはデータ化された定量情報(決算数値)ばかりが重視され、やはり融資には銀行員の目利きがいるねという話になってしまうのか…今後の動向に目が離せません。

皆様にとっても「仮にAI審査が金融業界の本流となった時に、今後はどうやって良い条件でお金を借りたらいいのか」という部分は興味があるのではないでしょうか。そこで、今回は筆者の考える「AI時代の融資審査」に勝つための、いくつかのケースを考えたいと思います。なお、これらはあくまで予想の範疇を超えないものですが、銀行員と面談するなかでお金を調達する「いまの金融機関交渉」にも使えるノウハウを織り込みましたので、参考程度に読んでいただければ幸いです。

 

【想定ケース1】定量情報を大量に読み込ませることで勝つ!

AIは当然ながら機械であり、あいまいな言語情報よりも「1,2,3」という確定した数値情報の処理が得意だろうということは容易に想像がつきます。現在の銀行員による審査業務でさえ、パソコンではじき出される各種財務数値をフル活用して行うわけですが、AI100%の審査ともなれば何倍もの速度でよりたくさんの財務数値を処理できるはずです。

ということは、今以上に大切になってくるのが決算書を補強できるような数字ベースの資料提出です。

・資金繰り表、資金繰り予測

・業績計画ペーパー、予想B/S・予想P/L

・在庫管理表(=陳腐化した在庫はない、という説明資料)

・給料支払い情報(=何人の従業員が、月間いくら給料をもらっているのかという、人件費内訳を疎明する資料)

例えばこうした貴社の実態を数字でわかりやすく説明している資料を提出することで、AIは数字を深く判断し、有利な条件での融資を承認してくれる…そんな事例が予想されます。

ちなみに、銀行員が融資判断を行う今の世界でも

「社長、最近の試算表っていただけますか。最近の減収要因は何ですか」

「今後の資金繰り予測を出してもらって、それで融資を判断します」

という話が出てきて、弊社とご支援先の企業様が協力しながら財務資料を作成し、銀行から最善の融資条件を引き出すというケースはざらにありますので、今後はますますこうした資料作成力、数字で語る力が重視されるのではないでしょうか。

 

【想定ケース2】決算書よりも、取引振が重視される

AIは人間の感情を排して理論的に財務を把握することが可能な反面、会社と銀行の関係性やこれまでの実績を鑑みた、いわゆる融通を利かせた対応が難しく、人間の泥臭い部分まで審査業務に織り込ませるには、もう少し時間がかかるのではないかと考えます。一方で何とか今までの実績を活かした審査業務をAIに行わせたいと考えた際、おそらく活用されるのは「日々の口座の動き(カネの流れ・商流)」です。

振込1回、手形1枚の発行、1件の入金…。これら何気ない日々の取引をAIに常に監視させ「カネをどんな会社と、いくら、いつのタイミングでやり取りしているか」をリアルタイムに判定させることで、本当に必要な資金を1番適切なタイミングで融資することや、膨大な取引実績を考慮した融資を実現させるのではないでしょうか。

ちなみに現在の銀行員も、審査において日々の口座の入出金情報はばっちり監視しています。

「あれ?いつもはないはずの億単位の入金が発生している。どこかで融資を受けたお金を振替した?」

「初めて外国から送金されてきたお金が入金された。海外での取引が始まったのかな?」

と、AIのように24時間監視はできないものの、異常値についてはきっちりと把握して審査に活用しています。逆に言えば、こちらも異常値については感度高く認識し、日々の銀行面談で有利な交渉材料として活用していきたいですね。

 

【想定ケース3】今までにない指標が審査に盛り込まれる

これに関しては既に世間で活用された事例もあるようですが、

・社長の携帯電話の通話履歴

・会社のパソコンの検索履歴

・社長、経営陣のLINEの「知り合い」リスト

といった、一見審査業務には関係なさそうな情報をAIに読み込ませ、財務データからは見えない定性情報を判断した融資を行えるのではという仮説があるようです。「この会社は信用に値するか」という、旧来は銀行員が目利きで判断していた定性部分を、データに置き換えると上記のような情報になるのではということです。

現在の審査でも、お金を貸すに値する会社・経営者であるかという部分は見られるものの、根拠となる情報は数値化できない場合がほとんどで、銀行員もこの部分をそれとなく判断し、審査のちょっとした補強材料程度に活用しているケースがほとんどかと思います(実際、私が銀行員だった頃はそうでした)。

 

例)社長は地元の商工会議所で何度も表彰を受けた実績を持つ、〇〇大学卒の有識人である…等。

 

これら「あいまい」な材料が、AI時代にはガチガチのデータを根拠としてはじき出される可能性があるのではないでしょうか。

 

 

〇まとめ:来るAIの波に勝つために

今回は、近年声高に言われるようになったフィンテックの一環として、目前に迫っているかもしれない「AIによる融資審査」が本流となる時代には、どういった対策が必要になるかを予想しました。もちろん、今は想像もできないような革新的な技術が誕生することで、これら予想が前提から覆される可能性も考えられますが、筆者は「いまも銀行員が見ている審査のポイントを、より深く、速く、大量に、理論的に見られていく」時代が来るのではと考えています。こうした時代が来る事を想定して、今のうちから銀行員を相手に日々の業績等に関して理論的に資料を活用して説明し、最善の融資条件を引き出すトレーニングをするのも1つの手かもしれません。

何せ来る未来の交渉相手は、人間の何倍もの情報を処理するAIですから。

 

「資料ねえ…資金繰りとか、試算表とか予測とか、あれってどう作って、活用すればいいですかね」

 

気になった方は、弊社金融財務支援部までお問い合わせをお願いします。筆者も日進月歩の技術革新に負けないコンサルタントとして、貴社のお役に立てるご支援をできればと思います。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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