財務トピックス(コンサルタントコラム)

グラミン日本設立 貧困から脱却へ

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生活困窮者に無担保で少額を融資するバングラデシュのマイクロファイナンス(小口金融)機関「グラミン銀行」の日本版、一般社団法人「グラミン日本」が13日設立された。理事長に就任した明治学院大大学院の菅正広教授が東京都内で記者会見し、「経済格差の拡大は深刻で、貧困から脱却する手立てとしてのマイクロファイナンスが日本でも必要とされている」と話した。グラミン銀行の日本版設立は初めてで、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス博士が会長を務める。貸金業者として13日から事業を始め、10年後をめどに預金取扱金融機関への移行を目指す。

生活保護の受給資格者やシングルマザーなどの低所得者で、原則として東京都中央区に置く法人の拠点から1時間圏内に住む人が融資の対象。借り手は5人1組の互助グループを作り、最初に借りた2人の返済状況に応じて残りの3人に対する融資の可否が決まる。

※上記文章は、下記URLより引用。

(2018年9月14日 毎日新聞記事

https://mainichi.jp/articles/20180914/k00/00e/040/238000c)

 

マイクロファイナンスで有名なグミラン銀行が13日、日本で事業を開始致しました。これまで、2017年8月に一般社団法人グラミン日本準備機構を設立し、寄付やクラウドファンディングなどにより事業資金を集め、当該資金を元手に今後融資を提供していく計画です。

グラミン銀行のビジネスモデルある「マイクロファイナンス」について改めてご説明させて頂きますと、日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、マイクロファイナンスとは「貧しい人々に対し無担保で少額の融資を行う金融サービス」と定義付けられております。グラミン銀行の成功によりマイクロファイナンスが着目され、世界中でマイクロファイナンス機関が設立されて貧困層へ対する融資が行われるようになりました。

 

グラミン銀行は1983年にバングラデシュで設立され、同国において貧困に苦しむ人たちの自立を促してきました。5人1グループによるセンターミーティングを毎週開き、また金融トレーニングを行うことにより、極めて低い貸倒率にて推移しております。

またバングラデシュのみならず、アメリカで設立されたグラミンアメリカにおいても、約10年間で10万人に対し9.4億ドルの融資を行い、社会的な自立支援などを通じ多くの雇用の創出に寄与してきました。グラミン銀行のビジネスモデルは、発展途上国のみならず先進国でも貧困対策として効果があることを証明してきました。

 

そして、なぜ日本へ進出するのか。それは、日本の貧困が深刻化していることが背景にあります。

厚生労働省の統計によれば、日本の相対的貧困層率は15.6%にのぼり、6~7人に一人は貧困状態にあります。また、ワーキングプアという言葉が存在するように、働いていても収入が少なく、貧困から抜けられない社会問題も存在しております。グラミン銀行はこの社会問題に目をつけ、生活資金ではなく「起業や就労の準備ためのお金」を融資することにより、自立を促し貧困解決に手を付け始めました。

 

上記のような理念を含め、是非日本において成功して欲しいものと思いますが、マイクロファイナンス事業を展開するにおける日本特有の課題も存在します。

先ず1つ目として、日本には多くの貸金業者が存在していることが挙げられます。銀行系のカードローン会社や消費者金融会社も多く、低収入の個人であったとしても少額であれば比較的低利で融資を受けることができます。これに対しグラミン日本の融資額は20万円、年利6%であり、既に存在している事業者と競争していくに際しては金額の上限、及び金利の設定を弾力的に対応することが必要となります。

 

2つ目に相互グループにおける牽制機能が適切に発揮されるか否か、という点です。

バングラデシュにおいてこのビジネスモデルが成功した背景には、5人組グループを組成することによる牽制機能が働き、元来面識のある者同士が参加するコミュニティ内において、返済できなかった場合の風評リスクがあったことが要因にあります。コミュニティの結びつきが弱くなっている日本において5人組グループを組成することの牽制機能が働くか否か疑問が残り、工夫が必要かと思います。

 

日本における貧困対策については効果的な対策が無い状況です。グラミン日本が貧困撲滅の一助となると共に、本件を契機に貧困率の対応策につき議論が活性化し、その他有効な施策・サービスが生まれ日本の貧困率の低下に繋がることを期待しております。

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【この記事を書いたコンサルタント】
財務支援部

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