財務トピックス(コンサルタントコラム)

取引先が財務を変える?「商流」の重要性

〇取引先が財務を変える?「商流」の重要性

「卵は1つのかごに盛るな」は、投資を行う際の大原則を表すことわざとして有名です。1つの銘柄(かご)に全財産(卵)をつぎ込むのではなく、国内株式から海外株式・債券にも分散投資を行う(かごを分ける)ことにより、投資リスクを低くしなさいという意味で、大負けしない手段として活用されます。これは企業経営における「取引先」においても同じことが言え、少ない取引先で商売を行うのではなく、ある程度分散させておくことで、不況の際に一部の先がなくなっても連鎖倒産を回避する可能性を高めます。取引先20分散、1社売掛5%以下という目標を掲げて経営を行いなさいとも言われるようですが、その通りの商売ができればたしかに不況時にも耐えられる会社ができそうですよね。

ところでリスク面の話とは多少趣向は変わりますが、実際に取引先がどこかという情報は、企業のこんな部分にも大きな影響を与えるようです。

 

「アマゾン関連」第3幕? 中堅中小に広がる

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34305230X10C18A8EA6000/

(2018年8月18日 日本経済新聞電子版より引用)

 

大手ECサイトを運営するアマゾン関連の仕事を受注して成長する比較的規模の小さい上場企業の株価が上昇しており、投資家も「Amazon銘柄はどこだ」とばかりにこうした関連企業を探しているとのニュースです。株式は企業単体の価値により市場で値決めされそうなものですが、マンモス企業であるアマゾンとの取引がある企業ともなれば、「引っ張られて」業績が拡大し、価値も伸びていくと評価されるわけです。

 

「それは上場企業の話だろう。一体この話のどこに財務的な学びが…」と思った方はお待ちを。非上場企業ならば取引先が直接自社の株価に影響を及ぼすことはありませんが、実は資金調達に欠かせない金融機関が、貴社の取引先を決算書から精査しており、結果が貴社の「財務的な見られ方」に影響を及ぼしていることをご存知でしょうか。そこで今回は、こうした中小企業の「取引先」に関する話題を取り上げたいと思います。

 

〇貴社の売掛先を確認しよう

皆様の感覚としても、たしかに知る人ぞ知る東証一部上場企業Aとの1億円の売掛案件を獲るほうが、どこの馬の骨ともわからない無職の個人Bと1億円の商売をするよりもはるかに「売掛金の質が高い」のは理解できるかと思います。Aならば財務体質が抜群、情報公開もきちんとしている上場企業なので、数億円単位の売掛金が出ようが必ず期日までに支払いをしてくれそうですが、Bは背景となる会社の信用もなければ到底1億円など支払えなさそうで…といったように、金額には見えてこない信用の世界がありますよね。

 

決算書を分析していく際も、こうした感覚が非常に大切です。

・貸借対照表の資産の部には2億円もの売掛金。でも、その8割は潰れかけで有名な会社、Aだった…

・資産の部に受取手形1億円が計上されている。が、2年前から回収できていない不渡手形である…。

例えば、上記のような事象が貴社決算書の勘定科目明細から、銀行に読み取られてしまったらどうでしょう。「資産の部には高い金額で資産が掲載されているけど、実際には取引先がボロボロで売掛債権には価値がない。資産価値・企業価値が低いな」と判断されるかもしれません。つまり、債務超過でないきれいな決算書を作っていたとしても、取引先を毎年安易に変更する・よく確認せずに財務体質や支払い状況の悪い顧客を獲得することが、財務面・資金調達面でリスクとなる場合があるのです。

ぜひ1度、貴社の中でも勘定科目明細を3年程度ならべ、売掛となっている企業の情報や金額、過去からの推移をチェックしてみてください。果たして、売掛先のお客様の状態はどうなっているでしょうか。案外、売掛債権なんて数か月でなくなるからとホッタラカシにしているのではないでしょうか。取引先のせいで財務が悪いと評価されないためにも、最低でも上位5社程度はよく確認したいところです。

 

〇取引先との「商流図」を作ろう

また取引先がどこかという部分が整理できたら、次にやりたいのが取引先と貴社との「商流図」を作成し、必要に応じて金融機関との交渉の場で活用することです。

「月末締め、翌月支払いで取引先からモノを仕入れる。モノが来るのは当月末」

のように、企業間取引にはモノ・カネの流通タイミングに独自のルールがあることがほとんどで、ルールに応じて「支払いが先だから借入がいる」「モノの販売が先だから売上入金が支払いよりも先に来る」といったような独自のモノとカネの流れが発生します。金融機関は商流に基づいて本当にお金がいるのかいらないのかを判断し、融資金額や期間を確定させるため、企業が戦略的にわかりやすい「商流図(モノとカネの流れ)」を渡して説明することで、希望通りの資金調達を達成する確率を飛躍的に伸ばすことが可能です。例えば、その取引先がアマゾンクラスの大企業であればなおさら、優良な商流を活用した好条件の融資が実現する可能性もあります。取引先が増えるたびに金融機関に商流図を提出する必要はありませんが、毎年の決算書を渡す時などの節目に、主要取引先分の商流図を用意することは、非常に有効です。

 

〇まとめ:取引先も財務の一部

今回は、アマゾンというマンモス企業の取引先が、アマゾンの信用力に引っ張られて株価が伸びているというニュースをきっかけに、実は中小企業においても取引先の内容が財務面で非常に重要だということをお伝えしました。決算書はあらゆる会社・個人との商売の中で発生したやり取りを組み合わせて完成する、複雑な数字のパズルです。自社の財務内容だけに影響されるピースもあれば、取引先の力が大きく影響するピースも存在するということです。複雑なパズル(決算書)を紐解く商流図等を準備し、できれば取引先という「社外の環境」にも気配りした情報を、金融機関に説明することで有利な条件を引き出したいものです。

「そうはいっても価値の算定方法なんて分からんなあ。決算書の読み込みもしたことがないし…」

そんな方はぜひ、弊社金融財務支援部までお声がけください。今回のようなアマゾンの小話も交えながら、ぜひ重要なポイントをお伝えしていきたいと思います。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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