財務トピックス(コンサルタントコラム)

実は銀行に見られている「役員報酬」のハナシ

役員報酬と聞くと、偏見ながら大金持ちの社長がもらう高額所得を想像してしまうのは、筆者だけでしょうか。役員報酬とはサラリーマンが得る「給与」とは税制が異なり、企業経営に相応の責任を持つ対価として、会社より経営陣に支払いされるものを指します。非上場企業では、年1回作成する決算書の販管費明細や勘定科目明細に支払金額・支払った相手方が掲載されるため、経営努力がいくら経営陣に還元されているか、多くの場合一目で分かるようになっています。

上場企業の決算(=有価証券報告書)でも、役員報酬の総額、そして個人に1億円以上の報酬等を支払いする場合は、当該役員の個人名と金額を開示することが義務付けされています。上場企業は、オーナー企業と異なり利害関係者が多数いるため、実態と乖離した高すぎる報酬を経営陣が取り過ぎている場合、外部から厳しい反発を食らう可能性があります。また、最近では日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)が、過年度にわたって巨額の報酬隠しをしていた容疑に掛けられ、改めて「役員報酬」の在り方についての議論がなされていましたね。

 

〇役員報酬、「決め方」の開示義務付け 金融庁方針

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38569350V01C18A2MM8000/

(2018年12月5日 日本経済新聞電子版より引用)

 

そして掲載した記事の通り、カルロス・ゴーン氏の事件発生に伴い、金融庁は上場企業に役員報酬の決定プロセスを明示することを義務付けるようです。企業の利害関係者を保護するための企業統治の強化のため…ということで、これまで以上に上場企業はガラス張りの経営を求められます。

 

「上場企業は大変だね。うちは非上場で株は一族が持つオーナー企業、責任も利益も自分たちが持つからさ。」

おっしゃる通りです。オーナーとして企業存続の責任を背負い、対価として報酬を得る。上場社長よりもある意味本当に責任の対価を得るべきはオーナー企業の経営陣であり、筆者も税制さえ守れば好きなだけ報酬を取るだけの権利があると考えます。1つの注意点を除けば、ですが。

というのも役員報酬が掲載されているのは決算書、決算書を大切にしているのはそう、金融機関でした。金融機関もオーナー企業であればあるほど、この「役員報酬がいくらなのか」は、実はかなり気にしています。どのように気にしているのか、知っておくべきことはないか。今日はこのテーマについて取り上げます。

 

(※金融機関の「決算書至上主義」に関する記事は、以下をご参考ください)

「うちの格付、今いくつ?」東芝問題で考える銀行取引

 

〇企業・社長は一心同体という考え方

オーナー企業は、社長(※)と企業の存亡が一心同体というケースがほとんどです。融資を受けるために社長が個人保証を提供することもあれば、逆に業績が大幅に向上した際には例年よりも社長が役員報酬を貰えることもあるでしょう。経営と所有の分離が図れている上場企業とは異なり、「社長が立たねば企業が立たず、企業が立たねば社長は立てない」が一般的です。

金融機関もこうした実態はよく理解しており、

・役員報酬が「誰」に流れているのか(オーナー、社長、社長一族、他人、従業員…)

・金額はいくらか(生活費程度or高額なのか、社会通念上適切か、業績対比問題ない水準か)

・仮に企業の存亡が危うくなった際に、役員報酬を「返納」できる状況にあるか

という、社長やその他の利害関係者の「資金的余力(本質的な資金繰り能力)」に関する分析を行っています。

たとえば、企業が赤字でも一心同体である社長が年間1億円超の高額報酬を取っていることが分かれば、金融機関は「実質は利益が出ているけど、できる限り社長の財布にお金を還元しているのだな」と判断するかもしれません。逆にいくら企業が黒字のように見えても、役員報酬が年間10万円なら「おいおい、社長は普段どうやって生活しているんだ。もしかして、その他の経費を使い込んでいるのでは…」と疑いをもたれるかもしれません。

前者あれば、仮に業績が傾いた際に、社長が溜めていた身銭を切ってでも大切な会社を守ろうとすることが想定されます。しかし、後者の場合は、社長が副収入でも持っていない限り、企業が社長の財布に泣きつくことは難しいと想定されます。

金融機関はこれらの事情を勘案し、「この会社は安全か?お金を貸すに値するのか」を判断しており、つまり融資を受ける際には役員報酬額が案件判断要素の1つになっているということです。まさか、自分の財布の中身まで想定されていたとは…と感じられたかもしれませんね。

 

(※)記事の内容を分かりやすくするため「オーナー企業と社長」という表現をしておりますが、企業によってはオーナー(株主)と社長が一致していない場合や、役員報酬を社長には支払っているが、オーナーには支払っていないというケースもあり、この限りではありません。

 

〇まとめ:経営と所有の色分けをしてみよう

今回は、最近世間を騒がせているあの会社の役員報酬に関する事件から、非上場企業においても決算書に役員報酬が掲載されており、これを金融機関が融資などの判断要素に活用しているということを書きました。

ところで、2014年2月より施工されている金融庁の「経営者保証に関するガイドライン」によれば、非上場企業においても企業・株主・経営者に関してきちんと色分けを行い、上場企業のように経営・所有の分離が図れている堅調な企業については、その線を曖昧にする「個人保証」を必要以上に求めないという方針が打ち出されています。記事では企業と社長が一心同体と述べ、ときにこうした合算の考え方が金融機関とのやり取りで有効に働く場合もあるものの、金融業界の時流は「適切な方法で情報の開示を行い、明確な分離を図る」ことを求めています。役員報酬の決定プロセスや経営・株式・企業の財務に関して、改めて今整理を行う段階に来ているのかもしれません。そのために、1度よく自社の決算書を読み解く時間は儲けてみてはいかがでしょうか。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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