財務トピックス(コンサルタントコラム)

あの上場企業の下方修正で「収益・収支」の違いを学ぶ

皆様は取引先や銀行に対し、普段どの程度のペースで財務情報を公開し、説明する機会がございますでしょうか。

銀行から融資を受ける際に試算表を提出して説明する、あるいは決算書を出す前に説明会を開催し、取引先を集めて事業計画を語る…こうした取組みで財務をつまびらかにしている企業様もあれば、決算関係は税理士にお任せで説明することはないという企業様もあると思います。

非上場企業においては、年1回決算以外は財務開示が義務付けされておらず、会社によっては月中の業績がいまいちブラックボックスになっている場合もあります。

一方、上場企業の場合、財務情報の開示は四半期に1回実施しなければならず、業績が下振れしようが上振れしようが、計画に対する変動が起きた場合、適時適切に開示することが求められます。非上場企業と異なり、いち個人からプロ投資家まで多数株主がいる上場企業は、株主利益を棄損しないよう、ありとあらゆる情報を「ガラス張り」にして報告する義務があります。

日本の上場企業は3,000社を超え、日々情報はしかるべき場へ掲載されるのですが、実はこれが非常に勉強になります。非上場企業にも通じる業績計画の立て方や財務戦略、そして下振れ・上振れに対する経営陣の見解…私もできる限り有名どころは目を通し、日本を支える上場企業群が何を考え、どう動いているかを勉強するようにしています。

ところで、最近勉強になると感じたのは、お馴染みのこの企業に関するニュースです。

〇RIZAP、「負ののれん」営業利益の6割に

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37873510W8A111C1000000/?n_cid=TPRN0026

(2018年11月19日 日本経済新聞電子版より引用)

 

独特のCMで一躍有名になったあの上場企業が、当初から業績見通しが大幅下振れとなった、というニュースです。ダイエット事業のイメージが強い会社ですが、ここ数年は多数の企業を買収して事業規模を拡大させており、その際の「負ののれん」の計上が影響し、キャッシュフローと収益に乖離が生まれているという内容ですが、今回はここに大きな学びが隠されています!例えば…

・なぜ、数十億円単位で利益見通しがずれたのか?
・記事に記載されている「負ののれん」とはいったいどういうものか?
「負ののれんでキャッシュフロー(収支)と営業利益(収益)が乖離」の意味と学び取れることは?

前置きが長くなりましたが、1つ1つ紐解いていきましょう。

 

〇勘定あって銭足らず ~負ののれんのマジック~

では早速、同社の業績下方修正において話題となった「負ののれん」というものがいったい何なのか、その基本を学びましょう。以下の図をご覧ください。
【図】

図をご覧ください。

たとえば企業B(今回の記事で言えばRIZAPグループ)が、企業Aの買収を検討したとしましょう。

この際Aは買収されるために値決めされるわけですが、業績不振で純資産=Aの体力以下の買収価格が設定されたとします。

上記図ならば「純資産は1億円だが、買収価格は80百万円となった(=差額20百万円)」という場合です。この場合、企業Bから見れば差額20百万円は「本来支払いすべき価格=儲け」と見なされ、損益計算書上に「負ののれん」として利益計上される仕組みとなっています。

基本的に「のれん」は営業利益外の特別利益等で勘定処理されるケースが多いのですが、記事企業の場合はこうした会計上だけの利益計上を、営業利益までで計上し処理を行っていたという実態があったようです。

そして「負ののれん」においてポイントなのが、こうした一連の処理で「収支(お金)」は1円も動いていないという事実です。逆に営業利益が膨らめば、当期純利益も膨らみ、キャッシュを減らす要因となる納税額が増加する…ということは、納税後キャッシュフローが減少するという結果になります。これぞまさに「収益」と「収支」のズレであり、資金繰りという意味合いでの企業収益が見えにくくなる原因となってしまうのです。

-一言でいえば「勘定あって銭足らず」。
収支と収益は違うのだということが、何となく見えたのではないかと思います。

〇まとめ:あなたの企業の「収支と収益」は?

今回はあの上場企業の業績下方修正のニュースから、収支と収益は異なっており、会計上どうしてもズレが発生する場合がある(今回は「負ののれん」)ことを学びました。もちろん、こうした会計は違法ではなく適切な計上方法であり、収支と収益をずらすなという話ではありません。大切なのは、いかに「ズレ」を適切に把握し、
・黒字なのに資金繰りが回らない、というケースを回避する
・一過性の赤字が出ているが、実態の収支には問題ないと疎明する
という適切な運営ができるかどうかだと考えます。あなたの企業は、果たして適切な収支・収益管理ができているでしょうか。1度、資金繰り表と決算書を並べ、実態を見比べてみてはと思います。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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