財務トピックス(コンサルタントコラム)

定番の株価対策~役員退職金の活用~

本日は前回の「自社株式の評価額はどのように算出されるのか」に続きまして、

多くの方が最も興味がある「株価対策」について具体例を用いてご説明します。

今回は、「定番の株価対策」として役員退職金を活用した、株価対策についてご紹介いたします。

見出しは以下のようになっております。

  1. 役員退職金活用を活用した株式対策による効果の具体例
  2. 役員退職金の活用で押さえておくべきポイント
  3. 実は税制改正で役員退職金による株価対策の効果が減少した

注意事項

当ページの情報は国税庁ホームページにおける、平成29年の税制改正後の情報を元に記載させていただいております。税制改正などにより、数値や言葉の表現などが変更される場合がございますのでご留意ください。

1.役員退職金活用を活用した株式対策による効果の具体例

まずは、前回のおさらいとして、自社株式の評価額を算出していきます。以下の前提をもとに計算していきます。

評価方式は原則的評価方式で会社規模は大会社ですので、「類似業種比準価額方式」によって計算されます。

類似比準価額方式の計算式はこちらです。

類似業種比準価額方式の計算式を用いて計算すると上図のようになり、評価会社の1株当たり株価は392円になります。評価会社の株価総額は3億9,200万円になります。この金額に対して、税金が発生します。

上図の計算は退職金の支給を行わなかった場合を前提としておりますので、役員退職金を支払った場合は以下のようになります。

3億円の役員退職金を支払い、全額損金算入になった場合は上図のように「簿価純資産額」と「利益金額」が変化します。利益金額において、負数の場合は0円として計算します。

上記の対策した時の条件で先ほどのように計算すると下図のようになります。

こちらの計算で評価会社の1株当たり株価は141円になります。評価会社の株価総額は1億4,100万円になります。

退職金を支払わなかった場合と支払った場合の差額は2億5,100万円になります。

譲渡を考えていらっしゃる場合は2億5100万円も調達すべき資金が浮くことになるので、とても利便性があります。

 

2.役員退職金の活用で押さえておくべきポイント

<ポイント>

1.退職金は税負担が少ない

退職金の課税所得は下図の計算式になります。

こちらで計算された課税所得に対して、税率が掛かってきます。

しかし、役員等の勤続年数が5年以下の場合は、「2分の1」を乗じることが出来ませんのでご注意ください。

また、勤続年数において1年未満の端数がある場合はその端数を1年に切り上げます。

例えば、勤続年数が5年2ヵ月の場合は6年として計算します。

 

2.役員退職金が損金算入にならないと意味がない

類似比準価額方式の「評価会社の利益金額」は「法人税の課税所得金額」に「受取配当等の益金不算入額」と「損金算入した繰越欠損金の控除額」を加算し、「固定資産売却益、保険差益等の被経常的な利益」と「受取配当の所得税額に相当する金額」を減算して求められています。

ここで注目していただきたいのが利益金額とは「法人税の課税所得金額」がベースになっているという点です。

つまり、損金算入されない役員報酬金が出た場合は「評価会社の利益金額」の分母の部分を減らすことが出来ないため、評価額は上がってしまい、あまり効果が出なくなります。

 

3.役員退職金を全額損金算入にするために押さえておくべきポイント

①損金算入される役員退職金の基準

役員退職金の一般的な計算式として下図の功績倍率法というものがあります。

「功績倍率」に関しては様々な見解があり、どのくらいの倍率が上限などというのはないため、過去の功績倍率における裁判事例での倍率を1つの基準として考えられることが多いため、掲載します。

昭和56年11月18日の東京高裁判決によると功績倍率は以下のようになってます。
社長:3.0 、専務:2.4 、常務:2.2 、平取締役:1.8 、監査役:1.6

しかし、様々な見解や、判決事例があるため、一概には上記の数値が適正な倍率とは言えないため、詳しくは専門家の方にご相談ください。

また、「最終報酬月額」では経常性が認められないものは損金算入することはできません。
つまり、退職する寸前に、最終報酬額を吊り上げたとしてもその金額が最終報酬月額としては計算されませんのでご注意ください。役員退職金額を上げるために、無理に役員報酬を上げたとしてもその分、課税所得は増えますので、計画的に調整することお薦めします。

②役員退職金支給規定や議事録を作成しておくこと

規定を作成しておくことで、税務署等への説明根拠とすることができ、恣意性を排除することが出来ますし、他の役員が退職した際の退職金の説明根拠にもなるため、退職金に関する揉め事もなくなります。しかし、退職の直前に規定を作成すると節税のために慌てて規定を作ったかのように疑われる可能性があるので、計画的に作成することお薦めします。

 

4.特別損失として計上する

役員退職金は必ず「特別損失」として、計上してください。

特別損失は本業とは直接的に関係ない部分で臨時的に発生した損失であるため、役員退職金は特別損失として計上できます。

また、特別損失として計上することで、多くの銀行が注目する可能性がある経常利益には影響が出ないため、銀行の格付けを落とす可能性を少なくすることが出来ます。

 

5.自己資本率が10%を切らないように調整する

自己資本比率は多ければ多い程良いですが、こちらも銀行の格付け基準として、10%を格付けの基準にするケースがあるため、なるべく10%を切らないようにすることが重要です。10%を切って、銀行の格付けが悪くなり借入が困難になってしまい事業が安定しなくなっては元も子もありません。

 

3.実は税制改正で役員退職金による株価対策の効果が減少した

今まで紹介してきた、類似比準価額方式において平成29年の税制改正により、下図のように変わっています。

改正前までは「評価会社の1株当たり利益金額」にたいして3倍しており、1:3:1として計算されていましたが、改正によって、1:1:1の計算になりました。

つまり、以前より、役員退職金を活用して、利益額を減算してもその効果は減少しています。

実際にその効果がどのくらい減少したかを見出し1の具体例を用いると下図のようになります。


改正前であれば株価総額は8,400万円まで下げることが出来ました。ゆえに、改正前だと対策なしの株価総額3億9,200万円が対策することで8,400万円まで減っていたことになります。その改正前の差額は3億800万円です。改正後の差額は2憶5,100万円です。
改正前と比べると改正後は5,700万円分効果が減少していることになります。結構大きな差ですね。

つまり、平成29年の税改正により、役員報酬金を活用した株価対策の効果は減少していることになります。

このような税制改正という背景から様々な株価対策を検討していくことをお薦めしております。
次回以降も株価対策に関してコラムを執筆していきます。

 

【この記事を書いたコンサルタント】
島田 隆守

福岡県出身。大学卒業後、船井総合研究所に入社。ビジネスDD、事業承継、企業価値算定、大手企業の再開発案件に関するコンサルティングに関わり、現在は財務分析・改善の提案や成長のための事業計画、財務管理体制の構築といったコンサルティングテーマに従事している。数字にこそ圧倒的根拠があると考え、数値分析を強みとし、日々経営者様と共に汗を流す姿勢で取り組んでいる。

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