平成31年(2019年)度税制改正の大綱について
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昨年、12月21日に税制改正が閣議決定されました。
今回の改正は消費税率の引き上げを予定通り実施するため、
「消費税増税対策」が焦点となっていました。
早速、具体的な内容を見ていきたいと思います。
【個人所得課税】
〇住宅ローン控除の拡充
・消費税率10%が適用される住宅取得等について、控除期間を3年延長する。
(現行10年→13年)
・11年目以降の3年間について、消費税率2%引上げ分の負担に着目した控除額の上限を設定する。
・適用期間は2019年10月1日から2020年12月31日までとする。
・この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補填する。
〇森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)の創設
・森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、
森林環境税(仮称)(2024年度から年額1,000円)及び森林環境譲与税(仮称)
(2019年度から譲与)を創設する。
〇ふるさと納税制度の見直し
・過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体については、
ふるさと納税(特例控除)の対象外にすることができるよう、制度の見直しを行う。
〇子供の貧困に対応するための個人住民税の非課税措置
・子供の貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される
児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円以下である
ひとり親に対し、個人住民税を非課税とする措置を講ずる。
【資産課税】
〇個人事業主の事業承継税制の創設等
・新たな個人事業者の事業承継税制を、10年間の時限措置として創設する
(現行の事業用小規模宅地特例との選択適用)。
☑事業用の土地、建物、機械等について、適用対象部分の
課税価値の100%に対応する相続税・贈与税額を納税猶予する。
☑法人の事業承継税制に準じた事業継続要件の設定等により制度の適正性を確保する。
・現行の事業用小規模宅地特例について、相続前3年以内に事業の用に供された宅地を
原則として除外する適正化を行う。
〇教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
・教育資金の一括贈与非課税措置について、
受贈者の所得要件設定や使途の見直し等を行う一方、
30歳以上の就学継続には一定の配慮を行い、適用期限を2年延長する。
・結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置について、
受贈者の所得要件設定を行い、適用期限を2年延長する。
【法人課税】
〇イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
・オープンイノベーション型について、大企業や研究開発型のベンチャーに対する
一定の委託研究費等を対象に追加するとともに、
控除上限を法人税額の10%(現行:5%)に引き上げる。
(※)一定の研究開発型ベンチャー企業との共同研究・委託研究に係る
税額控除率については、25%とする。
・総額型について、増加インセンティブの強化の観点から控除率を見直すとともに、
研究開発を行う一定のベンチャー企業の控除上限を法人税額の40%(現行:25%)に引き上げる。
・高い水準の研究開発投資を行なっている企業について、
総額型の控除率を割増しする措置を講じた上で、高水準型を総額型に統合する。
〇中堅・中小企業による設備投資等の支援
・中小企業者等の法人税の軽減税率の特例及び中小企業向け投資促進税制の延長等を行う。
・地域未来投資促進税制について、高い付加価値創出に係る要件を満たす場合に
特別償却率を50%(現行:40%)、
税額控除率を5%(全行:4%)に引き上げる等の見直しを行う。
・中小企業の事業活動に災害が与える影響を踏まえて事前防災を促進する観点から、
事業継続力強化計画(仮称)に基づく防災・減災設備への投資に係る特別償却制度を創設する。
〇都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
・地域間の財政力格差の拡大、経済社会構造の変化等を踏まえ、
県内総生産の分布状況と比較して大都市に税収が集中する構造的な課題に対処し、
都市と地方が支え合い、共に持続可能な形で発展するため、
地方法人課税における新たな偏在是正措置を講ずる。
・具体的には、消費税率10%段階において復元後の法人事業税の一部を分離し、
特別法人事業税(仮称)とするとともに、その全額を都道府県に対し、
特別法人事業譲与税(仮称)として、
人口を譲与基準(不交付団体に対する譲与制限あり)とし譲与する。
〇その他
・保険会社等の異常危険準備金制度について、
火災保険等に係る特例積立率を6%(現行:5%)に引き上げる。
・医師の勤務時間短縮や、地域医療体制の確保、
高額医療機器の共同利用の促進等効率的な配置の促進といった観点から、
医療用機器の特別償却制度の拡充・見直しを行う。
【消費課税】
〇車体課税の見直し
・2019 年 10 月1日以後に新車新規登録を受けた自家用乗用車(登録車)から、
小型自動車を中心に全ての税率区分において、自動車税の税率を引き下げる。
・自家用乗用車(登録車)に係る環境性能割の税率等の適用区分を見直す。
・環境性能割の導入を契機に、自家用乗用車(登録車及び軽自動車)に係る
グリ ーン化特例(軽課)の適用対象を、電気自動車等に限定する。
なお、消費税率引上げに配慮し、2021 年4月1日以後に
新車新規登録等を受けた自家用乗用車 (登録車及び軽自動車)から適用する。
・エコカー減税(自動車取得税・自動車重量税)の軽減割合等を見直す。
政策インセンティブ機能の強化の観点から、自動車重量税のエコカー減税について、
1回目車検時の軽減割合等を見直すとともに、
2回目車検時の免税対象を電気自動車等や極めて燃費水準が高いハイブリッド車に重点化する。
・自動車税の恒久減税により生じる地方税の減収のうち、
地方税の見直しによる増収により確保できない分について、
以下の措置により全額国費で補塡する。
☑エコカー減税(自動車重量税)の見直し(前掲)
☑自動車重量税の譲与割合の段階的引上げ
☑揮発油税から地方揮発油税への税源移譲
・平成 31 年度税制改正に係る車体課税の見直しに伴う
都道府県・市町村間の財源調整のため、自動車税環境性能割交付金に係る交付率を見直す。
・自動車の取得時の負担感を緩和するため、
2019年10月1日から2020年9月30日までの間に取得した
自家用乗用車(登録者及び軽自動車)について、環境性能割の税率を1%分軽減する。
これによる地方税の減収は、全額国費で補填する。
〇外国人旅行者向け消費税免税制度の利便性向上
・臨時の販売場での免税販売を認める。
【国際課税】
〇BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを踏まえた対応
・過大支払利子税制について、利子の損金算入限度額の算定方法の見直し等により、
税源浸食リスクに応じて利子の損金算入制限を強化する。
・移転価格税制について、独立企業間価格の算定方法として
ディスカウント・キャッシュ・フロー法を加えるとともに、
評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置を導入する。
【納税環境整備】
〇経済取引の多様化等に伴う納税環境の整備
・仮想通貨取引等、経済取引の多様化・国際化が進展する中、
適正課税を確保するため、現行実務上行われている事業者等に対する
任意の照会について税法上明確化するとともに、
高額・悪質な無申告者等の情報について国税当局が事業者等に照会する仕組みを整備する。
【関税】
〇暫定税率等の適用期限の延長等
・平成30年度末に適用期限の到来する暫定税率(411品目)の
適用期限を1年延長する等の措置を講ずる。
〇個別品目の関税率等の見直し
出典:財務省ウェブサイト
(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html)
(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/20181221taikou.pdf)
消費税増税を控えて今回の税制改正が実施されます。
仮想通貨などの経済多様化についても言及されています。
詳細な控除額の計算式については上記URLの財務省ホームページに記載がございます。
ご確認いただければ、幸いでございます。
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