財務トピックス(コンサルタントコラム)

潮流変化の恐れ 銀行の業績不振相次ぐ

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〇潮流変化の恐れ 銀行の業績不振相次ぐ

今後のB/S計画を策定していくにあたり、欠かせないのが資金調達に関する打ち合わせです。

短期・長期借入金のバランスや社債・当座借越・手形借入といった借り方、さらには「どこからお金を借りるのか」という融資先の選定まで、あらゆる情報を洗い出して最終決定を行い、次期の予測貸借対照表を策定します。計画策定は大切、計画に沿った運営で財務を改善しつつ確実に資金調達を行い、事業拡大のチャンスを逃さずつかみ取る…と、これが我々金融財務支援部の目指すところの一面とも言えます。

そして計画策定後、次に必要となるのが「金融機関交渉」です。弊社金融財務支援部はお金の借り方や使い方に関するノウハウをお伝えできても、実際にお金を貸付する機能はありません。そこで、実際に資金調達の窓口となる金融機関と適切な交渉を行うことで、ご支援先にとって最も良い調達を目指します。メガバンクの支店から地場の有力銀行・信金まで、全国中のあらゆる金融機関と交渉を行うと、独自の融資スタンスを持つところ、逆にきわめて厳しいルールを持つところなど、一口に金融機関と言っても内情は千差万別だということに気づかされます。どんなに理想の資金調達像を描いても、金融機関にNOと言われたり、市況が変わって融資の引き締め・ルール変更が起きると、計画は水の泡になってしまう…これが交渉の難しさであり、だからこそ我々の存在意義もあるのかなと感じます。

ところで、最近の新聞で気になるニュースを発見しました。

 

「北陸の地銀 不良債権処理額が急増 事業性融資リスクに備え」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34054610Q8A810C1LB0000/

(2018年8月10日 日本経済新聞電子版より引用)

 

マイナス金利や米国長期金利の上昇により業績不振にあえぐ銀行の状況が報道されるなか、北陸方面の地方銀行が今までやらなかったリスクの高い融資先への貸付を増やしたことが一因となり、軒並み不良債権を増やしてしまったとのことです。リーマンショックや不動産バブル崩壊、大企業の倒産など、市況の変化で金融機関の融資方針ががらりと変わり、今までは「社長、ご資金はいかがですか」と来ていた銀行員が、ある日を境に1回も来なくなった…こんな話はよくあることで、我々借り手側のポジションはこうした変化を敏感にとらえ、どうすれば打開できるかを考えなければいけません。そこで今回は、銀行員の「融資の目」と「採算の目」というキーワードを用いて、このテーマについて考えたいと思います。

 

〇銀行員は2つの目を持つ

融資の目

銀行員は、他業種の営業マンと同様に商品(お金)に色々な付加価値をつけて販売(融資)をしていかなければならない一方、どんな先にもバシバシ融資を決めれば一流というわけではなく「この会社にお金を貸しても返済してもらえるのか」という保守的な「融資の目」を持たなければ務まりません。もちろん一般の営業マンであっても掛け倒れはあってはいけないことで、販売先の与信管理は重要かと思いますが、銀行員は自分が唯一売れる商品(カネ)そのものが不良債権に変化するリスクを内包して営業活動を行っています。

「●●銀行との競合の末、株式会社Aで1億円の融資を決めた。大変良く頑張ってくれたな」

と昨日部長に褒められていたヒーロー銀行員。次の日、実は株式会社Aが粉飾決算をしており、まさかの倒産。

「どうしてあの時Aの決算をよく確認しなかったんだ!試算表、資金繰りは見ていたのか?」

昨日のヒーロー銀行員は、今日の支店の悩みの種に…。極端ですが、こんなこともあり得る世界です。だからこそ銀行員は、顧客から「借りるよ」と言われても、過去の決算書類や試算表、場合によっては追加的な情報を取得しながら融資審査を行い、全てを保守的に確認し、証拠を得ないと前に進めません。

 

・スマートデイズ経営破綻に伴う、収益不動産業界の市況悪化

・競合他社である銀行の融資先の、焦げ付き情報

・2020年以降の不況予測、人口減少などの経済に悪影響を及ぼすニュース

・てるみくらぶ粉飾事件に伴う、格安旅行会社の業績悪化見込み

※「てるみくらぶ」についは筆者が前回記事で取り上げておりますので、良ければこちらもご参照ください。

【リンク】

「あの粉飾決算」から見える資金繰りの重要性

これらすべての情報が、融資スタンスの変化につながる種となるはずです。銀行とどれだけ長い付き合いをしており仲良しであったとしても、変化に伴って昨日出た融資が今日出ないという可能性があります。お金の借り手である我々は、できる限りこうした潮流をいち早くつかみ取り、金融機関に時流を踏まえた数字に基づく情報を開示していく等の対策を取りたいものです。

 

採算の目

保守的思考の「融資の目」を持つ一方、銀行員はその融資によってどの程度採算が得られるのかという「採算の目」も持たなければなりません。しかも、それは単なる融資から得られる金利収益だけを考えれば良いのではなく

・融資に対してどれだけ守り(担保・保証)を獲得できているか

・融資を呼び水としてどれだけの収益(振込等の入出金、投資信託などの手数料)を獲得することができるか

・どれだけコストをかけずに融資を行うことができているか(人件費などの経費)

などを考慮した運営をしなければなりません。

特徴的なのは、採算を考える上でも守りがどれだけ確保できているかが重要な点。リスクの高い業績不振先への融資を増やしたとしても、その分もしものための貸倒引当金を収益から積まないといけないため、実際はあまり実入りのない融資になってしまうのです。「採算の目」という書き方をしましたが、やはり銀行組織というのはリスクに対しては非常に敏感ということが分かっていただけたかと思います。翻って、借り手の我々もこうした金融機関が気にしているはずの採算の考え方を理解し、条件を引き出す良い材料として活用していきたいですね。

 

〇まとめ:今、融資の目が強くなってきている?

今回は「融資の目・採算の目」という2つの着眼点を取り上げ、金融機関がいかにリスクに対して神経をとがらせているかを説明しました。不良債権を持たないために活用する「融資の目」のみならず、収益を達成しようとする「採算の目」にも守りの部分が非常に大切な要素となっており、借り手はこの背景を理解して交渉を行う必要があります。なおこうした一連の考え方の根本となる部分は、金融庁HPにばっちり資料が公開されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

日々業績不振のニュースが飛び交い、巻き返しに向けて優良な融資先を獲得しなければいけない金融機関。その一方、積極的にリスクをとったが故の不良債権増加に苦しみ、改めて保守的に融資方針を変更せざるを得ない状況も予想されます。果たして今の日本では、どちらの「目」がより力を持っている環境なのでしょうか。お付き合いされている金融機関のスタンスを、1度こうした見方でチェックしてみるといいのかもしれません。よろしければ、弊社コンサルタントもサポート致します。ご連絡をお待ちしております。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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