財務トピックス(コンサルタントコラム)

元メガバンク行員が考える「取引銀行の変更」

〇元メガバンク行員が考える「取引銀行の変更」

銀行員が絶対にカネを貸さねばならない月、9月―。

日頃使っていない当座貸越枠の取引があるだけで、あまり訪問もない銀行担当者が、今月だけは突然「ちょっと近くを寄りまして」とやってくる。世間話もそこそこに、「社長、今月ご資金のニーズはいかがでしょう。うちの銀行の枠もずっと空いたままですし、良ければ3,000万円ほど利用されませんかね…?」と笑顔を貼り付けて営業してくる…こんな話は、経営をされるなかでの恒例行事となっているのではないでしょうか。

銀行勝手に3月決算。9月は半期決算月であり、営業マンとしてお客さまの融資残高を減らしてしまうわけにはいきません。支店長・部長の号令の下、今月はどの銀行も目の色を変えて売り込みしてくるはずです。

しかし既存顧客の中だけで案件を獲得し、「いいよ。1ヶ月だけ借りてあげるよ」という社長のお情け頂戴を集めても、厳しいノルマは達成しにくいのが銀行員の常。そこで彼らの頭に浮かぶのが、取引銀行の変更を伴う「融資の肩代わり」を狙うというものです。

最近では国際業務での収益確保にシフトし、国内業務を集約しつつあるメガバンクが抱える顧客を、小回りの利く地方金融機関が狙っているというニュースも出ていました。

〇メガ→地銀、代わるメイン行 国際規制背景に

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35071000W8A900C1EE9000/

(2018年9月6日 日本経済新聞電子版より引用)

 

記事のなかでは各銀行がおかれている背景に焦点が当てられていましたが、

我々借り手にとって大切なのは、その反対の話。

「付き合う銀行を変える時の注意点やタイミングは?」

「うちならば、どんな銀行と付き合うべきなのか?」

ということです。そこで今回は元メガバンク行員として地銀からの肩代わりも、地銀へ借入をとられた経験も持つ筆者が、このテーマについてポイントを絞って解説したいと思います。

 

〇B/Sの転換期は銀行の再考期

資金調達の窓口である銀行は切っても切れない関係であり、ましてや融資を1番出してくれているメインバンクともなれば、自社の今後の命運を左右する存在です。そんな相手を、営業に来る所がたくさんあるからと毎年のように変更するのが良くないことは、言うまでもありません。なかには、銀行なんてカネが借りられるならどこだっていいと邪険にしていたことが祟り、経営が苦しくなった時にはどの銀行も助けてくれなかった、という事例を聞くこともあります。銀行を変える=企業経営の継続に不可欠なカネの出先を変える、ということだと認識し、安易な変更は避けたいところです。

では、それでも取引銀行を変えるのはいつなのか。

もちろん個別の理由はあるにせよ、多くは「B/Sを動かす時」こそ銀行を見直す転換期だと感じます。

B/S資産に計上される「建物・土地」についた担保を外したい

・注文住宅事業で展開していた企業が、先行投資の必要な建売分譲事業をはじめる             (=B/Sで運転資金が発生する業態に変化する)

・事業承継に向けてB/Sの借入・個人保証を整理したい

これらは全て銀行との合意形成・交渉が必要となる場合が多く、銀行が協力的に動いてくれないと前進できない取組みの数々です。

・「今の状況で担保は外せないですね…財務状況が改善したら、またお声がけください(=それはいつ?)」

・「今の状況では、なかなか新規事業の高額の融資は難しいですね…(=他行はどうなの?)」

・「個人保証を外せるのは上場企業だけですよ(=本当に?非上場での事例はないの?)」

銀行が長年の取引行という立場を活用しながら、保全を取り続けるためにお茶を濁すこれらの発言をしている、その時こそまさに、新規行からセカンドオピニオン(他の意見)を聞く時なのかもしれません。多くの場合、これらセカンドオピニオンが、“長年の取引”というしがらみを打開する最善手となるはずです。

 

〇付き合う銀行は「上が来るか」で決めよ

では、貴社にとって付き合うべき銀行とは、ズバリどんなところなのでしょう。もちろんこれだけが判断基準ではありませんが、いち要素として「貴社に最終権限者(支店長・部長)が来ているか」を確認するべきです。銀行出身の人気小説家・池井戸潤氏の描く数々の銀行員像にも見られるように、銀行員は縦社会のなかで生きており、支店での支店長・部長は絶対的権力者です。この最終権限者に事業レベルで貴社を理解してもらい、向こうから定期的なコンタクトを取ってもらえる環境があれば、それだけで融通の利いた資金調達環境を形成しやすくなると言えます。もちろん担当者のスピード感があることも大切な要素ですが、担当だけではお金を貸付する意思決定はできず、部長に各種説明をしてもらうにしても、その情報は現場の声ではなく、銀行員フィルターを通した二次情報に薄まってしまうのです。

実際に、私が銀行員として働いている時も「部長銘柄」のお得意先様は、当然ながら部長の会社への理解が早く、融資の稟議もスパッと通してくれるといったことがありました。

債権者―債務者、というビジネス関係ではあるものの、銀行員も1人の人間。情報開示を正々と行う企業には好感を持ち、何とかしてあげたいという気持ちがわくものです。そして、その好感を与える「相手」を間違えず、それがうまくできない相手なのであれば、付き合う銀行を変えてでも最善手を目指したいものです。

 

〇まとめ:対話のある銀行取引を

今回は、銀行の「肩代わり」に関するニュースを基に、会社が取引銀行を変更するにあたって、どのようなことを考えるべきかに注目しました。前置きで少し触れましたが、9月の銀行員は決算末の3月同様何としてもおカネを貸さないといけない立場に置かれており、普段はやらないお願い営業も、金利を下げる営業トークも出てくるかもしれません。しかし、あくまでこうしたやり取りは極めて短期的な商取引に過ぎないものであり、不要な資金調達をした会社も、お願い営業で信用を失う銀行員も幸せになれません。

ぜひ、この記事を読んで共感頂いた皆様には、

・適切な銀行に対して

・適切なタイミングで

・適切な情報を定期的に

出すことにより、弊社金融財務支援部の目指す最善の金融取引を達成していただきたいと願います。その流れの中で、もし何かお手伝いできることがあれば、ぜひご一緒できれば幸いです。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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