財務トピックス(コンサルタントコラム)

資本性ローンを用いて成長戦略を描く!② ~メリット・デメリットを整理して有効活用を考える~

前回は銀行の融資商品として事例になりつつあるといえる「資本性ローン」とは何かについてご紹介をさせていただきました。
前回の内容はこちら
 
今回は資本性ローンのメリットとデメリットを、利用されるクライアント目線で整理してご紹介させていただきます。
 
まず、何と言っても気のなるのがメリットだと思いますが、大きくは以下の5点があります。
 

1. 期日一括返済、且つ借入期間が長期 (=資金繰り安定)

資本性ローンは、返済形式が毎月の約定返済を伴わない「期日一括」です。
 
従って、返済期日までの間に元金のキャッシュアウトを伴わないことから、通常の借入金(証書貸付)での調達に比べて資金繰りを安定させる効果があります。
 
また借入期間も5年1ヶ月から最長15年で設定されており、長期における企業の資金繰りの下支え資金として利用いただけます。
 

2. 金融機関が自己査定を実施する上でプラス要因(=自己資本の向上)

金融庁から公表されているのですが、資本性ローンは一定条件(※1.)の下、「資本」としてみなすこと可能です(但し、資本として見なすかどうかは各金融機関の判断にゆだねられています)。
 
従って、あくまで「金融機関の自己査定」においてですが、自己資本の向上に繋がるため自己査定上ではプラス要因として捉えて頂けます。
 
仮に、債務超過50百万円の中小企業が資本性ローンを100百万円導入した場合であれば、実質の自己資本は(実行前)▲50百万円から(実行後)+50百万円となり、資産超過への転換が可能となるので金融機関の見方が大きく変わります。
 
債務者判断はもちろんのこと、案件判断にも大きく影響を及ぼす場合もあります。
 
(※1.)以下【表1】の通り、借入残存期間によって資本とみなせる金額(割合)に制限がございますのでご留意ください。
【表1】
 

 
出典:金融検定協会公表資料に基づき、(株)船井総合研究所金融・M&A支援部が作成
 

3. 無担保・無保証人

特に国民生活事業(※2.)に言えるのですが、新規開業、起業(女性・若者・シニア)、新事業活動、再挑戦などを検討されている方を融資対象として挙げており、新たに事業を開始する方を支援する色合いを持つ資金であります。
 
そういった方々は担保提供できる資産を有していないことも多く、また保証参加することの不安から新規事業開設を迷われる事も多々あるかと思います。
 
そういった方の挑戦を後押しできるよう「無担保・無保証人」での取り扱いとしています。
 
(※2.)日本政策金融公庫の場合、国民生活事業と中小企業事業の2つの窓口がございます。
 

4. 新規借入での取り扱い

既存の借入金を劣後ローンに切り替える、いわゆるDDS(Debt Debt Swap=デット・デット・スワップ)とは異なり、新規借入の扱いとなりますので、純増での資金調達が可能となります。
 

5. 株主構成への影響無し

資本的性格は持ちながらも借入であることから、一般的な増資により生じる既存株主の持株比率低下といった懸念がなく、資金調達が可能となります。
 
ここまで聞けば良いことづくし、ではありますが、多少のデメリットもございますので、以下でご説明させて頂きます。
 
 

1. 業績連動の金利体系

貸付期間及び業績に応じて金利が変動する仕組みとなっており、国民生活事業の場合、以下【表2】の通りで区分されています。
 
例えば、貸付期間7年超9年以内で借入した場合は、業績に応じて1.00~5.60%の3段階から金利が決定されることとなります。
この場合、売上高減価償却前経常利益率が0%未満であれば取扱金利は1.00%、同率が0~5%以下であれば3.30%、同率が5%超は5.60%で設定されます。
中小企業事業を含め、総じて言えることは「業績が向上した場合は金利が上昇し、業績が低迷した場合は金利が低くなる」体系となっているということです。
 
株式の場合、業績が上向けば配当が増えると思います。
資本性ローンも、資本的性格を有する借入金であり、「株式」のような機能と認識して頂ければ理解して頂けやすいかもしれません。
 
【表2】<国民生活事業>
 

 
出典:日本政策金融公庫HP公表資料に基づき、(株)船井総合研究所金融・M&A支援部が作成
 

2. 繰上返済不可

業績向上時には金利が上昇すること(金利上昇時の金利負担を抑えるべく、返済を考える方が多いことが想定される)もあり、借入期間中の繰上返済が原則できない形式となっております。
 

3. 経営状況の定期的な報告

借入期間中は、四半期毎に経営状況の定期的な報告等が求められますので、一定の事務負担が生じます。
 
ただ社内で、金融機関向けに提出が必要な資料を常に整備できている状態を構築できる、という財務管理体制の観点で言えば、単純にデメリットして捉えづらいとも考えられます。
 
 
以上、大まかなクライアント目線のメリット・デメリットついて列挙させて頂きました。
 
細かく言えば、各金融機関の自己査定上で「資本性ローン」を「資本」とみなすことができれば金融機関評価の向上に寄与する、だけでなく、それによって市中金融機関からの資金調達の可能性も高まるといったメリット等もあります。
 
そういった意味では貴社の成長戦略をまずしっかりと描き、そこに「資本性ローン」を用いればどのようなメリット・デメリットが生じるか、を改めて整理された上で、導入を検討頂ければと思います。
 
例えば、資本性ローン導入後も一定期間は大幅な利益(正確には償却前経常利益)確保が難しいことが想定されている企業にとっては、「業績連動による毎年の金利決定」は低金利で借入できる期間が長くなるのでデメリットではなくメリットになりますし、財務管理体制の強化が必要と思われている企業にとっては、上述の通り「経営状況の定期的な報告」はある種、自社の財務管理体制構築の面では有効な一手段になりえます。
 
また定期的に金融機関と面談することにもなりますので、“金融機関慣れをする”ということもメリットとして考えられます。
 
自社にとって何がメリットで何がデメリットかを明確にし、最終的な導入可否を選択いただければと思います。
 
最後になりますが、本レポートが、成長戦略を描く上で切り離せないファイナンス(=資金調達)を検討する際の一助となれば幸いでございます。
 
以下に日本政策金融公庫、山梨中央銀行の商品概要について要約しておりますので、適宜ご活用頂ければと思います。
 
■各金融機関の「資本性ローン」取引条件概要
 

 
※金額は限度額で表示しております
出典:日本政策金融公庫HP及び山梨中央銀行プレスリリースに基づき、(株)船井総合研究所金融・M&A支援部が作成
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

【この記事を書いたコンサルタント】
小松 靖教

高知県出身。大学卒業後、地方銀行で約9間年勤務。
前職では累計100社超の中小企業を担当、豊富な営業・融資経験を強みとしている。また本部にて外国為替取引や海外取引・進出時の資金調達支援業務に従事した経験を持つなど幅広い金融知識で企業支援を行っている。
「実態を知り、最善策を立案する」をコンサルティングの信条とし、現場に出向き、経営者と密にコミュニケーションを取ることを重視する。常に誠実に、常に真剣に経営者と向き合うコンサルティングを実践している。

flag人気の記事
gradeオススメの記事

共に経営者を支援する仲間をご紹介します。

中小企業が次々と資金繰り改善に成功した究極の資金繰り改善策
メルマガ登録
財務面でのお悩みを解決!無料レポートダウンロード
expand_less