財務トピックス(コンサルタントコラム)

長崎地銀来年4月統合ふくおかFG・十八銀、公取委が承認

長崎県での地方銀行再編をめぐり、公正取引委員会は23日、親和銀行を傘下に置くふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行の統合を認めることを決めた。24日にも発表する。1千億円弱の融資企業が競合する他行に借り換えるメドがたち、経営統合によって同県の中小企業向け融資が独占状態になることを回避した。正式な通知を受け、両社は2019年4月に経営統合する。

(2018年8月24日 日経新聞記事

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34512580T20C18A8MM8000/)

 

2社の統合は当初は2017年4月に予定されておりましたが、ふくおかフィナンシャルグループの傘下にある親和銀行(本社:長崎県佐世保市)と十八銀行(本社:長崎市)が統合することにより、長崎県内の融資シェアが75%に達することを公取委が独占禁止上の問題だと指摘し反対しておりました。その為、審査が長期化し、統合が2度延期された経緯があります。

公取委の反対に対し、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行が長崎県内に持つ1,000億円弱の貸出債権を、周辺の地方銀行など約20の金融機関へ譲渡することによりシェアを65%へ低下することによりし、長崎県内において競争が確保されるという判断から、公取委も統合を求めるに至りました。

 

地方における金融機関の統合は全国各地で動きが見られ、同時に第一地銀と第二地銀の統合はインパクトが大きい為、注目が集まります。地銀同士の統合により県内に相当なシェアを保有する金融機関が誕生する事態は他のエリアでも想定される為、今回の両行の経営統合には注目が集まっていました。

 

しかし、これで本当に課題が解決されるのかについて疑問が残ります。先ず、これまでふくおかフィナンシャルグループと十八銀行が保有していた1,000億円弱の貸出債権を周辺の金融機関へ譲渡した訳ですが、現在の地方の人口動態・経済環境を鑑みれば、市場は縮小することが予想される一方、銀行にとっては貸出を増強する必要性は変わらない為、一度手放した貸出先の開拓を図ることが想定されます。譲渡された貸出債務のある当該企業におきましても、一度取引関係のある銀行より提案を受ければ取引を断る蓋然性も乏しく、結果的に統合後、数年程度で取引先を再度取り込み、競争環境は低下していくことが予想されます。

 

また、そもそも経営統合に至る背景として、マイナス金利政策の影響や企業融資の伸び悩みなどにより収益力が低下していることが要因としてある訳ですが、経営統合により経費率を下げると共にスケールメリットを追求し、収益力の強化を図ることは一時的な対処に過ぎないと思われます。というものの、地方の経済力が低下傾向にある中、企業融資の採算については競争により更なる低下が見込まれ、また昨今では小売事業者を始めとした他業態の参入により、元来金融機関の基盤であった決済・融資(ローン含む)も他業態との競争が激化している状況にあります。スケールメリットを主な目的とし経営統合を行ったとしても、収益環境の悪化は止まることが無い為、再度同じ課題に直面することが予想されます。即ち、経営統合を行うのであれば、付加価値の創造やビジネスモデルの再構築を行わなければ一時凌ぎとなる可能性が高いものと考えられます。

 

今回の件により、特に貸出債権を譲渡された十八銀行と親和銀行の取引先にとっては良い迷惑であったと思います。譲渡をした対象債権については判断内容を明確にすべきと考えます。今回の結果を地銀再編のモデルケースとするのではなく、持続可能な事業構築を検討する発端となって欲しいと考えます。

【この記事を書いたコンサルタント】
石田 知大

関西学院大学出身。法学部を3年飛び級で卒業後、同経済学部へ編入、財政・金融システムを専攻。
卒業後は船井総合研究所に入社。
異業種からの新規参入、調査分析に関するコンサルティングに関わり、現在は財務診断・改善の提案や成長のための事業計画、財務管理体制の構築といったコンサルティングテーマに従事している。
現場に入り込んでの実態に即した実務の改善や、誰にでもできる仕組み作りの提案などに重点的に取り組む。

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