財務トピックス(コンサルタントコラム)

キャッシュレスで金融機関の「為替取引」が剥げ落ちる

〇キャッシュレスで金融機関の「為替取引」が剥げ落ちる

皆さんは、現在どの程度の支払いが「キャッシュレス化」しているでしょうか。交通系・小売系・銀行系・通信系…ありとあらゆる業界がこぞってキャッシュレスサービスに参入し、最近では財布の中は小銭よりもカードの方が多いという方もおられるかと思います。かくいう筆者もつい2年程前は100%現金派だったものが、ここ数ヶ月で決済のほとんどがスマートフォンを用いたものに様変わりし、岩手県への出張時に現金をおろすのを忘れ、現金のみ利用可のタクシーに乗りそうになったことがありました。日本もようやく第4次産業革命(IoT)の影響が顕著になり始めたのでしょうか。
とはいえ、既に都心の決済のほとんどがキャッシュレスになっている中国等に比べ、日本がいまだ現金志向で、前述の通り地方部ではキャッシュレス化するための先行投資を嫌ってなかなか変化が進んでいないという実態もあるようです。政府もこのままでは世界各国から遅れてしまうと、東京五輪前のこのタイミングで、以下記事の取り組みを開始します。

〇キャッシュレス手数料、中小店に3分の1補助 政府方針
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3892825014122018AM1000/
(2018年12月14日 日本経済新聞電子版より引用)

政府は総額3,000億円程度の予算組みを行い、2019年度より中小店舗を対象に、クレジットカード会社などに支払う加盟店手数料の3分の1を補助するとのことで、同じく来年発生するだろう消費増税のキャッシュバック対策としてもこれを積極的に推進するとのことです。
2020年に日本国内にやってくる外国人を顧客にするなら、国ごとに多少の差こそあれ「すみません、現金のみの対応です」では時代遅れであり、補助金がつく今、端末を一気に導入してしまうのも一手ではないでしょうか。

ところで、技術の台頭により割を食うのは…「銀行・信用金庫」です。今まで普通・当座預金から振込されていたはずの各種支払いが、キャッシュレス技術により口座振替に変更され、さらに下手をすると口座という受け皿を仲介しない商取引になる可能性があります。これはすなわち
・金融機関が、当該会社の「商取引」を捕捉できなくなる(口座情報が不明瞭になる)
・振込件数の減少に伴い、為替手数料収益を確保できなくなる
という2つのリスクがあり、金融機関も自らキャッシュレスの推進者として母数の確保に躍起になっています。低金利の上為替収益まで厳しいとは、金融機関も大変な世の中ですが…。
実はこの変化に気を付けないといけないのは、我々金融機関の「利用者」も同様です。
それはなぜかに関して、今日は簡単に取り上げたいと思います。

〇「分からない」は全てマイナス評価の金融機関

たとえば、ある会社Aが最新の決済キャッシュレスサービスBを導入することにより、毎月200件以上C銀行の振込をしていたものを、口座振替や口座を介しない取引へとシフトしたとしましょう。今まで毎月高い振込手数料を払って振込していた支払いがBによってコスト削減され、支払いが口座振替にまとまり「サービスA コウザフリカエ」のような形式で一括引き落としになったので、経理部門も支払い関係が明確でハッピーエンド…なのですが、ここで取引しているC銀行の気持ちを考えてみましょう。
今までインターネットバンキングの記録を追えば、総合振込はともかく都度振込なら「フナイソウゴウケンキュウジョ」のような支払先名・金額・出金日等が一目瞭然だったにも関わらず、支払いは口座振替で1本にまとまり、一部は口座の外で取引しているので現預金の残高そのものが減少してしまっている…このように、金融機関はキャッシュレスサービスで会社の商売の流れ=融資タイミングが分からなくなり、審査に必要な情報が自然と獲得できなくなる状態に陥る可能性を孕んでいます。
キャッシュレス、通貨の電子化は世の潮流。次のタイミングで銀行口座の在り方も変化するのは当然予想される出来事です。しかし、この潮流に流れるがまま、会社が「見えなくなる情報を補足し、金融機関に出す力(=資金繰り表、案件受注明細、借入明細の適切なフォーム)」を蓄えていなかったら…。
金融機関から「分からないから、金融機関としてリスクを取らないため保守的にマイナス評価を下す(商流が見えにくい、どこでお金がいるのかを説明しきれていない)」と判断される可能性も、あるかもしれませんよね。

〇まとめ:情報開示で不用意なマイナス評価は削減を

今回は、政府も制度設計で普及を図ろうとしている国内キャッシュレス化の流れと、金融機関が受けるダメージを想定し、それによって我々利用者や事業法人にどのような影響があるかを想定しました。今回の記事は「今後起きる現象」と「金融機関の今の融資スタイル」が併存した場合を想定しており、技術革新とともに融資スタイルにも革命がおこり、こうした懸念そのものが解消される世界が実現するかもしれません。一方、技術革新しようとも未だ保守的に金融庁マニュアルを遵守して融資審査を行っているのが金融機関の現状ですので、念のためのケースとして「情報開示が不明瞭になることのリスク」を知っていただければと考えます。
なお口座の動きに限らず、融資を受けている金融機関に対して決算や資金繰り等で不明瞭な部分を残したままにするのは、貴社にとって大きなマイナスとなってしまう可能性があります。日頃より金融機関の担当者とはしかるべき面談を設け、適切な情報開示・説明を心がけたいものですね。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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