財務トピックス(コンサルタントコラム)

中小企業の決算対策 パーフェクトガイド(随時更新)

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決算対策、キチンとできていますか??

中小企業経営では、代表権を持つ社長もトップセールスマンとして日々奔走されていることが多いかと思います。

そのため、会社の成績表である決算書を整備する「決算対策」については、
「考えているけども、勉強する時間も、対策する時間もない」
「方法がわからないし、税理士の先生に任せている」
場合がほとんどではないでしょうか。

一方で決算書は、銀行・お取引先が真っ先に会社の健康状態を把握するために見る大切な資料です。

決算対策をしていなかったために、
「成長に必要な資金を調達できない」、
「節税効果が得られない」
といったことが起きてしまうこともあります。

そうならないためにも、ぜひ以下の点については、今日からでも押さえておいてください。

決算対策において押さえておきたい8つのテクニック

決算対策に興味はあるものの、実際にどのようなことを決算対策というのか分からないという社長もいらっしゃるかと思います。
ここでは、決算対策において押さえておいていただきたいテクニックを8つご紹介させていただきます。

【業務効率化】会計年度を変更し、「売上のピーク時期」と「決算業務のピーク時期」をずらす

例えば鍋物の飲食店経営や、冬物衣料品卸売業などの会社を経営されている場合、繁忙期は売上の集中する冬場になるといったように、会社の売上(繁忙期)のピークがある程度読めるという会社もあります。

こうした場合は、売上のピーク期を決算期の「期首」に合わせ、逆に決算期は売上が比較的落ち着いている時期にすることで、営業推進にまい進する時期と、決算対策に集中して取り組む時期を分けて準備することが可能です。

決算書を提出する税務署にしても、忙しい時期にミスだらけの決算書類を提出されるよりも、きちんと整えられた資料をもらえるほうが嬉しいですよね。

なお、決算期を変更するには会社の定款変更が必要ですが、中小企業であれば手続は比較的簡易で、株主が社長1人という会社であれば、株主総会議事録を作成するだけで済ますことが可能です。

【節税対策】年度内に発生し、翌年に支払う費用は「未払費用」として計上する

従業員の給料、事務所の賃料、水道光熱費、通信費といった費目は、金額の変動はあれども、会社が継続する限りは固定で毎月発生する費目です。

この費用の内、「発生したのは会計年度内だが、実際にお金が出ていくのは翌期」という場合もあります。
これを「未払費用」といい、年度の損金に算入することが可能なものです。

中小企業においてはこうした費目がきちんと管理されず、本来は損金計上できるものを見逃してしまうケースがみられます。
日頃から未払費用への仕訳を徹底することで、効率的に損金計上できるものを積み上げましょう。

【節税対策】「前払費用」と「短期前払費用」の仕訳を行う

「前払費用」とは、保険料の一括前払いや、今後使うサービスに対する先払い等にかかる費用のことを指し、原則としてそのサービスを受領したのちに損金計上を行うため、会計年度以降にサービスを受ける場合は損金計上できないものです。

ただし、例外として「定例(毎年)発生している前払費用」については、その会計年度に損金算入できる「短期前払費用」として処理できるルールがあります(例えば、毎年契約している保険料の先払い等が挙げられます)。

自社の払う前払費用の中で、こうした損金算入できる「短期前払費用」がないか、いま一度確認しましょう。

【節税対策】設備投資や修繕をメリットのある年度に行う

会社で今後大型の設備投資を行う場合は、P/Lの業績と相談をしながら、最も損金算入メリットがある年度での投資をお勧めします。

投資にかかった費用により、黒字幅を縮小することが可能です。

【節税対策】使わなくなった・損傷した固定資産について損失を計上する

会社の固定資産台帳の中で、いらない固定資産や、災害等で損傷した固定資産がないかの確認をしてみましょう。

・必要ないものであれば売却して「売却損」を計上する
・損傷したものなら「評価損」を計上する
・売らずに捨ててしまうのであれば「除却損」を計上する
ことで、利益幅を縮小して税効果を得ることが可能です。

ただし、こうした作業におけるエビデンスについては、税務署の監査対応のためにもきちんと残しましょう。

また、こうしたテクニックは売れなくなった商品についても流用することが可能です。

【節税対策】回収不能債権の額について損失を計上する

決算書には計上され続けているが、長期間にわたって回収不能となっている売掛債権がないかチェックしましょう。

決算書に長期回収不能債権が計上されているのは、銀行との取引をする上でも心証が悪いです。

しかし、長期回収不能債権を「貸倒損失」に計上することで、一定の利益幅縮小効果を狙うことも可能です。

ただし、基準については厳格に定めがありますので、ご注意ください。

【節税対策】減価償却費に関して

将来必要な資産を先に購入する、特に「工事現場の足場(4年償却)」「自動車(6年償却)」など、償却期間が短い資産を購入することで、減価償却費を大きくして利益水準を調整することが可能です。

ただし、減価償却が大きすぎて、資金繰りは大丈夫なのに決算書が最終赤字になってしまった、ということでは元も子もないのでご注意ください。

【節税対策・業務効率化】従業員に対し決算賞与を支給する、社員旅行を企画する

全従業員に対して「決算賞与」を支給すれば損金に算入することができます。

利益が大きく上がったのであれば、社員の士気向上も狙って賞与資金を支給する方法があります。

ただし
・賞与支給のタイミングに注意しなければならないこと、
・役員に対する賞与資金は「役員報酬」扱いになり損金算入ができないこと
に注意してください。

また、社員旅行を企画すれば、一定の条件があるもののその費用を損金計上することが可能です。

まとめ

今回の記事では、中小企業の決算対策に関して、主に節税対策をテーマにしてお伝えしました。

税務上認められている方法で利益水準を調整し、支払う税金を節約することができるのはお得ですよね。

しかし、会社経営はあくまで「利益を残し、純資産を厚くし、そのお金を元手に設備投資をしたり、投資に必要な資金調達を行うことで事業を成長させる」ことが基本です。

細かな節税テクニックばかりに注力するあまりに決算書上で当期純利益を残せず、資本蓄積ができないことを原因に銀行からもお金を借りることができない、結果的に事業成長のスピードが遅れてしまうというのでは本末転倒です。

何事も「足るを知る」の精神で、ぜひこちらの記事を参考にして明日からのより良い経営に活用していただければ、幸いです。


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【この記事を書いたコンサルタント】
谷 翔太

大学卒業後、地方銀行に入社。銀行では5年間勤務し、中小企業を対象に法人営業を経験。
船井総合研究所に入社後、企業の成長を財務面からサポートし、企業のステージに合わせた最適な財務提案が経営者から高く評価されている。
近年は、資金調達や金融機関対策の支援だけでなく、財務管理体制の構築の支援にも注力している。

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