財務トピックス(コンサルタントコラム)

銀行の「人材ビジネス」で考えるウマい銀行交渉

銀行ってどんなイメージですかという質問に、皆さんはどのように答えるでしょうか。「堅い・高給取り・安定」の様な旧来の銀行員像を思い浮かべる方もおられるでしょうし、最近は金融機関がAIにとって代わられる、マイナス金利で収益が得られない、大幅人員削減といった負の側面も報道されていることから「なくなる業種・不景気な業種」というイメージを持っている方もおられるでしょう。ネットニュースを眺めていると「銀行員の年収は構造不況で300万円以下になる!」のようなドキッとするタイトルも並ぶ時代ですから、いかに花形業種だった頃から激変しているかを伺い知ることができます。

間接金融の担い手として、お金を貸して金利収益で儲けることが本業だった銀行も、お寒い金利環境で金利ではご飯が食べられない時代。銀行と相対される経営者や窓口の方々ならよくご存じかと思いますが、代わりにとばかりに

・クレジットカードの入会

・社長の個人資産を運用するための投資信託や外貨預金

・社長や社員の方向けの役員・従業員保険

といった、本業から派生した金融商品の提案も多く受けるのではないでしょうか。

会社の決算書という財務情報を把握している金融機関の営業マンが、おカネを貸す以外にも多数の金融知識を持ち、様々な提案をくれるのはありがたいこと。一方でそれだけ借り手のセールスを受ける機会も増加するので、相手がどんなものを、なぜ提案してくるのかという知識は持っておくべきではないでしょうか。ホットな話題を取り上げると、ついに”人材ビジネス”の一端も、金融機関が担える環境が整備されましたしね。

 

〇西日本FH、人材紹介に参入 取引先の人手確保を支援

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36873240U8A021C1LX0000/

(2018年10月25日 日本経済新聞電子版より引用)

 

記事の通り、金融庁はそれまで曖昧にしていた金融機関の人材紹介業務に関して、3月に改正した「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」で付随業務として明記し、既に池田泉州銀行(大阪)や横浜銀行(神奈川)、そして記事の西日本シティ銀行グループ(福岡)も我先にと人材紹介の世界に参入する意向を示しています。実務を銀行員が担うというより、これまでの保険窓販やクレジットカードのように、あくまで銀行が行うのは仲介業務にとどまり、紹介フィーを獲得するビジネスモデルのようですが、いよいよ銀行と「今年は工場のラインも拡大しましたし、理系の即戦力が2人ほど欲しいですね」といった会話をする時がやってくるのでしょうか。今回はこのテーマについて考え、ニュービジネスを展開したい銀行に対する、我々のウマい交渉方法、WIN-WINを狙える交渉方法について考えてみましょう。

〇銀行の「ベース」収益と「フロー」収益

銀行が本来の融資業務で何万社と取引先を抱え、日々の業務に忙殺されるなかでも、人材ビジネスという新ステージに飛び込むのは、そこにうまみのある収益を得るチャンスが落ちているからに他なりません。金利収益や為替手数料収益という大切な“根っこ”となる利益=ベース収益が、不況やオーバーバンキングの状況でスカスカになっていくなか、金利の何十倍も速く「チャリン、チャリン」と手数料を獲得できるフロー収益(一時的に得られる収益)が獲れる可能性があり、効率を考えればこちらに傾注してしまいたくなるのも無理ありません。

顧客の仕事内容を決算書と限られた面談時間で把握し、競合の銀行・信金もひしめくなかで急いで稟議を書き、課長や支店長を納得させて何とか融資実行にこぎつけても、得られるのはかんな屑のような金利収益。ちょっと煽情的な書き方をしましたが、たとえば実際に半年間で返済が終了するような賞与資金を金利1%以下で貸付しても、期間あたり金利収益は数万円で、とても人件費等のコストを賄えない、といった話も聞いたことがあります。一方で保険販売・人材紹介・投資信託の販売は融資焦げ付きという銀行最大のリスクも背負うことなく、実際の営業マンの業務も「紹介」の手続きだけで、あとはプロに任せれば収益が落ちるというビジネスモデルです。本業をしっかりと伸ばさなければならないという前提はあるものの、いかに「フロー収益」が欲しい環境にあるか、お分かりいただけたでしょうか。

〇まとめ:相手を知り、己を知って対等な金融取引を

さて銀行の収益構造がある程度わかった段階で、翻って自社の金融取引に関して考えましょう。
・「ベース」:融資や日々の入出金によって、どれだけお金を払っているのだろう?
・「フロー」:銀行の紹介で受けた金融商品やカード、その他のモノでいくらお金を払っただろう?
普通の商売と同様、ベースの収益であってもフローの収益であっても、銀行にしてみればその会社から儲けられる収益は多ければ多いほど嬉しいに違いありません。そして、儲けさせてもらっている「お得意様」には何らかのプレミアを付けたり、融通を利かせてくれるケースもあるはずです。

日々の取引のなかではついつい金利が何パーセントかに目がいきがちな我々ですが、そもそも金利環境が低い今、これ以上不毛な金利のたたき合いを行うことは双方にとって得策ではありません。ならば「自社が支払いしているものに対して、得ているものがきちんと釣り合っているのか=対等な取引環境が作れているのか」をきちんと把握し、不適切だと思うものに関して適切な方法で是正を図ることが大切です。ましてや既にお金を借りるだけではなく、金融商品の仲介はもちろん、今度は人材ビジネスにもできるようになるのが銀行です。相手が収益を得るツールは融資だけではないということを理解し、ぜひ1度今の取引を収益の面から見直してみることをお勧めします。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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