財務トピックス(コンサルタントコラム)

超低金利の世界が終焉を迎える時~金利について学び直そう~

〇超低金利の世界が終焉を迎える時 ~金利について学び直そう~

借り手である企業にとって、金利はいつの時代も低くあってほしいものです。金利は損益計算書の営業外費用「支払利息」の部分に入り、膨らめば膨らむほど本業の収益である経常利益を棄損してしまいます。また資金繰りの観点で見ても、金利が高ければ毎月10日や月末と定めた借入返済日に、元金と合わせて金利分のお金もなくなってしまうので、やはり金利は低いに越したことはないと言えるでしょう。
ところで今の日本の金利環境を見ると、もはや金利1%以下の融資など当たり前の水準となり久しく、その環境は継続している状況です。職業柄、金融機関の方とお会いする機会も多いですが、平成1桁台に入社したある金融機関の上席が「今の若い職員は、金融情勢に合わせて金利を引き上げる交渉なんてしたことがないのでは」と話しておられたのが印象的でした。たしかに筆者も3年だけ銀行の営業マンをしていた経験がありますが「金利を下げたら借りてくれますか」という泣きの交渉をしたことはあれど、市況を理由に金利を上げさせてくれと話す日は、永遠に来ないのではと感じてしまうような環境で働いていました。おそらく企業側にも、こうした低金利が当たり前という感覚が、既に根付いているのではないでしょうか。
ちょっと待ってください。たしかに、ここ数年金利は低下の一途で国内資金需要が乏しく、日銀緩和政策の継続等が理由となってますます「金利は低いままだ」と錯覚してしまう時代が続いています。しかし、「そもそも、金利とは何に影響されて変化するものなのか」という大原則を忘れてはいけません。資金需要?景気?政策?そのすべてが正解と言えますが、1つ重大な要素が抜けています。それが以下の記事で言及のある「外圧(外国の各種情勢)」です。

〇金利異変、注目は3つの「3%」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36159390V01C18A0000000/
(2018年10月5日 日本経済新聞電子版より引用)

日本がいつまでたっても日銀の掲げる「物価上昇2%」を達成できず、会社の業績は良くなるものの、投資や給与に反映されないことで景気を停滞させている間、アメリカは同じ緩和策を活用して順調に景気回復しており、金利が上昇局面に来ているのです。米国の雇用統計を見ていると完全雇用に近い状況となり、リーマンショック時に行った金融緩和(金利を下げることで市場のカネ周りを潤沢にさせ、投資等を活発に行わせることで景気を回復させる)が、役目を終えようとしている段階まで来ました。
「難しい話だな。何が言いたいんだよ」と感じた方へ。要は
①日米の金利差が広がる
②市場のマネーは金利収入目当ててアメリカ(債券)に集まる
③低金利日本国債は投資先としての魅力を失い、投資家に売られる
④日本国債の金利は、上昇する
⑤借り手の我々に適用される金利も一緒になって上昇する
というシナリオが発生するかもしれない、と言いたいのです。
超低金利の時代は、いつの日には終焉を迎えるかもしれないー。今回は、超低金利が終わった時に何が起こるのか、超低金利の時代だからこそ、どんな意識を持つべきなのかを書いていきます。

〇「市場金利=低い金利」という勘違い

皆さんは、融資を受ける際に「タイボ(TIBOR)」とか「短期市場金利」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これらは融資先に適用する金利のベースとなる市場金利のことを指し、国債などの金利変化に左右されるものです。そして前述の通りこれら市場金利は、空前の低レートをたたき出している状況です。一方、金融機関ごとで定めている「短期プライムレート」は一般的に1%以上(1.475%~1.975%程度)であり、現在では融資の多くが短期プライムレートではなく、市場金利を活用して金利を下げている背景があります。難しいので例示すると、

【例】

株式会社Aは、新規の工場設備の購入のため2,000万円の融資を銀行から受けることになった。銀行からは、「Aさんなら、基準金利はさておき銀行が収益としてもらう金利は0.5%でいいです」と言われている。
この時
①銀行が勝手に決めた短期プライムレート(1.475%とする)を基準として採用すると、
実際の借入金利は 基準金利1.475%+銀行の収益金利0.5%=1.975%

②タイボ(TIBOR)という市場により変動する市場金利(0.04%とする)を基準として採用すると、
実際の借入金利は 基準金利0.04%+銀行の収益金利0.5%=0.54%(①に比べて▲1.435%)

上記のように同じ会社の融資にも関わらず、現在はどの金利を基準にして融資を組んでもらうのかを変えるだけで、1%以上の金利差が生まれてしまう状況にあります。
「銀行が勝手に決めているレート(短期プライムレート)は、今の市場環境があまりに低金利なので、実態に合っておらず高い。だったらめちゃくちゃに安い市場金利で借りたほうがいいや」ということですね。
多くの企業は、これら市場金利が安い期間が長くなり過ぎて「市場金利という借入の仕方=安い」という画一的な判断や、銀行の説明不足による勘違いをしているケースがあります。しかし、前章のような金利上昇局面が発生し、市場金利が上昇し始め、例えば0.04%だった市場金利が、2%になったらどうでしょう。例でいけば、借入金利は0.54%から2.5%に跳ね上がり、利払いは一気に膨れ上がることになります。その時、企業は利払いに耐えられる財務をしているでしょうか。
・「市場金利」「プライムレート」「固定金利」の違いをいま一度勉強する機会を持つ
・会社がどの程度の利払いに耐えることができ、今現在どのような金利体系で借入しているか見直す
・銀行が説明してくる「金利条件」について、ただレートを低くすること以外に交渉ができるようになる
市況が少しずつ変化している今だからこそ、これが大切になってくるのではないでしょうか。

〇まとめ:自社の借入と市場金利の関係を見直ししよう

今回は米国金利上昇に伴い、長く低金利の環境が続いていた日本国内でも金利上昇の可能性が議論されるようになってきたという話から、こうした低い市場金利が「いつか上がるかもしれない」という当たり前の事実を忘れてしまうような、現在の環境に警鐘を鳴らしました。
そうはいっても日本の物価上昇率は2%に程遠く、金利上昇によるマネーの供給減少=景気への悪影響、という効果を考えると、まだまだ金利は上げられないのかもしれません。しかし可能性が1%でも潜んでいるのなら、経営リスクの1つとして、今の内から自社の借入を見直す価値はあります。ぜひ一度、契約書のコピーを確認してみて下さいね。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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