財務トピックス(コンサルタントコラム)

「うちの格付、今いくつ?」東芝問題で考える銀行取引

〇「うちの格付、今いくつ?」東芝問題で考える銀行取引

「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」。
唐突ですが、これは作家・池井戸潤氏の小説で、銀行員・半澤直樹の姿を描いたシリーズ作の中で登場する、銀行を揶揄するフレーズです。ドラマ化したのでご存知の方も多いと思いますが、銀行は業績の良い時にはすり寄ってお金を貸そうとしてくるが、会社が傾いた時には貸し剥がしで「傘を取り上げる」ものだということを言っています。銀行も1つの営利企業、貸倒れリスクをどこまで許容して収益をあげるかが大切で、致し方ない部分があります。が、顧客から見ればときにこうした姿勢が、揶揄のように見えるのかもしれません。
金融機関の立場から言えば、業績(=「格付」:銀行が決めている顧客の財務ランク)の悪い会社に何度も訪問するより、業績の良い会社(=高格付先)に日参して借りてもらう方が良い、という姿勢です。一般事業会社のお得意様のように、金融機関にも彼らなりの顧客区分が存在するのですね。
ところで、こうした「格付」が異なると、借り手である企業にどの程度具体的な影響が発生するのでしょう。今日は、それが垣間見える面白い記事を2つ並べました。

①東芝への債務者区分、主力行全て「要注意先」に引き下げ、地銀は融資引き揚げ検討
https://www.sankeibiz.jp/business/news/170405/bse1704050500001-n1.htm
(2017年4月5日 産経新聞社「Sankei Biz」より引用)

②東芝・シャープ、大手行が「正常な融資先」に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35726030V20C18A9MM8000/
(2018年9月25日 日本経済新聞電子版より引用)

米国の原発関連会社絡みの損失で財務を棄損し、主力銀行から格付を「要注意先(≒お金を貸しにくい水準、銀行の方針後ろ向き)」に引き下げられたことで、資金繰りや経営継続に悪影響が出ているというニュースが報道され「えっ、“TOSHIBA”が…」と激震が走ったあの時から1年。
事業売却等で財務を再建させた同社格付は「正常先(=金融機関が積極的にお金を貸したいと思う水準)」でも最上位ランクに戻り、融資回収すら検討していた地方銀行の動きもなんのその、むしろ再建のなかで有利子負債を半減させるまでに回復しました。なお、同社は事業売却の利益により当面のキャッシュ・利益を確保したという特殊要因があり、本質的な回復はまだまだ先なのかもしれません。しかし正常先最上位という格付が本当だとすれば、融資回収の動きをし、東芝を危険だと判定していた金融機関は、予想より早く元の姿に戻ったことで「しまった!」と感じたのではないでしょうか。
もちろん取引には複雑なドラマが存在し、現場にいなかった筆者に具体的な銀行批判ができるいわれはありません。記事に融資回収と書かれても、改善に向け必死で動いた銀行員もいたはずです。今回のポイントはそこではなく、銀行がいかに格付至上主義(=決算書至上主義)の社会なのかという部分です。つまり、
「財務数値がほんの少し変わって格付が変われば、銀行員の態度がそんなにコロッと変わるの?」ということを、確認せねばならないということです。前置きが長くなりましたが、今日はこのテーマを取り上げましょう。

〇保守的にならざるを得なかった不況下の格付制度

そもそも、上記で取り上げた企業を格付で判断する手法は、どこで生まれたのでしょう。実は歴史は比較的浅く、バブル崩壊後に不良債権を抱えた市中金融機関が、今後不良債権を抱えることなく、ルールに基づくリスク管理・顧客の財務管理ができるようにと誕生した「金融庁マニュアル」が考え方の根底となっています。表面の決算書内容だけではなく、ルールに従って企業の実態を導き出す手法として、ここまで金融機関の教典として君臨してきた経緯があります。今や金融庁マニュアルは廃止となり、現在業界で叫ばれているのは「事業性評価(決算書に依存せず、会社の業務に即して融資を行うスタイル)」なのですが、実際は長年使ってきた「不況下の産物」であるマニュアルに基づく財務評価から脱却しきれていません。だからこそ、昨年融資回収方針だった会社が翌年の数値改善だけで「正常先・最上位だ!」と手のひら返しが起こってしまうのですね。なんとなく、金融機関の財務診断ってそんなものなのか…という気持ちになるかと思います。
ただ2018年で平成時代も終了し、金融機関もようやくフィンテック等の外部環境に引っ張られるようにして脱皮の局面を迎えていることはたしかです。今後の動向に注目です。

〇まとめ:地獄の沙汰も格付次第

今回は、かつて高度成長期に日本の経済成長を支えた大手企業・東芝の格付が1年で最下層から最上位へと変化したらしいというニュースをもとに、金融機関の財務診断スタイルがいかに画一的で実態をとらえていない現状があるのかをお伝えしました。とはいえ、金融機関もプロの目線を持ち、システマチックな今の財務診断手法から導かれる知見があるのもまた真実。「自分の会社が、今お世話になっている金融機関からどのように見られているのか」をある程度把握しておけば、今後の資金調達の戦略策定において大いに役立つこと間違いなしです。ひとまず、財務に関するご相談がある際には、ぜひ弊社金融財務支援部までご連絡くださいませ。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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