財務トピックス(コンサルタントコラム)

「事業性評価」から見る銀行との付き合い方

  • 「事業性評価」から見る銀行との付き合い方

唐突ですが、「事業性評価」という言葉をお聞きしたことはありますでしょうか。これは平成26年「金融モニタリング基本方針」において、銀行が取り組むべき重点施策として金融庁が打ち出したことで誕生し、担保・保証や財務データ(決算書)ばかりに依存せず、企業の将来性や事業内容を見たうえで実態に即した融資判断を行いなさいというものです。平成26年というと4年も前の話ですが、各地の経営者の方にお話をお伺いすると、まだまだ広く浸透していないと個人的には感じております。

ただ最近では以下URLのような積極的な取組もあるようで、いよいよ金融機関にも事業性評価を推進する素地が整い始めたのかもしれません。

経営者の方々においては「子供に事業を渡すため、今のうちに自分の保証関係は整理しておきたい」や「自宅不動産に昔から法人の根抵当権が入っているので、解除してほしい」といった話は、よくある話ではないかと思います。銀行が真にこうした取組を推進してくれるのであれば、この上ない話ですよね。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32210560V20C18A6L91000/

(2018年6月25日付 日本経済新聞 電子版より引用)

 

さて、では本日はこの「事業性評価」から、銀行との付き合い方を考えていきたいと思います。

 

  • 「事業性評価」が叫ばれる背景

なぜ金融庁がここ数年にわたって、口酸っぱく事業性を見ろということを銀行に対して指導しているのでしょうか。もちろん多数の理由があるのですが、1つの理由としては「銀行の決算書(格付)・担保・保証主義」の姿勢が挙げられます。

ところで、金融機関は1990年代のバブル崩壊に伴い大量の不良債権を抱え込み、数年にわたってそれを処理してきた苦々しい過去を持っており、特に積極的に不動産融資等で貸出金額を伸ばしていた銀行は、合併や破綻という悲惨な状況に陥りました。当時の金融庁もこの状況を背景に「金融庁マニュアル」を策定し、銀行に対して決算書の見方(格付制度=決算書で企業をランク付し、ランクを原則として融資の可否を確定させる)や担保・保証を徴求することによる銀行の保全確保を一律に指導し、何とか金融業界を立ち直らせようと動いた時期がありました。立ち返って2018年、バブル崩壊は既に20年以上も前の話になり、金融庁マニュアルに関しても既に廃止されているにも関わらず、銀行は「羹(あつもの)に懲りてあえ物を吹く」とばかりに担保・保証、格付制度に縛られていると多数の銀行の方々からお聞きしています。

「貴社の1年前の決算書ランクは低いのでお金は貸せません」。

「貴社には担保を入れてもらわないと、追加融資は難しくて」。

もちろんここまでズケズケ話をする銀行員はいないかもしれませんが、企業の実態を見ず、決算書をルールに従い算定するだけで、良い会社なのか悪い会社なのかを判断する。これでは、全く企業を見ていないに等しい状況ですよね。金融庁も、銀行がいたずらに保守的な判断することに、相当の危機感を覚えているのでしょう。今後、銀行が次第に上記URL等の取組などをきっかけに、過去の殻を打ち破っていくことに期待です。

 

  • とはいえ、銀行員は忙しい!

銀行が事業性評価を打ち出し、過去からの脱却を図っている。そして金融庁も何度も事業性評価について言及している…では、どうしてここまで組織が変わろうとしているのに、末端まで取組がいきわたらず、いまだ弊社がお伺いする企業の方々からは「銀行に担保は絶対外せないといわれた」「前期の決算が悪いから、保証協会付融資しか貸せないと言われた」といった声が聞こえてくるのでしょうか(※声は、あくまで筆者がお聞きしたご意見の一部ですが)。その背景には忙しすぎる銀行担当者の姿が見え隠れしているような気がしてなりません。

私事ですが、筆者は昔ある銀行で法人営業をしており、そこで様々な金融知識をつけさせてもらった経験があります。製造業から飲食業、他業種展開の中小企業から創業ベンチャーまで、ありとあらゆる企業にお伺いし、業界の特性や特殊事情を勉強する「機会」はいただけていたのですが、いやもう、とにかく忙しい!

 

退職者ですので当時のことしかわかりませんが、

①朝はいち早く出社して会議の資料を印刷・準備し、会議で営業目標を厳しくチェックし、

②お店が開くや否や、順次お世話になっている20以上の担当先(お客さま)からの電話が鳴ってそれに対応し、

③終わるや否や、取得していたアポイントに合わせて1日外回り。

④訪問先では煩雑な事務を依頼されたり、新たな案件を見つけてきたり、問題が発生したり…。

⑤ご飯を食べる時間もそこそこに、支店に戻れば上司への報告、今日発生した新たな事務、山積みの電話メモ…。

⑥ようやく終わって落ち着いたかと思いきや、今度は大量の融資のための稟議作成。

⑦ああ、先輩から依頼されたあの仕事あったな、この仕事も、この会議資料も…。

⑧支店の閉店時間が到来し、作業を投げ出して追い出されるように支店から帰宅…。

 

当時はこんな日常が半年以上も続いており、正直なところ「これで事業性評価もきっちりやれと言われたら、パンクしてしまう!」という状態でした。加えて、今般は「銀行員の人員削減!業務効率化!働き方改革!」と叫ばれているわけですから、もしかしたら当時よりもますます1人にかかる負担・時間制約は厳しいものになっているはずです。組織で事業性評価の素地が整っても、現場レベルでそれが実践されるには、もう少し時間のかかる話かもしれませんね。

  • 能動的に「事業性評価」を勝ち取る

では以上を踏まえ、中小企業と言われる企業の方々が、いかにして多忙な銀行に対して画一的・保守的な見方を変えてもらい、自社にとって最適な資金調達を行うべきか。相対する銀行の状況を考えれば「能動的な資料の開示・説明」こそが、今は最も効率的な方法ではないかと考えます。

銀行が欲しがる決算書・試算表だけでは見えてこない貴社の有益な情報が、実は社内にたくさん眠っているはずです。その情報が、図らずも銀行の事業性評価につながってくる可能性があります。本来は銀行員が1から事業性評価を行うことが1番良いのですが、忙しすぎる銀行マンのために、貴社からの積極的な働きかけを行うことで、どんどん資金調達をうまくやっていくのも1つの手ではないでしょうか。

「では、具体的にうちの会社だとどんな資料や、良い情報が眠っていますか。」

気になった方は、ぜひ1度弊社の金融財務支援部にお声がけいただければと思います。筆者もメンバーですので、ご縁あってお会いした際には、よろしくお願い致します。

 

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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